582 / 617
20章
548話 235U+n→95Y+139I+2n
しおりを挟む
「ふむ、状況はかなり不利だな」
寄ってくるゾンビの首元めがけて銃剣を振るい、一撃で首を落としつつぽつりとそんな事を漏らす。大ゾンビは相変わらずがんがんチェルを殴ってくれるので、こっちの被害はないが、湧いてくるゾンビがまあ多い事。って言うかしっかりターゲット向けてるチェルはやっぱりタンクとして一級品だよ。物理特化の相手ならどうやって倒すんだってくらい硬い。代わりに魔法だったり搦手に弱すぎるって弱点もあるけど、Vit値がん振りだから状態異常もそこまで効かないのか。
「キリないねぇー」
「範囲攻撃ってのを持ってないからな、私ら」
今日は火炎瓶は持ってきてない。ついでに言えばグレネードは……あるな。インベントリに放り込んだままの試作品が確かあったわ。前にアオメのクランであれこれ作っていた時に製造した一品。コストが滅茶苦茶悪いから2本だけ作ってほったらかしにした奴。
「あるっちゃあるけど、使おうか微妙に迷ってる」
「アカメちゃんのそういうパターンの時はやばい奴だよねぇ」
「あるならさっさと使って援護してほしいんですけど!」
大ゾンビのインファイターっぷりを捌いてるチェルが叫んでる。確かにまあ、此処で一発でかいのをぶっ放して蹴散らして一気に倒したい所。打撃中心のマイカなんて蹴り飛ばしては起き上ってくるゾンビにイラついてるってのも良くわかる。そういえばそんなCMあったよなあ、投げ技だけでゾンビで戦ってるの。
「高いから分解して材料取り戻そうと思ってたからなあ……使うの勿体ないなーって」
「そんな余裕ないのわかりませんかぁ!」
強めのボディブローを盾で防ぐと、宙を舞っていくチェル。そのまま空中で一回転してからどすっと重厚な音をさせて着地すると足がぷるぷると震えている。
「使ってなんぼとかいつも言ってるのに躊躇うのなんて、よっぽどじゃないのぉ?」
「だってなあ……使ってもいいけど、これどうなるか分かんないんだよなあ……」
「こういう時だけうだうだするのやめてくれません!?」
左右の攻撃を盾でがっちり受け止めながら騒いでいるチェル。あいつ戦闘中の時だけはやけに好戦的になる上に、私に遠慮が無くなるのは……前からか。
「マイカ、準備するから援護して」
「りょー」
囲みを突破して、マイカがこっちにきたら、とにかく私の周りのゾンビを文字通り蹴散らしながら援護。その間にとりあえずインベントリから2リットルのペットボトルくらいの大きさの筒を慎重に取り出して足元に置き、一息。
「一応まあ、実験はしたし、大丈夫だとは思うんだけど……」
その筒の上部を掴み一度捻って軽く引き出して、そこからさらにもう2回転程してからまた一息。デリケートな代物は私には全然合わないわ。
『チェル、一番強くてでかい盾用意しとけ』
『動けなくなるんですけど!』
『いいのいいの、攻撃位置は決まってるし』
引き出し、2回転、そこからさらに1回転戻して準備完了。
『今から1分後に起爆するから、必死こいて此処から離れて、そのうえでチェルが盾で爆風を防ぐ……って事になるけどいい?』
『ゾンビは引き剥がせるとしてボスは付いてきちゃうよぉー?』
『大丈夫のはず』
そういう訳で筒をがしゃんと押し込むと、警告音が鳴り始める。こういう設置してのアイテムってどうも使いにくいのよね。自爆ダメージはしっかりあるゲームだし、ああいう機動力高めの相手にはあんまり効果が発揮されないってのも時限式と設置式の悪い所。事前に来るルートが分かってるなら設置式の方が強いんだろうけど、こういう状況だと別すぎる。
『ほら、行くぞ!』
セット完了してからどしどし走ってくるチェル、その後ろから迫ってくる大ゾンビに向けて援護射撃をかましつつ、どのくらい行けばいいかと考えて目標地点を指示。一番足の遅いチェルを援護して、先に到達させてから私、マイカの順番で対爆姿勢を1分以内に取れれば完璧。
「こういう時に限ってライフルしかないのよね」
しかも単発装填だからクリップも使えないと来た。こういうの、指で銃弾挟んだままの方が良いのか、撃ち切ってから1発ずつ入れたほうが良いのか、それもまだ定まってないって言うんだから私がかなりふわふわして行動してるってのが良くわかる。
「アカメちゃんもそろそろ移動しないとぉ」
「あのちんちくりんが予想以上に足が遅いんだよ」
タンクの弱点ってAgi値が低いから移動速度に補正が入ってない……って所もあるだろうけど、そもそも防具が重すぎるんだよ。多分あいつのAgi値、マイナスになってるだろ。
「ああ、もう……さっさとせえ!」
「こっちだって、必死、なんですよ!」
撃ち、引いて、装填。また振り返ってを繰り返しながらチェルの準備が出来たら一気に駆け出す。私もそこまで足が速い訳じゃないうえに、遠距離攻撃できるのが私だけだから大変過ぎる。どうにかなってるのは、マイカがちょくちょく大ゾンビに強めの蹴りをかまして足を止めさせてる。そんなこんなでチェルの奴がしっかり大盾、しかもやけにごつい奴を構えて準備が完了したら、大ゾンビに強烈な一撃と射撃を加えて、怯んだところでマイカと一緒にチェルの後ろに回り込んで盾を支える。
「口開けて耳塞ぐと良いぞ」
そういうと共に閃光が奔り、轟音と煙が一気に上がる。あーあ、やっちまった。素材を見つけたからネットに乗ってるのを鵜呑みにしてあれこれやったら出来上がったんだけど、これはまともには使えんわ。人の叡智が作ったものだけど、封印しよ。
「アカメさん、何作ったんですか!」
「3分クッキング感覚で核っぽいものかなあ」
「バカなんですか!」
まあ、自分でもできるとは思ってなかったけど。
寄ってくるゾンビの首元めがけて銃剣を振るい、一撃で首を落としつつぽつりとそんな事を漏らす。大ゾンビは相変わらずがんがんチェルを殴ってくれるので、こっちの被害はないが、湧いてくるゾンビがまあ多い事。って言うかしっかりターゲット向けてるチェルはやっぱりタンクとして一級品だよ。物理特化の相手ならどうやって倒すんだってくらい硬い。代わりに魔法だったり搦手に弱すぎるって弱点もあるけど、Vit値がん振りだから状態異常もそこまで効かないのか。
「キリないねぇー」
「範囲攻撃ってのを持ってないからな、私ら」
今日は火炎瓶は持ってきてない。ついでに言えばグレネードは……あるな。インベントリに放り込んだままの試作品が確かあったわ。前にアオメのクランであれこれ作っていた時に製造した一品。コストが滅茶苦茶悪いから2本だけ作ってほったらかしにした奴。
「あるっちゃあるけど、使おうか微妙に迷ってる」
「アカメちゃんのそういうパターンの時はやばい奴だよねぇ」
「あるならさっさと使って援護してほしいんですけど!」
大ゾンビのインファイターっぷりを捌いてるチェルが叫んでる。確かにまあ、此処で一発でかいのをぶっ放して蹴散らして一気に倒したい所。打撃中心のマイカなんて蹴り飛ばしては起き上ってくるゾンビにイラついてるってのも良くわかる。そういえばそんなCMあったよなあ、投げ技だけでゾンビで戦ってるの。
「高いから分解して材料取り戻そうと思ってたからなあ……使うの勿体ないなーって」
「そんな余裕ないのわかりませんかぁ!」
強めのボディブローを盾で防ぐと、宙を舞っていくチェル。そのまま空中で一回転してからどすっと重厚な音をさせて着地すると足がぷるぷると震えている。
「使ってなんぼとかいつも言ってるのに躊躇うのなんて、よっぽどじゃないのぉ?」
「だってなあ……使ってもいいけど、これどうなるか分かんないんだよなあ……」
「こういう時だけうだうだするのやめてくれません!?」
左右の攻撃を盾でがっちり受け止めながら騒いでいるチェル。あいつ戦闘中の時だけはやけに好戦的になる上に、私に遠慮が無くなるのは……前からか。
「マイカ、準備するから援護して」
「りょー」
囲みを突破して、マイカがこっちにきたら、とにかく私の周りのゾンビを文字通り蹴散らしながら援護。その間にとりあえずインベントリから2リットルのペットボトルくらいの大きさの筒を慎重に取り出して足元に置き、一息。
「一応まあ、実験はしたし、大丈夫だとは思うんだけど……」
その筒の上部を掴み一度捻って軽く引き出して、そこからさらにもう2回転程してからまた一息。デリケートな代物は私には全然合わないわ。
『チェル、一番強くてでかい盾用意しとけ』
『動けなくなるんですけど!』
『いいのいいの、攻撃位置は決まってるし』
引き出し、2回転、そこからさらに1回転戻して準備完了。
『今から1分後に起爆するから、必死こいて此処から離れて、そのうえでチェルが盾で爆風を防ぐ……って事になるけどいい?』
『ゾンビは引き剥がせるとしてボスは付いてきちゃうよぉー?』
『大丈夫のはず』
そういう訳で筒をがしゃんと押し込むと、警告音が鳴り始める。こういう設置してのアイテムってどうも使いにくいのよね。自爆ダメージはしっかりあるゲームだし、ああいう機動力高めの相手にはあんまり効果が発揮されないってのも時限式と設置式の悪い所。事前に来るルートが分かってるなら設置式の方が強いんだろうけど、こういう状況だと別すぎる。
『ほら、行くぞ!』
セット完了してからどしどし走ってくるチェル、その後ろから迫ってくる大ゾンビに向けて援護射撃をかましつつ、どのくらい行けばいいかと考えて目標地点を指示。一番足の遅いチェルを援護して、先に到達させてから私、マイカの順番で対爆姿勢を1分以内に取れれば完璧。
「こういう時に限ってライフルしかないのよね」
しかも単発装填だからクリップも使えないと来た。こういうの、指で銃弾挟んだままの方が良いのか、撃ち切ってから1発ずつ入れたほうが良いのか、それもまだ定まってないって言うんだから私がかなりふわふわして行動してるってのが良くわかる。
「アカメちゃんもそろそろ移動しないとぉ」
「あのちんちくりんが予想以上に足が遅いんだよ」
タンクの弱点ってAgi値が低いから移動速度に補正が入ってない……って所もあるだろうけど、そもそも防具が重すぎるんだよ。多分あいつのAgi値、マイナスになってるだろ。
「ああ、もう……さっさとせえ!」
「こっちだって、必死、なんですよ!」
撃ち、引いて、装填。また振り返ってを繰り返しながらチェルの準備が出来たら一気に駆け出す。私もそこまで足が速い訳じゃないうえに、遠距離攻撃できるのが私だけだから大変過ぎる。どうにかなってるのは、マイカがちょくちょく大ゾンビに強めの蹴りをかまして足を止めさせてる。そんなこんなでチェルの奴がしっかり大盾、しかもやけにごつい奴を構えて準備が完了したら、大ゾンビに強烈な一撃と射撃を加えて、怯んだところでマイカと一緒にチェルの後ろに回り込んで盾を支える。
「口開けて耳塞ぐと良いぞ」
そういうと共に閃光が奔り、轟音と煙が一気に上がる。あーあ、やっちまった。素材を見つけたからネットに乗ってるのを鵜呑みにしてあれこれやったら出来上がったんだけど、これはまともには使えんわ。人の叡智が作ったものだけど、封印しよ。
「アカメさん、何作ったんですか!」
「3分クッキング感覚で核っぽいものかなあ」
「バカなんですか!」
まあ、自分でもできるとは思ってなかったけど。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
888
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる