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19章

510話 勝てば官軍卑怯とは言うまいな

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「そろそろ限界ですぞ!」
「人数差があるからな」
「殲滅戦じゃないだけマシでしたな!」

 そういやこの辺の人数差を考慮してなのか知らんけど、フラッグ戦にしてくれたのは良い所。それ以外は何にもないって言うかあまりにも不利すぎるから、妥当って感じはある。ついでに言えばフラッグ持ちは一番安全なところにいる松田にしていたりする。

「本当にそろそろももえの奴を仕留めないとダメだな」
「あっち、いる」
「よーし、いい子だな」

 アリスが言った方向、ちらちらとあのピンク髪が見えるが、しっかりと陣形を組んで移動と攻防をしっかりしている。

「今から突っ込むから、頼むぞ」
「了解であります!ヤス殿、エルアル殿、関口殿にも伝えておきますぞ!」
「ど、どう突っ込むの……?」
「アリス、シールドバッシュ持ってたよな」

 飛び出し射撃して引っ込み、状況をもう一度整理。前も後ろも結構な人数がいるから、突破するのは容易ではないけど、あいつのクランの感じで行けば確実にももえがフラッグ持ちだろう。だから私とタイマンして負けたほうがって話を持ち掛けてきたんだろう。

「スモークを焚くから、視界が塞がれたら私を盾の上にのせてからバッシュして射出だ」
「ん、わかった……」

 返事を聞いて、すぐさまスモークを投擲。
 私がこういう特殊な投擲物を使うってのは知っているはずだから、対策済みでしょ。まさかとは思うけど何にもしないって事はないだろうから、あんまり目隠しにはならん想定。ちょっとでも視界を防いでこっちが攻めに回るための一手よ。

「いき、ます……」

 攻撃の手が緩んだところで、アリスの盾に乗り、シールドバッシュの勢いを使って一気に上空から飛びあがってついでのフラッシュと追加スモークを用意。滞空中に下を見ればあっという間にスモークを晴らしてアリスの方に攻撃を繰り出しているのが見える。
 
「さーて、最後だぞ、ももえ」

 くるりと一回転、追加スモークを投げつけてから、フラッシュグレネードは上に。2回目の投擲が上から来たってのですぐにももえがこっちに向かって攻撃を仕掛けてくるが、仕込みのフラッシュで目くらまし。こっちへの攻撃が少しでも緩んだところでハンドガン2丁をさらに先投げ、刀を抜いたら身近な奴に向かって一刀両断。

「ボス……!」
「人が多いと大変だぞ」

 ポリゴン状に消えていくプレイヤー越しにももえと視線が合い、にんやりと笑うと共に、2個目の追加スモークが充満され、すぐに姿を隠す。

「スモーク晴らして!ボスの場所を報告!」

 まあ、それだと遅いんだけどな。
 トラッカーを使い、スモークでも問題ないように視界を晴らしてから、手早く返す刀で近くにいたプレイヤーに一撃。やっぱりファンってだけでそこまで強くないのばかりだな。これは射撃戦してた時から、感じてたけど。そんな余裕そうな感じを出していれば、頬に銃弾が掠める。まあ、私が仕込んだから、しっかりトラッカーを使ってこっちを視認してくるわな。

「いい加減、決着付けよう!」
「後腐れのないように、な」

 スモークを自分自身で散らしながら射撃してこっちに向かってくるももえを視認し、ガンシールドと刀で銃弾を防ぎながら相対。がちゃがちゃと金属音が鳴り響く中、銃と刀での鍔迫り合い。

「ももえさん!」
「来たらダメ!」

 軽い膠着状態だったところに、横やりが入るので銃操作を使っての射撃カットイン。よくもまあ宇宙世紀にいる奴らは、こんな感じで飛び道具を使うもんだな。

「よーくわかってるな」
「こういう混戦好きだもんね!」

 強く弾き合い、距離を取った後、また近くにいたプレイヤーに一撃加えて倒す。して、倒されたプレイヤーを見て突っ込んでくる奴に対して銃操作と刀を振るって迎撃、すぐにそれを阻止してくるももえに対してグレネードを投げつけて、足止め。

「やっぱりこういう時の方が私は楽しいな」

 お、咄嗟に銃で撃ち落とさなかったのは、偉いぞ。引火して一気に爆発したら被害が広がるもんな。それにさっきももえが手を出すなって言ってくれたおかげで、あんまり強く攻撃に出てこないのも追い風。風向きはこっちに向いている。

「って言うかガンカタ使わないの!?」
「ガンカタは無理しすぎると動けなくなるんでな」

 結局ももえのクランメンバーが周りを囲んでいる状況で、タイマンのようになるが向こうも望んだ事だから良いだろう。

「だからって刀と銃操作で私に……!」
「勝てるんだな、これが」

 刀とガンシールドを構えてももえを見据えつつ煙草に火を付けて一息。いつものように紫煙を大きく吐いたら、こっちから攻める。体勢を低めに、ガンシールドを前に構えた状態で強く体当たりをして、ももえの体勢を崩す……ことは出来ないので、一瞬でもいいので視界を奪う。と、ともにグレネードを地面に転がす。

「接近戦じゃこっちの方が強いじゃんか!」
「だから、頑張ってるだろう?」

 反撃の格闘攻撃と銃撃、シールドと刀で銃口を反らし、少しでも直撃を受けないように体との間に挟みこんでダメージを軽減、こっちの攻撃も同じように直撃を避け、その防御でこっちに射撃をかましてくる。一進一退ってこういう事なんだろう。
 だとしてもばれなきゃ良い……とは思えない、周りがいるわけだから、私の仕込みを注意する奴は絶対にいる。だからこそ、足元にも注意させるってのが大事になる。

「ああ、もうなんでそんな余裕なのかな!」
「こういうだろ、心は熱く、頭は冷たくってな」

 数度目の鍔迫り合い、膠着したら銃操作でハンドガンから射撃……は、もちろん警戒されているから当たらないというか、回避されるのでそこを狙い刀を振るう。そして火花を散らし、攻撃を受け、防御をしてを繰り返す。

 そんな戦い方を何分も続けていく後、私の方の仕込みが終わる。
 十分巻いたグレネード、銃操作での不意打ち、こっちから敢えて攻める姿勢、あれこれやってどうにか勝てるかもって所なんだから、大変だよな。

「やっぱり、あの手この手で立ち回るのが私らしいわ」

 にぃーっと口角を上げギザ歯を見せながら膠着状態に敢えてさせる鍔迫り合いからの銃操作。狙いはももえじゃなく、足元にばら撒いておいたグレネード。

「それは、分かるっての!」

 まあ、そりゃそうだろうな、あからさまに落としておいたし、銃操作でそっちに点火させる方法を取るだろうってのも今までの私の行動からしたら確実にやってくるって予測が出来る。だからこそ、片手でこっちを抑え込んだ状態で、銃操作をしていたハンドガンを叩き落してこっちに攻撃を繰り出してくる。そうなるのも、よくわかってる。

「これで全部だと、思うか?」
「魔法を使って点火くらいは分かってるけど!」
「それは当たりだが、半分不正解」

 そもそも魔法をぶっ放すほどのMPはもう残ってない。
 残ってるのは、トレードマークのあれくらいよ。

「フラッグはお前だろ?」
「そうだけど……そっちはボスじゃない?」
「せいかーい」

 にんやりと笑い、口元の煙草を敢えて胸元に落として自分の服の中に。

「やば……!?」
「遅いぞ」

 そのまま押し倒すようにももえを抱きしめると共に、閃光と爆発。
 周りにも一気に点火していき、自分でもやったことのない爆音が響き渡る。
 
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