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19章

502話 空っぽにする

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「あれこれ考えてるからこうなるんかね」

 あれから数度の打ち合いを経て、息を整えつつどう攻略するかを考え続ける。
 耐久力が高すぎるプレイヤーってどういう事なのか、何でそうなのかもわからないし、なんだったらこっちが削られてるばっかりな気がする。私ってこんなに弱かったっけか。

「十兵衛から聞いてたわりに、歯ごたえねえな!」
「自分でも分かってるっちゅーの」

 勢いよく振り下ろされ、地面が抉れるほどの攻撃を避けてカウンター射撃。当てた瞬間には動きが鈍るからダメージが通ってないって訳じゃないのはわかる。このゲームに無敵時間や無敵になれるスキルもないからやたらと防御力を高くして、直撃していない様に何かしらの仕込みを入れているはず。私とタイマンを張るくらいなんだし、それくらいの対策をしているだろうよ。

「がっかりだな、その程度じゃねえか!」
「だから分かってるって、言ってんだろうが!」

 強く横に振ってきた斧を下から忍者刀を使い、かちあげると共に空いてる方で射撃。少し止まった所で忍者刀を思い切り叩きつけ、斧と一緒に距離を取らせる。唐突な攻撃方法で驚いた顔をしているのを見てから銃口の先が切れたハンドガンを捨て、忍者刀とハンドガンのハイブリッド型に、ついでにぼろぼろになったスーツも脱ぎ捨て加圧シャツとパンツスーツのみにして防御力をかなぐり捨てる。
 
「あー、もう、むかつく!」

 どうせ全部元通りになるのはそうだけど、それ以前の話で、ここまでやられたってのがむかつく。ガンカタ覚えて十兵衛をボコっていい気になってたらこのざまよ。何から何まで自分にむかつく。此処で勝ったら確実に頂点までいける確信がある。どんなに強かろうが、どんなに数がいようが、今のクランメンバーが折れようが私が折れなかったらどうにでもなる。

「結局追い詰められないとこうならない自分がマジでむかつくわ」

 いつものように煙草を咥え、煙草の先にハンドガンを構えた上で、刀で擦って火花を散らして火を付ける。そのまま大きく、一気に根元まで吸い上げてからぶはぁっと紫煙を吐き出して煙草を吐き捨てる。そのうえで明らかに覚悟を決めた私を見て、ニーナの奴が冷や汗を垂らしながら少したじろいだのを見て、にんやりと笑う。

「追いつめられると狂暴になるのはなんだったかな」
「ジャッカルだろ、ジャッカル」

 そのまま一気に走りだし、接近戦を仕掛ける。
 先手取るのはこっち、ぐっと柄を握ったうえで一気に刀を振りぬく。甲高い金属音を奏で、斧で防がれるが、お構いなしに攻撃を続ける。何度もかち合い、火花を散らし、向こうからの攻撃のほうが強いのはわかっているが、攻撃を逸らして直撃さえしなければ安い。あれこれやっているわけではない、ただただ頭の悪い戦い方。

「いい加減、折れろっていってんだよぉ!」
「私が折れる所、見たことあんのか!」

 強く刀と斧を振るい合うが、やっぱり力負けして打ち合うごとにこっちのほうが少し下がってしまうが、そんなことはどうでもいい。やっぱりこういうぎりぎりのやり取りってのが私には足りなかったってのが良ーくわかる。
 いちいち直撃しないのがどういう絡繰りなのか、どういうスキルや防具や考える意味必要なんて私にはこれっぽっちも必要がない。あれこれ考えて動くのが私の弱点だとしたら、後先考えずにガンガン前出てやり合ってる方が、らしいわ。

「ちっとは、マシになったじゃねえか!」
「やっぱりお前らの事集めたのは正解だったわ!」

 ニーナ、こいつって結構私と似たようなところがあるよな。負けず嫌いで、舐めた相手に対して思い切り振りかぶって殴れる所とかな。だからって私が負ける理由にも原因にもなるわけではないし、此処まできたらHPが切れる、MPが切れるじゃなくて気持ちが切れたほうが負ける。自分でもわかるくらいに奥歯を噛み締めて、力の限り刀を振るいながらニーナとの打ち合いを続ける。何度も何度もぎゃりぎゃりと打ち合っていれば少しずつこっちの刀のほうがやられてくる。当たり前だけどニーナの斧のほうが硬度も威力も高い。
 そして無理なかち合いをしていればこっちの武器のほうが先にやられるのは当たり前の話。ばきんと大きく音を立てて、私の刀、3分の2程の刃が上空を舞うが、根本で攻撃を受ければいいだけ、攻撃は銃がある。

「いい加減、負けろぉ!」

 刃を立てた状態から面の方をこちらに向けて斧を振ってくる。攻撃力よりも命中させることに集中したうえでこっちに追撃ってのが狙いなんだろうけど、そんな甘い選択をここでやるから勝てねえんだよ。
 折れた刀で面の攻撃を咄嗟に逆手に持ち替えた刀で面に対して垂直に立てた刀で受け、勢いのまま上に飛ぶ。多少なりとアッパースイングだったのが良かったよ。
 そのまま上に飛び上がり、体を捻って文字通り上からの撃ち下ろしで射撃。を、斧の面で受けて防御してくる。

「それも、想定済みだっての!」

 刀を手放し、意識を集中。最初に捨てた銃口の先が切れたハンドガンを銃操作でニーナの懐に持って行って連射。いくら仕込みをしてようが、至近距離で食らえば多少なりと貫通くらいするだろう。
 上から見て連射を食らってたじろぎ、面の安定が薄れたところに着地。振り払われるのを意識してすぐにバック宙でその場を離れつつ、使っているハンドガンのマガジンを銃操作を駆使して抜き、着地に合わせてマガジンを2本投げて装填。明らかに動きが鈍ったニーナに対して、2丁拳銃で射撃しながら接近して最終決戦。
 気合で振ってくる斧を滑り避け、懐に潜り込んだら射撃、嫌がって距離を取れば銃操作での追尾を駆使して無理にでも接近戦。なんだ、結局臆せずに懐に潜り込むのが正解じゃん。

「その、にやつき顔が、大嫌いだ!」

 おっと、笑ってたか?
 攻撃の振りも鈍ってさっきよりもキレが無くなった攻撃をぎりぎりで避け、射撃を挟みを繰り返していればついに攻撃すらされなくなる。

「そうやって、余裕ぶって、私が強いっていう、お前が、大嫌いだ……」
「……私はお前の根性と性格、嫌いじゃないわ」

 流れを掴んでしまえば本職が戦闘じゃないニーナに勝つことは容易だった。なんとなく、腑抜けた私に活を入れたような気もする。そして殆ど動けなくなったニーナの頭に銃口を突きつけ、軽く一息ついてから引き金を絞る。一発の銃声、泣き声。

「……これだから、私は負けられないんだよ」

 大きく息を吐き出し、ぺたんと尻もちを付いて一気にやってくる疲労感を感じていると大きくアナウンスが流れる。

「決着付いてない連中は納得しなさそうだ」

 やっぱあいつ義理堅いわ。
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