上 下
583 / 622
20章

549話 変態はそこら中にいる

しおりを挟む
「爆発範囲は派手だけど、威力はちょーっと不満ねえ」
「あんなもんばっか作ってるんですか!」
「環境破壊はんたーい」

 チェルの大盾の裏から爆破した地点を見ながらも横でやんややんやと言われる。でもあの状態から少しでも事態を好転させるには仕方がない犠牲だった。まあ、こっちは誰も死んでないから、ゾンビ共の犠牲になるんだけどさ。

「雑魚は大体一瞬で吹っ飛んだみたいだけど、流石のボスは健在だなあ」
「核って割には弱くないですか……?」
「そうなんだよなあ、閃光と爆発威力は高いんだけど、これが?って感じ」

 どこぞのコーラみたいな名前の武器みたいにもっとでかくて射出できるようにした方がいいのかってのも考えたけど、あれもそこまで影響があるかって言われると微妙な所だし、そもそももっとでかい核を使っての話だからなあ。

「放射線の汚染があるとかじゃないねぇ」
「処理的には超強い爆弾、ってカテゴリなんだろ」

 巻き込まれた雑魚ゾンビ共が生皮剥がれて、筋繊維と骨だけのひょろくて素早い奴に変わるって事もないし、筋骨隆々の緑色の生物になるわけでもなく、ただただ吹っ飛んで消し飛んだのでやっぱり強力なグレネードって域を出ない。

「それは良いとして大ゾンビ……しぶといですね」
「大ダメージってので動いてないけど」
「んじゃ、さくっと倒しちゃおうかなぁー」

 そういうとマイカの奴が私とチェルの頭上を越えて、動いていない大ゾンビに向かって駆け出し、蒼い稲妻を発しながら高速接近からの飛び蹴り。背中から煙の吹いている大ゾンビの顎にヒットするとぐらりと大きく後ろに倒れていき、大きい音を立てて爆発で緩んだ地面に陥没する。蹴りをいれたマイカと言えば、蹴った反動で体勢を空中で整えると、落下してさらに追撃。それはもうただのストンピングなんよ。

「って言うか、何であんなもん作ったんですか!」
「最初は特殊弾頭を作ろうって話で、鍛冶クランの連中、採取メインのギャザラー系の連中に当たって大量の鉱石を入手した所からの話なんだよねえ」

 マイカが大ゾンビに止めを刺している間、チェルの武装を元に戻し、いつものようにロリポップを加えながらどういう経過を説明し始める。

「ギャザラー連中の世界ってどういうもんか知らなかったんだけど、あいつらそこら中に穴開けて採掘しまくってんだと」
「地底人みたいですね」
「高レベル帯でも地底に潜ればモンスターは関係ないから、ひたすら鉱石を集め捲って悦ってる奴が多いとか」
「もはや変態の域ですね」

 それなーと返事をしていたら向こうでポリゴン状になって消えていく大ゾンビ。あんだけストンピングされて顔面踏まれたら本望だろうよ。

「とにかくまあ、そいつらの蓄えている鉱石の中にウランがあったから、それを使って劣化ウラン弾を作ろうって盛り上がったんだよ」

 これは事実。なんだったらテンション上がりまくってあれこれ調べ捲って作っていたのは記憶に新しい。で、劣化ウラン弾ってウラン精製をした後に出る廃棄物の再利用になるわけで、だったら精製したウランで何か作ろうかって話になり、そこから更に調べての核爆弾開発。

「じりじり音が鳴って、汚染されまくって腕が増えたり、なぜか回復するって効果もないし、ゲームとして汚染はなさそうだから、これからもうちょっと使ってみたくはあるね」
「どうするんですか、めちゃめちゃ起動手順多かったですけど」
「ものっそい構造を簡単に言えば、二つのウランをぶつけたらエネルギーが発生するんだけど……例えば弾頭を2重構造にして、当たった瞬間に核反応が起こるようなギミックを作れれば、連射も可能、かな」
「バカな発想ですねえ……」
「こういうゲームであれこれやるのって現実じゃできないような事をやるのが醍醐味でしょ」

 ああいうの、と言うようにマイカの方を指さしてやる。あいつこそこんなに高速移動したり、空中で謎の挙動でアクロバットしたりと、結構やり放題している部類になる。

「また対人なんかあったら相手したくないですね……」
「あっても暫くは良いよ、私は私で伝説的なプレイヤーになったしな」

 にんまりとギザ歯を見せて笑いながら、優勝トロフィーを破壊してクランも解体したことを思い出す。あれは最高に他のプレイヤーをバカにしている気もするが、勝利者の特権よな。

「さて、久々のパーティ戦も堪能したし、地上に戻るか……マイカ!行くぞ!」
「んー、はぁーい」
「今度誘う時はもうちょっと良い所でお願いしますよ」
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...