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20章

545話 悪魔と踊ろう

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「街中で待ち合わせなんて本当にサービス開始の時を思い出すねえ」
「そういえば、なんで煙草やめたんですか」
「んー?気分よ気分」

 相変らず口の中で転がしている最近お気に入りのロリポップ。口でもごもごさせつつ、インベントリから煙草を取り出して見せ、吸う?っていう形で吸い口の方を向けるが首を振って断られる。こいつ実は未成年だったりして。

「僕は好きですけどね、アカメさんが吸ってる姿」
「煙草吸ってるの結構いると思うけど」
「様になるかどうかは別では?別にバッドステータスが付くわけでもないですし、恰好メインだとしても勝てる人います?」
「女のキャラでカッコいいのはいるし、私みたいな路線の奴もいるとは思うけどなあ」

 今はどっちかって言うとカッコいいじゃなくて可愛いに割り振られていると思うけど。何万もいるプレイヤーの内で百人にも満たない奴しか知らないし、道行く奴の事を全部覚えているわけでもない。私自身はイベントに出ているし、それなりに顔か名前を知られている自覚はあるけど、対人イベントに興味がない人にとっちゃ、どっかの誰か、知らん奴よ。

「目つきが悪くてギザ歯のドラゴニアンで、スーツ姿でロリポップ咥えてるなんてそうそういないけど」
「後半はただの好みですよね!」
「そうともいう」

 くつくつと笑いつつ、久々にエルスタン中央広場のベンチでまったりタイム。そういえば此処から私のゲームが始まったような感じもある。だからちんちくりんの奴と一緒に死霊共をぶちのめしにいこうって気分になったのかな。何事も初心に帰るってのが大事だよな。

「……それで、何やってるんですか?」
「昔を思い出すための準備」

 ばかすか撃ちまくって倒しまわるってのも良いけど、それはそれで面白くないかららしい装備を持ってきた。

「もっと簡単な銃じゃなかったですか?」
「流石に今更パイプライフルは持ってこれないって」

 めちゃめちゃ簡単な機構で高火力。ただし連射は出来ない。もっぱら火薬は爆破用。そんな私の思い出のパイプライフルはこの戦いに付いてこれないだろうからおいてきた。今回持ってきたのはやっぱり昔を思い出すための武器。インベントリを開いて情報を眺めながらふふんと一声。


名前:カスタムM4ラビット 武器種:長銃
必要ステータス:STR25 DEX20
攻撃力:+10 命中:+30 固定ダメージ:100
効果:ボルトアクション 装弾数3発 金属薬莢 内部マガジン 
付属品:銃剣(効果:攻撃力+15 命中+15 固定ダメージ無効)
詳細:M2ラビットの後継機 単発威力を高めた為、装弾数が低下


「本当は初期銃を持っていきたかったんだけど、あいつはあいつで戦いに付いてこれない」
「そんなに変わるんですか?」
「固定ダメージだけで60違う、HP100未満は一発撃ったら即死よ即死」

 しかもHSもあるから、固定ダメージは1.5倍。頭に撃てなくても固定ダメ50よ。こんなに使いにくい武器でも、前にちんちくりんのタンクはいるし、呼んだバトルジャンキーは前衛のプロ。私は後ろでのんびり射撃と洒落込みたい。

「どーよ、かっこいいっしょ」

 M4ラビット、M3PってのとM2ってのも使ってたから3本目。4なのに3ってわかりにくいけど、これ別に生産品じゃなくて普通にギルドで売ってるって言うんだから、銃器絡みのインフレはやっぱり頭おかしいレベルだったんだろうね。そんな事を思いつつ、ちんちくりんの前で構えたりくるりと回したりしているけど、なんかピンと来てない顔をしている。

「いやー、僕はそうでも……?」
「てめー金玉ついてんのか」
「リアル性別まで踏み込まないでくださいよ!」

 ……あれ、中身女の子だっけ?

「むしろアカメさんこそ、そこらの人以上に男らしいですけど」
「だろー?このゲームにおけるイケメン枠だし」

 ちょっと可愛い路線に切り替わってるような気もするけど。

「それにしてもジャンキーの奴おっそいわね」
「ですね、こういう時はすっ飛んできそうですけど……一応なんもしてないって言ってましたよ」
「こう、指パッチンでもしたら上からすっ飛んでこないかな」

 そういって冗談交じりに上に指を掲げて大きくパチンと鳴らす。どこぞのロボットみたいに上からどしっと降ってくる訳はなく、普通に通りの向こう側からのんびり歩いてくるジャンキーを見つける。うん、まあそんなこったろうと思ったよ。

「お待たせぇ、待ったぁ?」
「いや、そんな事な……」
「おっせーよ、1本舐め終わったぞ」
「ちょっとぉ!」

 ちんちくりんが気を利かせたんだろうけど、すぐ行くって話から結構時間が経ってるから舐め切ったロリポップの棒をジャンキーの奴に向けてぷんすこ。

「プレイヤー増えてて街もおっきくなってるんだし、ちょっとは多めにみてよー」
「転移せえ転移」

 少し向こうにいる街の中を転移させてくれるNPCの方にロリポップの棒を向けてため息一つ。

「色々変わりますから……」
「アカメちゃんは禁煙したしぃ、あたしは兎の獣人になったしぃ、チェルシーちゃんは……なんか変わった?」

 指折り数えながら相変わらず小さいちんちくりんの方を見てマイカが首をかしげる。

「防具が新調されて、ステータスが上がりましたよ!」
「それじゃ、懐かしいパーティでちんちくりんの泣き叫ぶところ見に行こう」
「死霊相手は久々だなー」
「ほんと、性格悪いですよね!」

 ちんちくりんが腕をぶんぶん振り回してこっちに来るのでフルフェイスヘルムをライフルの銃床で抑えて空振りまくっているのをけらけらと笑う。

「案内しませんよ!」
「それは困るなあ……ほら、機嫌直せって」

 ぷりぷり怒っているちんちくりんにロリポップを差し出し、咥えさせてからよしよしと撫でまわす。お、機嫌良くなった。

「あたしも場所知らないんだよねぇ、案内してー」
「苦手なのに何で場所知ってるのかって話は敢えて聞かないでおく」
「嫌いだから行かないためですよ!」

 なるほど、嫌な場所だからこそ、知っておいて行かないって事か。案外賢いじゃないか、ちんちくりんのわりに。

「ちゃんと守ってやるから大丈夫だって」
「そういう事じゃないと思いますけど!」
「あー、良いねぇ、この感じー」

 わいわいきゃあきゃあ遊びまわるってのも良いもんだよ。
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