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19章

525話 腐れ縁

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 さて、今一度戦況を整理しよう。
 現時点で、こっちの戦力は私、アリス、松田、ヤス、エルとアル。もちろんヤスとエルアル姉妹は戦闘中。ヤスの戦況を確認したら、反応はなかったのだが負けてはいないようなので良し。ただ、別れてからそこそこの時間が経っているのとやはり何も反応が返ってこないというのが気がかりではある。
 アリス、松田の二人も返事がないあたり結構切羽詰まってるか、余裕のない状況ってのは確定。ガヘリスの奴が合流したとしたら此処。元々防御力高い者同士の戦いだから泥沼化した戦いをしているというのも予想できる。松田のやつが常に回復…ってわけでもないだろうから、たまたまできた強力な調合瓶でも命中していたら結構な痛手なのだが……安定感がないのが問題になる。前に投げて真横に飛んでいくのって漫画でしか見た事ない。
 エルアル姉妹に関しては、2:1の有利状況をいかに活かせるかが問題。薫自体は強いがあくまでも単体性能での話になるので、うまいこと後衛のアルが頑張れば良いところはいけるはず

「希望的観測が多すぎる」

 だろうやら、大丈夫やらどうもなあ……信用してない訳ではないんだが、あんまりにも楽観的というか、自分に都合のいいように考えている節もある。別に悪い事じゃないんだが、いつも最悪を想定して動いてたから、ここまで信用信頼して考える自分に違和感がある。

「ヤスの紹介だし、一定水準ってか、私より強いんだからいいとは思う」

 そんな事を考えつつ大きいため息を吐き出しながら走り続ける
 とりあえずこっちの状況はこんな感じ。最悪想定ならアリス、松田、私だけで立ち回らなきゃならないってところか。


 問題は向こう側。
 判明している戦力で、ガウェイン、ガヘリス、一二三、薫。あと一人が最初からガウェインの奴と組んで立ち回っていた誰かになる。前衛ばかりと当たったというのを踏まえると後衛。盾役の後ろから前出て殴るってのもあんまり理にかなっていないし、しっかり前後を作って撃ってくる方が明らかに厄介だ。結構私の知り合いが多かったから、私の事を知っている、なおかつあのガウェインが認めるくらいの実力を持っている後衛職?

「パッと思いつかんなあ……生産系と前衛ばっかりだし」

 答え合わせが難しすぎる問題を自分で出して自分で悩むってアホだな。どっちにしろ対面したらわかるわけだし、対処方法はその時に考えれば問題ない……はず。

「どーも嫌な予感してくるんだよなあ」

 こういう時の悪い予感って当たりやすいからあんまり考えすぎるのもいけない。とはいえやる事はずっと変わらない。どんな相手が来ようが、どんな強敵だろうが、叩きのめして勝つというのが私自身に科した心持ちなのだから。



 そうして暫く走っていくと、目の前に広がるのは地形が変わり、丸焦げになっている地面や、焦げ臭く、火山で良く嗅ぐような硫黄の様な匂い。常に鳴り響いている金属音。知らない間にこんなにも派手な戦闘してたのか、こいつらは。

「硫化水素でもまき散らしたのか」
「そんな余裕があったと思いますかな!」

 お、生きてた。案外大丈夫なもんだな。個人的にはもっとボロボロだと思ったのだが、そんなこともなく、アリス共々元気な姿をしている。アリスの方は私が考えていた通り、何かしらの遠距離攻撃を防ぎながらどっしり構えたままだ。それにしても盾でしっかり受けてたらダメージ貰わないってずるくね?大盾ゲーにならない辺りが何かしらありそう。

「それで、状況は」
「向こうの後衛が強いですな、アカメ殿と同じガンナーのようで」
「どれ、どんな奴かな」
 
 多分松田の奴が作ったであろう、少し窪んだ所に陣取っているアリス、その後ろからちらりと向こう側を確認。向こうもガウェインの奴が大盾を持った状態で、その横から銃口が光る。銃口の感じから言えば拳銃だと口径が小さめ、ショットガンにしては微妙なところ、まあライフル系だろう。

「連射される?それとも単発で大きく貰う?」
「え、っと……どっち、も」
「また難しい話になってるな」

 ガンナーの環境ももう一度整理しないといけないけど、とりあえず2丁は持ってるって事だろうな。どっちにしろ厄介なことは変わりない。

「おーい、お前の後衛どういう奴か教えてくんない?」
「素直に言うと思いますか、それ」

 一応ガウェインの奴に声を掛けてみるけど、そりゃ返事はしないわな。

「お前との腐れ縁も此処で一つ決着付けようや」
「縁は切れませんがね」
「じゃあ、どっちが上かはっきりさせようか」

 とりあえず挨拶代わりの銃撃2発。当たり前だけど、しっかり防いでくる。あー、腹立たしい。ヤス、エルアルの状況次第だけど、下手したら挟み撃ちになる可能性を考えたら、さっさと倒したいところだけど、さっさと倒せない相手なんだよな。

「でもまあ、あいつらには期待したいわ」

 これが本当に最後だ。
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