最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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19章

518話 パワー!

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「我ながらいい出来のスーツよねぇ」
「それはそう」

 何回目かの攻撃を防御して吹っ飛ばされていく中での会話。マジで容赦なく殴ってくるから性質が悪い。重くて速くてでかい、強敵って大体こんな感じ。しかも戦闘方法が糸やら使うって思ってたら、思い切り肉弾戦ばっかりで、純粋なパワータイプ。この手の相手って初めてかもしれないくらいにはパワータイプ。大事だから二回。

「こうもがっつり攻撃食らってるのにやられないのは防具を作るやつの腕が良いんだな」
「やだもぉ、そんな事言っても手加減できないわよぉ」

 手加減なんて一つもしてこなかったくせに、今更そんな事言ってもするわけないだろうに。とはいえ、マジで手放しで褒めてるのは確かで、良い防具作ってくれてるから此処まで生き残っているのは事実でもある。だからその防具の弱点も良くわかっている。作った奴が一番、作ったものの弱点を知ってるって事だ。結構ちゃんとガード入れて攻撃を防いでいる割にHPが削られてるのがその証拠。ああ、もう、あーだこーだいう前に、どうやって倒すか絞り出せっての。

「弱点の一つも作らない完璧な防具って思ってたんだけど?」
「完璧すぎるのは面白くないじゃないのぉ」
「そういう職人気質な所、嫌いじゃないけどさあ」

 そんな会話をしながら両手を上に構えた状態で突っ込んでくる薫を刀で迎え、連打してくる攻撃に対して刃を立てて防御。当たり前だけど、しっかり拳には鉄板か何か入れてるので思い切り殴りつけてもそのまますぱっと斬れることはない。どっちかって言うと防御のためだからそこまで攻撃って訳じゃない。が、片手で抑え込めるほどの強さでもないので両手で受けるしかない。
 これがまあ、ガンナー殺し。銃を持てないから、反撃するのにどうしても刀を振るうしかないわけだが、それを容易く食らってくれる相手ではない。

「相性が悪すぎる上に、私が相手するような奴じゃねえよ、お前は!」
「だってガウェインちゃんが『アカメさんを狙え』って言うからねぇ」

 くそ、やっぱり私狙いで着てるじゃねえか、あのクソ犬が。

「そ・れ・に、やっぱりゲームでもお金を払ってくれる人って素敵でしょぉ?」
「思った以上にがめついだけじゃねえか!」

 いや、最初からそうだったわ。

「だから値段分の働きはしないといけないからぁ?」

 そういやいつも値段分の働きをしてたから、その辺はシビア。逆を返したら、値段分の働きをしたら勝負から下りてくれる……事は多分ないだろうな。手を抜くって事も多分ないし、ガチるしかない。

「もうちょっと手抜いてくれ」
「出来ないって言ってるじゃないのぉ」

 強めの踏み込みからの左ジャブ。半身になって刀を構えて真っすぐ振ってくる攻撃に対して防御しながらあれこれと考える。両手が塞がっているが、一応銃を使える方法は銃操作。これを使えばどうにかできるわけだが、それでも相手の手の方が早く、そっちの方に集中すると防御の手が緩んで一気に攻められる。

「これは、中々にきついな」

 だんだん回転数が上がっていくジャブ、しかも重いと来た。何度も防御をしているが、そのたびに硬質な音をさせてくるので、確実に何か仕込んでる。まあ、仕込んでようが仕込んでなかろうが、相手の攻撃のてを止めなきゃならない。

「こうして接近戦でガチる構成じゃねえ、っての!」

 ジャブが収まり、決めのストレート。垂直に立てていた刀を斜めに、滑らせる形でそれを受けるので、滑らせている状態から力を込めて外に弾く。そのまま刀を引いて流れるように突き攻撃。を、左のジャブでへし折られる。パキンと良い音をさせ、飛んでいく刀身と、折れた刀を見て舌打ち一つ。こいつ、攻撃速度も高いのずるくね?

 そんな事よりも短くなった刀身でどうするかって話よ。そういえばこれだけずっと店売りに近い奴だからそこまで性能高くないんだよな……ちゃんと名のある良い刀用意するべきだった。とりあえず一旦距離を取るために薫に蹴り一つ。もちろんあのむっきむきの体に効くわけ無く、何だったら物凄い硬い物を蹴り込んでいる感触が伝わるので倒れない相手を使ってこっちが利用してバックステップ。
 距離を取ったから一安心、なんて事はなく、すぐさまこっちに攻撃を仕掛けてくる。次は両手を前に構えてどしどしと突っ込んでくるので、そのちょっとした助走の瞬間を狙い、銃操作で手元にハンドガンを持ってきて射撃。
 直撃はしてるけど、あのむっきむきの体を貫く事は出来ず、ちょっとだけ行動を遅らせるにとどまる。正面装甲硬すぎるだろ、こいつ。

「クソかてえ!」
「しっかり鍛えてるからねぇ♪」

 案外リアルじゃ病弱で、その反動でこんなむっきむきのもりもりにしているかもしれん。頑丈過ぎて射撃でも止まらないってどういう事だよ、マジで。

「闘技場の連中や、そのほか諸々強い連中が多かったけど、ぶっちぎりでお前が強いわ」
「褒めてもなーんもでないわよん♪」

 連射している所、銃ごと手を握られると、一気に振り回され、柱の一つに思い切り叩きつけられる。すっげえ視界がちらつく。どんだけレベル高くてステータス振ってるんだ。こんな力任せの事出来るなんて知らんぞ。

「クソ、クソ、クソ!」
「アカメちゃん、口悪いわよぉ?」

 どうやってこいつ倒せばいいんだ。射撃も通らないし、接近戦も通らない、魔法でも撃ちこむか?のしのし近づいてくるだけでプレッシャーも半端ない。あと、隠し武器か技か知らんけど、切断系のもあるって考えると、本当にどうしようもない相手じゃ?

「自分が不甲斐ないっていつも思ってるけど、今回ばかりはそんな事言ってられんわ」

 この感じだとポーション狩りもしてきそうで、隙が無い。
 いや、此処で倒すって選択肢しかないのがダメなのか。今ここで負けても、後で勝てばオールオーケー。やられなければやり直せる。

「ほんと、嫌になるわ、マジで!」

 横になった状態で近づいてくる薫を見つつそろっとインベントリからスモークグレネード一つ。見られないように点火。火が付いたのをちらりと見て、見えないようにそのままスーツのベルトに差し込んでおく。

「これも仕事だから観念してちょーだい♪」
「はい、わかりました、っていうわけねーだろ!」

 一気に駆け出し、突っ込んでくるのを左右に振ってフェイント入れてから前転で通り抜け。良い感じに後ろにスモークが焚かれているので、目もくれずに全力疾走。

「覚えてろばーか!」

 捨て台詞も忘れないぞ。
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