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20章

536話 自分貸し出し中

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 イベントが終わって1週間、あの時はバチバチで関係性がえぐいくらい悪くなるものだが、それが過ぎればいつも通り、なんだったらちょっとした因縁の一つや二つ出来たのでゲーム内の活性化……と、までは行かないが、プレイヤー間の関係が良くなったのは否めない。クラン内でのバチバチも片付いて、本当にこれまで通り、喧嘩した後はみんな仲良くなるもんだ。一部を除き。

「私、あの時の決着に納得がいってないんですよ」
「ほー、それは難儀なこって」

 そんな軽口を叩いている2人、びゅうびゅうと吹き荒れる雪山でぽっかりと空いた洞窟で休憩中。
 イベントが終わって数日後、自分でぶちのめした相手の所に来て『クランにいーれて』なんて軽く言って参加し、ついでに自分の用事に付き合わせる始末。

「あそこまで戦って、最後は結局銃撃のごり押しじゃないですか」
「それは、油断したあんたが悪いの」

 とりあえず辺りを犬野郎に照らしてもらいながら採掘ポイントを探していく。何だかんだ言い合いながらも付き合いは悪くないのは良いところ。まあここで探索しているのも目的のポイントではないので念の為だったりするのだが、いいもの引いたらめっけもん。

「それに再戦しても多分、納得しないわよ?」

 ポイントを見つけたので、何もない空間からツルハシを取り出して、カキーンと1発。金属同士のあの独特な音をさせながら採掘ができなくなるまで鉱石を掘り続ける。

「それはどういう理由か聞いても?」
「第一に、あそこまで盛り上がった状態じゃない。そのニ、私が現状でそこまでやる気がない。その三、装備を強化中で弱ってる」
「その条件をクリアしたら、闘ってくれるんですか」
「やってもいいわよ、、納得するならね」

 2個目の採掘ポイントも空にして、アイテムメニューから取れた鉱石を確認していく。イベント後、このクランに入ってからは大体毎日、クランの誰かを引き連れては採掘ポイント巡りをしつつ、頼まれた事をこなしてあれこれと、装備の強化、アタッチメント開発に力を入れる予定が進行中。
 剣での攻撃で銃身を真っ二つにされる事も多かった点を踏まえて、単純に断ち切れない素材への換装。合金を使用しての製造を加味して、樹脂製にするための素材集めと、ちょっと昔……って言うほど昔ではないけど、最初の頃を思い出してこんな事をしている。

「私の想い人は、私を惑わせますね」
「リアルじゃめんどくさいだけよ」

 採掘も終わり一息付けながら、洞窟の外を見てびゅうびゅうと未だに吹き荒れる雪山眺めて煙草を咥えて上下に揺らす。帰還アイテムはあるのだが、一応目的の地点まで近いので立ち往生している。こういう環境ががらっと変わったり、変化がでかすぎるのはこのゲームの悪い所。

「次のポイントはもう少し上だっけ?」
「そうですね、この辺はまだうちのクランでも探索とマッピングが済んでないので情報クランからの話ですが」
「あいつらも手広くやってんのねえ……あんたの所に来てから、こういうの多い気がするわ」

 私の都合で連れまわすってのはさっきも言ったが、結構クランの都合であっちこっち行くことになったりもしている。私が思っている以上マップも広いし、エリアもなかなか遠くに遠征したりも。此処にいるマップですら北エリアの7だし。

「ちなみにこの先繋がってると思う?」
「どうですかね、未探索なので」

 照らされる洞窟の奥、結構深い所まで続いていそうで、上にもいける感じはあるが何とも言えない。

「それじゃあ、奥に行こうか」
「目的地は上ですよ?」
「どうせ外から回ったら吹っ飛ばされて落ちるだけでしょ、ゲームなんだからこういうのは探索してなんぼよ」

 とは言え、いきなりこういう洞窟に入ってマップの平均レベル以上の強敵がぼろんと出てくる場合もある。やたらと強いネームドモンスターがいるってのも、パターンっちゃパターンか。そういうのでひーひー言いながら戦うってのも良いもんっちゃ良いもんだけど。

「それじゃあ前よろしく」
「人使いが荒いですね……」

 光源を持ちながら前に出る犬野郎の後ろ、ハンドガンを用意しながら洞窟の奥へと進んでいく。
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