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19章

533話 奥の手は絞り出して

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 相変わらず打ち合いをし続けているのだが、そろそろ限界ではある。
 ガンシールドの耐久が落ちているわけでもなく、向こうの打撃が痛いというわけでもない。精神的に限界なのと、ただただ基礎ステータスの差、武器の扱いの差がでかい。ま、武器交換したときからそれはあったから今更なんだけど。とは言え、力任せにぶん回しているのもあって結構刃こぼれもしている。ざまあみろ。

「結局一発も撃たない気かい!」
「そうですね、銃を持たせるよりはマシなんで」

 何度目かの振り回しでの一撃。強めに盾に防がれて吹っ飛ばされるので、剣の重量を使ってそのまま後ろに下がりつつ息を整える。

「ああ、むかつく、どうせ2本目持ってんだろ」
「それはどうですかね」

 無理に振って、こっちに自傷ダメージが入るわけでもなく、ただただ振り直したAgi値が無駄になってるのがでかい。せっかく上げたのに武器が足を引っ張っているって状況なので、ここでさくっと手放して格闘戦……なんて事になったらもっと火力は落ちる。

「銃使わせろよ、こいつ!」

 遠心力を生かした剣の重さを使っての攻撃。こんな攻撃でも一応直撃したら結構なダメージは出るわけだから、しっかりと防御をしてくるのだが重い音をさせていた時と違い、乾いた音が響く。なんだろうねえ、ガンナーって他の武器を使ってたら壊れやすい特性でもデータにあるんか。

「全く、その剣、結構いい武器なんですよ」
「使ってなんぼだろうに」

 今日だけで刀と剣をへし折ってるのは記録更新じゃない?あの刀バカのバイオレットですら折ったりなんだりあんまりしないってのに。ショートソードのさらに半分になった剣を握りつつ、どうするか考える。折れて軽くなったのもあるから取り回しはよくなったけど、火力は落ちてるし、リーチも短い。そもそもこんなもので立ち回れる程相手が温くない。

「でもまあ、耐えてこれた私の勝ちですね」

 何を、と思った瞬間、ガンシールドの3分の1程が吹っ飛ばされる。もう一本の剣を抜いてこっちを切り裂いた……割にはやけに鋭すぎる。しっかり防御もしたし、対刃性能もそこまで悪くない。そんな事をあれこれ考えていれば視界に入ってくるのはやけに眩しい刀身。

「どっから出した、それ」
「自分から、ですかね」

 どこぞのSF映画のような効果音を発しながら振ってくる光る剣をガンシールドと折れた剣でどうにか堪えるが、どんどんと武器も防具も欠けていく。って言うか、まともにかち合うよりもAgiの高さを使って回避に集中した方が良い気がする。やっぱり急に変えたステータスに追いついてない。

「ここで貴方との因縁も断ち切りますよ!」

 鋭く、切れ味良く、驚くほどに速い攻撃。どうしても咄嗟にガンシールドを構えてしまう癖のせいで、いよいよ持ってガンシールドも使い物にならなくなる。舌打ち一つ。直撃する前に折れた剣とガンシールドを外してバックステップで距離を取りまた一息。残された武器がもうないってのにどうやってあいつを倒すか考えないと。グレネードはもうないし、代わりの銃はどっか吹っ飛んでいる。奪った剣はないし、防ぐ盾もない。

「これはいよいよもって限界か」

 打つ手って言うか、出せる手がない。今まで使い続けたあれやこれやを取り出しての技って言うかカードももうない。

「これで、お終い!」

 いいや、人間こういう時こそ頭をフル回転よ。
 あいつの剣がHP、MPどっちかの消費ってのは良くわかる。だから、こっちのHPが減る前に向こうのHPを削り切ったら勝てる。そういう簡単な勝負。

「ほざいてろ、犬野郎が!」

 振り下ろされる光の剣を横に避け、がら空きのボディに対して、思いっきり左の拳を撃ち付ける。
 直後に炸裂音が響き、ガウェインの奴が呻いて後ろに下がる。

「やっぱり、そういう隠し玉を出すのが、腹立ちますね……」

 ガウェインが左で撃ちぬいたボディを抑えながら、距離を取るので追撃するために一気に近づいて、牽制の左ジャブ。勿論しっかり防御をしてくるので何度か金属音をさせて向こうの攻撃を誘発。案の定横に振ってきたのを屈んで回避し、一歩踏み込んだら奥歯を思い切り噛みしめながら右ボディ。ボンっと炸裂音をさせながらガウェインがくの字に曲がってからバックステップで距離を取る。

「だからあなたと戦うのは嫌なんですよ!」

 左右のボディに一発ずつ食らわせてやったが、その代償は結構でかいな。

「そうまでして何故勝ちたいのか……!」
「それが私、だからな」

 手を振ってからゆっくりと腰から両手を構えてガウェインを見据える。
 ああ、硝煙臭い、手は痛いし、柄にもない事してる。

「これで、本当に最後だ」

 指の間に挟んだ銃弾をぎらつかせながら、にんまりと口角を上げる。
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