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20章

546話 底知れない人の欲望

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「さて、チェルシー君、この状況はどういうことか説明してくれないかな?」
「ええと、まあ、知ってはいたんですけど……」
「こりゃー、凄いねぇ?」

 物凄い死霊系モンスターが押し寄せて物量でしこたまゾンビアタックしてきて、切ったはった、激しい戦闘を繰り返す……ってのを期待していたんだけど、現実はそうそう甘くなく、このゲームにおける人口の多さと、それに付随してしっかりと作りこんでいるゲーム性。つまるところ。

「ヒーラーの狩場にしては激しすぎんか?」
「僕としては助かってます」

 阿鼻叫喚、地獄絵図……なのはプレイヤーではなくモンスター側で、湧いた傍から叩き潰されて、脳漿をぶちまけ、骨粉をまき散らし、裸足で逃げ出しているのは死霊共。それにしたってもこんなにも激しい狩場だってのは知らんかったわ。

「回復魔法が聖属性で、死霊系は闇なりの属性って定番だけど、それにしてもじゃない?」

 手ごろな位置で湧いてくるのが遠距離から使われる回復魔法でそのまま崩れて消失していく。殺意高すぎてちょっと引くわ。

「まあ、此処はそこまで強い所じゃないので……」
「凶悪な相手はもっと奥か」
「今更この程度の相手はねぇ?」

 ゆっくり近づいてくるゾンビにちょいちょいと蹴りを入れて遊んでいるバトルジャンキーをちらっと見てから次のロリポップを取り出して少しだけどうするかを考える。どういうマップか分からないのであんまりプレイヤーのいないところまで行きたい所だが。

「ちなみにここってどういう立ち位置のマップなの?エルスタンのマンホールから降りてきたけどさ」
「地下世界らしいです、どの街から降りてもまずはこの辺に来るみたいで、完全な別マップですね」
「一瞬暗転したのはエリア移動って事かぁ」

 蹴るのに飽きたのか、しゅぱっと蹴りで一閃。ごろりと首が落ちるゾンビを見てどうする?って感じでこっちを見てくる。

「一応奥はあるんで行きます?」
「このままじゃ消化不良だしなあ」
「ねー」

 大きくため息を吐いてから案内をしてくれる辺り、やっぱりちんちくりんは良い奴よ。それにしてもヒーラーの狩場になるとはいえ、こんな状況になるのは、どのゲームでも一緒だな。




「そういえば何でここの存在知ってるの?」
「さっきの狩場見たからわかってそうですが、低レベルの狩場なんで案内するんですよ」
「初心者受け入れしてるのは大変だなあ」

 案内する割には突然出てくる死霊共にびっくりしてちょいちょい叫び声を上げるので相変わらず苦手なのは変わらずだ。どっちかって言うといきなり出てくるから驚くって感じ。気持ち悪いのもあるだろうけど、単純にびっくり系が嫌なんかね。

「それにしても辺り一面どんよりと薄暗くて、気持ち悪い感じ出してるけど……マップ構造的には地上と変わんないわね」
「モンスターの出方だけ違う感じぃ?」

 プレイヤーの数も減り、モンスター自体の処理速度が落ちると、急に湧いてくる量も減り、そこら辺を徘徊するのが多くなってきた。一定範囲モンスターの数が固定してるっぽい。なんかこうやって普通にマップを歩いて何かするってのも久々。

「もうちょっと手ごわい相手じゃないと折角持ってきたライフルとバトルジャンキーが腐るわね」
「地下探索はあんまり旨みがないからやりたがらないんですよ……」
「でも狩場ではあるんでしょー?」
「えっと、ドロップが悪い、人がいないと湧きが遅め、かといって転移位置から離れると移動が大変、スキルと職によっては詰み」

 マップの奥へと進みつつ、ちんちくりんが指折り数えてあれこれと上げていく。確かに言われてみれば相手していてめんどくさいというか、大変なのはわかる。物理的に倒すなら頭を確実に潰さないといけないのが手間。魔法ならあっちゅう間に消し飛ばせるって言うんだから、プレイヤーのスキル次第で強弱がかなり変わるのはモンスターとしては優秀なんだけどなあ。

「どっちかって言うとリアルスキル向上のためって感じね」
「相手の攻撃は緩いけど、耐久高めで弱点が明確なのはいいねぇ」
「……なんで今の話でうきうきして戦えるんですか?」

 まだ何回かしか撃ってないし、今の所は銃剣でどうにかなっているからそこまで強い相手って訳でもないのはもっと大量に場所も悪い所で戦っていた経験よな。何も知らないで着てたらもっと苦戦していたのは確実だけどね。

「ま、こんな序盤はさっさと抜けて強い相手の所にいこーぜ」

 また一匹のゾンビをさくっと銃剣で片付けてからちんちくりんの頭をぺちぺちと叩いて先を促す。

「どうしてこんなことになったんですかね!」
「最初のイベントでアカメちゃんに会ったから、じゃないかなぁ?」
「正論!」

 その鬱憤を晴らすように思い切り槌を振り抜いてゾンビの頭を吹っ飛ばす。うん、なんだかんだでせいちょうしてらあ。
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