上 下
561 / 622
19章

528話 削れて尖る

しおりを挟む
「アカメさん、良いニュースと悪いニュース、どっちが好きです」
「悪いニュースの方が先」
「そちらの、青髪と赤髪、それと忍者の人、負けたみたいですよ」
「で、良いニュースは」
「こっちの薫さんと一二三さんがやられた、って事ですかね」

 何度目かの鍔迫り合いから押しのけ、二人揃って距離を取って息を付いている所に、そんなニュースがガウェインの奴から聞かされる。なんだ、あいつら相打ちまでもっていったのか?どっちにしろこれで勝負としてはイーブンくらいにはなったかな。

「よく倒せたって褒めてやらんとなあ」
「まさか同じ人数まで持ってこられるとは思わなかったですね」

 じりじりと削られて私の方が若干不利って感じかな。そんな状態でもまだまだ楽しそうにして余裕のある感じが口ぶりと身振りからわかる。そりゃずっとアオメの奴を狙ってるから、向こうとしては銃弾を弾いてしっかり防御できてる。と思ってるんだろう。
 こっちの攻撃はなんだかんだで流れ弾っぽく、アオメに当ててダメージを食らわせてはいるので、そこを考えたらとんとんって感じ。若干こっちの方が不利ってくらいか。

「その割には、ガヘリスの奴が見えないけど」
「それはぴったり私の後ろで隠れているからですね、そういうスキルがあるので」

 ああ、もう、そうやって後出し後出しでスキル出しやがって、こちとらありもののスキルでどうにかこうにかしてるってのに。

「どーやったらそんなにスキル覚えるもんかね」
「それはもう、あれこれやりましたから」
「これが終わったらもうちょっと自分を鍛え直すか」

 そんな事を言いながら、アオメを狙いつつの射撃と剣戟。なのだが、それもそろそろきついというか、しっかりこっちを張ってくるようになったガウェインの猛攻を凌ぎながら狙うのが厳しくなってきた。こいつ、地味に後ろのガヘリスからバフ掛けて貰ってるな?

「とは言えなあ……」

 そもそもアリスと松田の攻撃力が低いってのを考えると、残った3人で私が気張らないと火力が出せないから押し切れない。

『アカメ殿!そろそろ限界ですぞ!』
『もう、すっから、かん』
『どのくらい攻撃した!』

 ガウェインの剣を受けながら、また頭の中で計算……していると、アリスと松田の奴がこっちら側に吹っ飛ばされるのでバックステップで避けつつ、抑え込みの射撃をしつつ改めて3人同士で見つめ合う。それにしたって、松田の薬品攻撃をするため、しっかりアリスの奴が防御していたのか、使っていた盾が銃創まみれ、いろいろな傷がついていて、どれだけ負担させてたかがよくわかる。あんまり前に出る子じゃないってのに、無理をさせ過ぎたか。
 松田の奴は、なんだかんだでいい相棒と言うか、十分仕事をしてくれている。それぞれに調合ポーションを配り、自分は苦手な投擲で援護していた。それなのに私と来たらどうだ、大したダメージを与えているわけでもなく、倒しているわけでもなく、ただただ戦闘を間延びさせているだけじゃないか?銃操作とガンカタを無理に使ったら負荷が掛かり過ぎて落ちるから、変な無理をしなくなったわけだし、いつまでもこいつと遊んでいるせいだ。

『もうちょっと耐えてくれ』

 スモークとグレネードを放り込んで少しだけ時間を稼いでからメニュー画面を開き、購入していた課金アイテムを使用する。装備がぎりぎりだったけど、まあ、どうにでもなるだろう。そしてアイテムを使ったとたんに外れる装備を見つつ、ステータスを振り直し。

「私も覚悟が足りんのかね」

 変に射撃重視にしてるから押し切れないわけで、オーソドックスな立ち回りはすでに見られてる。だからこそ、今まで見たことない立ち回りって言うか引き出しを使わないと今後が難しい。

「スキン券以外で私の課金が振り直しばっかだな」

 ぽちぽちステータスを振り直し。
 使ってる拳銃二つさえ使えれば良いから、それを装備できる最低限のステータスにして、後は思い切りAGIに振って速度特化。銃操作は最低限だからINTは振らない。なので最終的なステータスはこう、STR:10 AGI:57 DEX:15 VIT:1 INT:1 RES:1 
 Agi極ってのは昔を思い出す。昔は攻撃速度も回避率もAgi依存だったわけだけど、案外こういうのも変わらないな。

『よし、いいぞ』
『ごめん、もう、無理……』
『アリス殿、後はお任せを!』

 大きい衝撃音が響くと、アリスが転がってきてポリゴン状に消えていく。
 ボロボロになっている松田もいるが、最後に庇ってやられたって感じだな。

『さて、後は二人でランデブーだな』
『相手のガンナーはなかなか強いですなあ』
『私よりもか?』
『……いいや、強いのはアカメ殿ですぞ!』

 よーく、わかってらっしゃる。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...