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19章
492話 あっさりとした突破
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「バカなの?」
「アホともいえるっす」
二人の目の前でいやぁといいながら頭を搔いている奴を見てため息を吐きつつ、移動を続ける。結局、松田を助けるために森を突っ切り、プレイヤーをあしらって合流したころには、最初に突入した森の入り口からほぼ真反対の所でようやく合流できた。
「か弱い拙者が戦えるわけないですぞ!」
「あんなことしておいての口じゃないっす」
うんうんと付いてきたエルが頷いてから森の方を指さす。
きっかけは小さい?火種だったかもしれないが、いろいろな要因が重なり合って今じゃ森というより、炎が広がる延焼しまくった燃える森に変貌している。爆発一発でこんな感じになるわけはないのだが、プレイヤーがそこらかしこで火をつけた、炎を広げるような事をしたのが原因だったりする。
「それじゃあ、次はアルの所に……」
と、言いかけたところ、流れ弾の火炎弾が飛んでくる。それをすぐさま剣の腹で打ち返して防御。着弾したところに火柱が上がり、また森の一部を焼き尽くす。つまるところ、この炎上騒ぎのせいで引火するようなのは控えていた連中が暴れまわっている。
「場所も悪いし時間もないっす、この辺で点数稼ぎのほうがいいっす」
「予選突破の点数ラインがわからないですが?」
「……稼げるだけ、稼ぐ」
そういうや否や、エルが駆け出し、燃え盛る炎に向かって一閃。こっちを狙っていたプレイヤーの一人を叩き切り、一撃のもと葬り去る。
「それで、スコアは」
「なんでか結構稼げてるっす……まー、うちにはバトルジャンキーが二人いるっすから」
「関口の爺様と……エル殿ですかな?」
「いやいや、姉御っす、ああ見えてばっちばちっす」
ヤスがメニューを開いて自分たちのスコアを見ながら移動を開始。全部丸焦げになって辺り一面焼け野原になっているのならいいが、木の形を保った状態で葉っぱの部分が全部燃え盛っているので、炎の森になっている。じわじわ削られるよりも移動しておいた方がまだいい。
「外円もゆっくりダメージエリアにされているっす、さっさといいポジション取りに行くついでに合流するっす」
あれこれ画面を出しては消して、マップをチェックして進行方向を決めて二人を引っ張る。悪くない撃破スコアを稼いでいるので、このまま頑張れば問題なく予選突破ができそう……なのだが、上がり方がちょっとおかしい。急にスコアが加算していき、ぱっと止まってまた上がる。のを繰り返していたのだが、徐々にだが、その止まる間隔がなくなり、加算していくスコアも伸びなくなっていく。
「他の二組が頑張ってるんですかね!」
「いいから、合流」
「予選だからいいっすけど……あんまし手の内晒すのは良くないっす」
マイペースな二人を見てヤスが大きくため息を吐き出して移動を開始する。
「ぬう、回復がないか」
「からっから」
市街地から抜け出し、森の方に抜けたアルと関口。
道中は戦闘したり、それを回避するための立ち回りをしたりでなんだかんだで疲弊して、これ以上の戦闘が難しいところまで来ている。大体の原因は関口が初めて見る相手にときめいて殴り合いを始めたりすることが原因だったりする。
「しかし、このゲームはプレイヤーが多いほどバリエーションが多くていいのう」
「手の内、晒しすぎ」
「どうせ戦っていればわかることじゃろ、ただ……ちいと戦いすぎたのはそうじゃの」
誰かが制御してないと暴走する関口を良い感じにカバーしているアルだが、本人的には手のかかるエルが関口に代わっただけなので特に問題はなかったりする。が、それでも戦闘回数が多かったのは事実。
「少し回復したらもう一度跳躍して状況をみたいのう」
「上げるのと着地で結構MP使う」
「ふむ……ちなみに風魔法とはどういうものなんじゃ?」
首を傾げつつ、手で仰いで風を送ったりしながら休憩中に聞き始める。
「加速、減速、真空波による斬撃が主、後は使い方」
「魔法は便利じゃのう」
「FFの有無や威力の調整もあるから」
人差し指を立てて軽く集中すると指先に小さい風の渦ができ、それをぴっと飛ばす。ふよふよと飛んで行った先の瓦礫に着弾すると小さい傷が何個も付いて風の渦が消えていく。
「これを大きくする、小さくする感じ」
「魔法剣士というのもいいのう」
くつくつと笑いながら立ち上がって伸び一つ。
「さて、それじゃあ上に上がって見に行くとするか」
そう関口が言い、跳躍するとともに風魔法で高く飛び、しばらく滞空。森の方は……と、ぐるりと辺りを見れば北東のほうに見える大量の黒煙を見てからふんわりと着地。
「どこぞの阿呆が一帯を燃やしたようじゃな……うむ、行くのはやめるか」
「……私らのクランが原因だったりして」
「やりそうな奴は草原にいるじゃろうに」
それもそうじゃな、と移動を始め、森へ行くのをやめてマップ中央へと向かう。
結局ずっと隠れ、暫くしたら音が鳴りやんだ。
かなりの時間、戦闘を繰り返していたようだけど、それも収まると同時に転移が始まる。別にやられたわけでもないのにどうして?と思っていたら、あんまり見慣れない待機室のようなところにクラン員全員が転移する。
「……」
「中々きつい試合だったが……急にどうしたんだ」
試合開始と変わらず綺麗なスーツでびしっと決めたアカメさんが煙草を咥えながら涼しい顔をしている。上で何があったのかわからないけど、相当無茶してたような気がするんだけど、そんなこともなかったのかな。
「規定スコアに到達したからだと思うっす」
「あんたたち結構倒したのね」
ぷかぷかと煙草を吹かしてのんきなことを言っているアカメさん、そうじゃなくてずっと自分で戦い続けていた結果だと思う。それも連戦続きで大変だったってのに余裕綽々って顔と態度で接しているのは凄い。
「なんじゃ、あっけないのう……」
「ふるい落としですかな、全滅してもアウト、消極的でもアウトですな!」
退屈そうにしている関口さん、安堵しまくってる松田さん、かなり対照的。エルさん、アルさんはべったりだし、ヤスさんはアカメさんとまた作戦会議をしてるみたい。
「手の内を晒しすぎた、多分マークがきつくなる」
「姉御は優しいっす、もっと厳しくてもいいっす」
「仕方ないだろう、巻き込んだのは私だ」
「甘いっすねー……そこがいいところっすけど」
そんな話を聞いて少しだけ顔を落とす。私がもうちょっと頑張ればそんなことはなかったんだろうけど、その分を負担させてしまったからきつくなるわけだから……そんな風に思っていたらちらりとアカメさんがこっちを見てからギザ歯を見せて笑ってくる。
【どうせ2戦目からばれるから気にするな】
【はい……】
【ちょうど私も試したいことがあったから良いんだよ、気に病むな】
大丈夫と言って私の盾をこつこつ叩いてくる。
きっと上で戦っているときはぼろぼろになっていたんだろうけど、そんなことを微塵も感じさせず、何だったら艶のある黒髪から赤髪をちらつかせながら振舞っている。
「ま、予選は突破出来て当たり前よ、本番はこっからだしな」
「不安材料は多そうっす」
「なるようになるって」
けらけら笑いつつ、煙の輪っかを出して遊んでいるアカメさん。あれくらい余裕を持った方がいいのかもしれない。
「アホともいえるっす」
二人の目の前でいやぁといいながら頭を搔いている奴を見てため息を吐きつつ、移動を続ける。結局、松田を助けるために森を突っ切り、プレイヤーをあしらって合流したころには、最初に突入した森の入り口からほぼ真反対の所でようやく合流できた。
「か弱い拙者が戦えるわけないですぞ!」
「あんなことしておいての口じゃないっす」
うんうんと付いてきたエルが頷いてから森の方を指さす。
きっかけは小さい?火種だったかもしれないが、いろいろな要因が重なり合って今じゃ森というより、炎が広がる延焼しまくった燃える森に変貌している。爆発一発でこんな感じになるわけはないのだが、プレイヤーがそこらかしこで火をつけた、炎を広げるような事をしたのが原因だったりする。
「それじゃあ、次はアルの所に……」
と、言いかけたところ、流れ弾の火炎弾が飛んでくる。それをすぐさま剣の腹で打ち返して防御。着弾したところに火柱が上がり、また森の一部を焼き尽くす。つまるところ、この炎上騒ぎのせいで引火するようなのは控えていた連中が暴れまわっている。
「場所も悪いし時間もないっす、この辺で点数稼ぎのほうがいいっす」
「予選突破の点数ラインがわからないですが?」
「……稼げるだけ、稼ぐ」
そういうや否や、エルが駆け出し、燃え盛る炎に向かって一閃。こっちを狙っていたプレイヤーの一人を叩き切り、一撃のもと葬り去る。
「それで、スコアは」
「なんでか結構稼げてるっす……まー、うちにはバトルジャンキーが二人いるっすから」
「関口の爺様と……エル殿ですかな?」
「いやいや、姉御っす、ああ見えてばっちばちっす」
ヤスがメニューを開いて自分たちのスコアを見ながら移動を開始。全部丸焦げになって辺り一面焼け野原になっているのならいいが、木の形を保った状態で葉っぱの部分が全部燃え盛っているので、炎の森になっている。じわじわ削られるよりも移動しておいた方がまだいい。
「外円もゆっくりダメージエリアにされているっす、さっさといいポジション取りに行くついでに合流するっす」
あれこれ画面を出しては消して、マップをチェックして進行方向を決めて二人を引っ張る。悪くない撃破スコアを稼いでいるので、このまま頑張れば問題なく予選突破ができそう……なのだが、上がり方がちょっとおかしい。急にスコアが加算していき、ぱっと止まってまた上がる。のを繰り返していたのだが、徐々にだが、その止まる間隔がなくなり、加算していくスコアも伸びなくなっていく。
「他の二組が頑張ってるんですかね!」
「いいから、合流」
「予選だからいいっすけど……あんまし手の内晒すのは良くないっす」
マイペースな二人を見てヤスが大きくため息を吐き出して移動を開始する。
「ぬう、回復がないか」
「からっから」
市街地から抜け出し、森の方に抜けたアルと関口。
道中は戦闘したり、それを回避するための立ち回りをしたりでなんだかんだで疲弊して、これ以上の戦闘が難しいところまで来ている。大体の原因は関口が初めて見る相手にときめいて殴り合いを始めたりすることが原因だったりする。
「しかし、このゲームはプレイヤーが多いほどバリエーションが多くていいのう」
「手の内、晒しすぎ」
「どうせ戦っていればわかることじゃろ、ただ……ちいと戦いすぎたのはそうじゃの」
誰かが制御してないと暴走する関口を良い感じにカバーしているアルだが、本人的には手のかかるエルが関口に代わっただけなので特に問題はなかったりする。が、それでも戦闘回数が多かったのは事実。
「少し回復したらもう一度跳躍して状況をみたいのう」
「上げるのと着地で結構MP使う」
「ふむ……ちなみに風魔法とはどういうものなんじゃ?」
首を傾げつつ、手で仰いで風を送ったりしながら休憩中に聞き始める。
「加速、減速、真空波による斬撃が主、後は使い方」
「魔法は便利じゃのう」
「FFの有無や威力の調整もあるから」
人差し指を立てて軽く集中すると指先に小さい風の渦ができ、それをぴっと飛ばす。ふよふよと飛んで行った先の瓦礫に着弾すると小さい傷が何個も付いて風の渦が消えていく。
「これを大きくする、小さくする感じ」
「魔法剣士というのもいいのう」
くつくつと笑いながら立ち上がって伸び一つ。
「さて、それじゃあ上に上がって見に行くとするか」
そう関口が言い、跳躍するとともに風魔法で高く飛び、しばらく滞空。森の方は……と、ぐるりと辺りを見れば北東のほうに見える大量の黒煙を見てからふんわりと着地。
「どこぞの阿呆が一帯を燃やしたようじゃな……うむ、行くのはやめるか」
「……私らのクランが原因だったりして」
「やりそうな奴は草原にいるじゃろうに」
それもそうじゃな、と移動を始め、森へ行くのをやめてマップ中央へと向かう。
結局ずっと隠れ、暫くしたら音が鳴りやんだ。
かなりの時間、戦闘を繰り返していたようだけど、それも収まると同時に転移が始まる。別にやられたわけでもないのにどうして?と思っていたら、あんまり見慣れない待機室のようなところにクラン員全員が転移する。
「……」
「中々きつい試合だったが……急にどうしたんだ」
試合開始と変わらず綺麗なスーツでびしっと決めたアカメさんが煙草を咥えながら涼しい顔をしている。上で何があったのかわからないけど、相当無茶してたような気がするんだけど、そんなこともなかったのかな。
「規定スコアに到達したからだと思うっす」
「あんたたち結構倒したのね」
ぷかぷかと煙草を吹かしてのんきなことを言っているアカメさん、そうじゃなくてずっと自分で戦い続けていた結果だと思う。それも連戦続きで大変だったってのに余裕綽々って顔と態度で接しているのは凄い。
「なんじゃ、あっけないのう……」
「ふるい落としですかな、全滅してもアウト、消極的でもアウトですな!」
退屈そうにしている関口さん、安堵しまくってる松田さん、かなり対照的。エルさん、アルさんはべったりだし、ヤスさんはアカメさんとまた作戦会議をしてるみたい。
「手の内を晒しすぎた、多分マークがきつくなる」
「姉御は優しいっす、もっと厳しくてもいいっす」
「仕方ないだろう、巻き込んだのは私だ」
「甘いっすねー……そこがいいところっすけど」
そんな話を聞いて少しだけ顔を落とす。私がもうちょっと頑張ればそんなことはなかったんだろうけど、その分を負担させてしまったからきつくなるわけだから……そんな風に思っていたらちらりとアカメさんがこっちを見てからギザ歯を見せて笑ってくる。
【どうせ2戦目からばれるから気にするな】
【はい……】
【ちょうど私も試したいことがあったから良いんだよ、気に病むな】
大丈夫と言って私の盾をこつこつ叩いてくる。
きっと上で戦っているときはぼろぼろになっていたんだろうけど、そんなことを微塵も感じさせず、何だったら艶のある黒髪から赤髪をちらつかせながら振舞っている。
「ま、予選は突破出来て当たり前よ、本番はこっからだしな」
「不安材料は多そうっす」
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