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19章

500話 わからない限界

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「なんでこうも、きついかなあ……」

 残り少ないポーションを飲んでから瓶を投げ捨て状況を確認。
 なんだかんだで3人倒したわけだけど、フル回転で銃操作、さっき覚えたガンカタによる急な攻撃変化、罠群の突破に連戦。ここまでやったら流石の私も疲れる。っていうか、回復しても足元がどうもおぼつかない。一応リアル体調的には問題ないし、何かしらの機材やリアル肉体のトラブルじゃない。

「ゲーム側の状態異常か?」

 手が震え、若干ふらつくなんてことは今まで無かったし、短時間でHPを急激に減らして増やしたりも今まで散々やってきたわけだから急にどうしたんだ?こういう仕様だったのか、それとも連戦しまくってただただ私のほうにガタが来たか。

「ちょっと休憩」

 それぞれの戦場は大体頭に把握してるので、一直線に行けるといえば行けるが、ニーナの奴がどれくらいの人数を連れてどういう割り振りをしたのかがいまいちわからんのが問題。主戦力はアリスの方に集中させておいたから、そこから分断されて……ってのを考えたら、アリス達で3人、エルアル姉妹で戦うのがベストで……エルアル姉妹をだれが止めるかってのがポイントか。
 とりあえず煙草を取り出し、咥えて火を付けすぱーっと一服しつつのその場に座り込み。こっから先の事を考えてぶるってるわけじゃない、だったらこの震えてなんだって話よな。

「イベントに合わせて無茶してきたツケか」

 思えば今までいろんなイベントをこなして無茶してきた気がする。特に今回に関しては一からメンバーを集めたり、時間がないのに連戦してそれぞれの能力を測ったり……ヤスがいるとはいえ、だいぶ負担がかかって積もってたか?
 そんな事を考えつつ煙草を吹かして小休止だが、あまりにも余裕かましてる気がする。まだ試合終わってないし、さっさと次の場所に向かうべきなのだが、十兵衛との戦闘で出し切りすぎたなあ。流石に負けた奴からの情報共有は出来ないだろうけど、戦闘中に近接戦も出来るようになったくらいは言われてそう。とりあえずぷあっと紫煙の輪を吐き出して遠くから聞こえる戦闘音をBGMにしつつまったり。

「さて、と……そろそろ行かないと」

 時間にしてそこまでだが、さっきまでの変な震えは特になくなった。なんだ、どこぞの不吉な番号を持った殺し屋みたいな状態か?銃を使うって点しか共通点がねえぞ。

「一番相手にしたくない連中を最初にやるとはなあ……」

 そして自分が集めた連中を自分で叩きのめすってのもなかなか。





「姉御がこないっす」
「何処かで足止めじゃないですかな!」

 そんな会話をしているとアリスが吹っ飛ばされて転がり、すぐさま立ち上がる。ヤスの援護攻撃と松田の回復でどうにか堪えているが、それもそろそろきつくなってきている。

「それにしても猛攻が凄すぎではないですかな!」
「相手は……狂刀のバイオレットっすね、姉御はどういうルートで彼女を引き込んだのやら……」

 そんな事を言っていればアリスが駆け出し、飛んできた刀を盾で弾き荒い息を整えつつ防御を続ける。

「どういう人なのですかな!」
「次から次へと剣を取り出して投げたりなんだり、とにかく剣を駆使して戦うのが得意っす」
「ほう、アカメ殿の剣技バージョンですかな?」
「そんな感じっす」

 それを聞いたヤスがちらりと猛攻を繰り出している相手をアリスの横から覗き見る。刀を主軸にして、投げナイフ、両手剣、曲剣、中反り刀、鉈、とにかくいろんな種類のものを投げたりなんだりとバリエーションが豊か。

「よくもまああんなに持ってるっす」
「アカメ殿の元クランは良い腕の鍛冶師がいると聞きましたからな」

 鳴り響き続ける盾と刀剣の金属音と、時折聞こえるアリスのうめき声。戦闘開始すぐからずっとこんな感じ。ガンナーと魔法使いがいたが、そっちの処理は先にヤスが出来たため、残った一人が強敵だったというパターンになる。

「……ちらりと聞いて、エルアル姉妹が2人、こっちで3人、姉御が3人……新人を入れたと言っていたけど……人が足りない?」

 状況を考えてふとそんな事を思いつくヤス。
 どれくらい追加を入れたかまでは情報を仕入れることが出来なかったのだが、これだけで終わるはずがない。

「何か見落としている気がするっす」
「どういう事ですかな!」
「姉御が一番の危険人物と仮定した場合、下手に人数を割くよりも……」

 そんな事を考えていると、松田が血相を変えてヤスを押し倒す。その瞬間、流れ弾で飛んできた刀が数本近くに突き刺さる。

「危ないですぞ!」
「とにかく気を付けるには越したことがないっす」





「そろそろ仕留めないとやばいかなぁー」
「こっちの、セリフ」

 エルアル姉妹の方も、戦闘が佳境に入り二人揃って荒い息を整えて、次の一撃を狙い始める。散々っぱら戦い合っていたのもあり、武器や防具はかなりボロボロ。相手をしていたマイカとバイパーも同じくらいにはなっているが、余裕があるようなそぶりを見せている。

「ボスが仕入れた奴だけあって根性もあるし強いが……こっちが負けるってのはボスを関わっていたら、ないな」
「負けるのは、こっちもない」

 ガトリングと風魔法の応酬も暫くやっていたが、二人揃ってガス欠気味。バイパーからしたら用意していた銃弾をかなり消費させられ、アルも限界まで消費させられている。

「アル、勝負するよ」
「分かった」

 エルが呼吸を整え、ぴしっと構えるのを見てマイカもにまにまとした顔から少し引き締まるが口元は緩んでいる。

「バイパーも踏ん張ってよね」
「お前こそ、負けるなよ」

 そして少しばかりの膠着と静寂が起き、先にエルが動き出す。
 それに合わせて残り3人も一斉に動き出して決着を付けにかかる。
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