最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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19章

490話 ボスとしての責務

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「あー、きっつ……」

 ハンドガンの装填を済ませてから一息ついて周辺を警戒。
 ポリゴン上になって消えていくプレイヤー二人を見ながら、持ってきたポーションで回復も入れる。相対した魔法使い2人、どっちも攻撃系で、回復は一番弱いのを覚えていたって感じ。MP余裕があるからできる芸当だな。SP余裕さえあれば魔法職って死ぬほど万能になれるのずるくね。

「と、そんな事よりも、先にアリスを見つけないと」

 戦闘前に散々ぱら探していたアクセシビリティから引っ張ってきたテキスト用チャットで連絡を取り始める。頼むからこれで反応してくれ、じゃないとこっちは打つ手がないぞ。

【何か用ですか……】
【現在位置はわかるか?】
【わかんないです……早く見つけてほしいです】

 見た目から全然わからんかったけど、中身はだいぶ乙女だな。どっちにしろ連絡が取れるってことはどうにでもなるって事だ。

【マップは見れるよな?北のほうを向いた状態でちょっと待ってろ】
【何するんですか……】
【今から上に2発撃つから聞こえた方角を教えろ】

 普通に会話していると、今更テキストチャットをするの結構不便ではあるな。
 そんなことを思いながらも持ってきたARを取り出して空に向けて2発。付近で戦闘をしていてもわかるくらいにはでかい銃声を響かせてすぐに反応を待つ。

【えっと……東から?】
【わかった】

 つまり、私から見て西側にいるってことだ。まあこんな事改めて言わなくてもわかることだが、マップを見て西の方角に向いて走りだす。のと、同時に騎乗ユニットが使えるかも確認。出ろぉ!なんて言いながら指パッチンで上から降ってくるわけはないので、じんわり出現。すぐさま上に乗って移動しながら2発撃ちを繰り返す。

【ええと……北東のほうから聞こえてます】
【周りにほかのプレイヤーは?】
【まだいないです】

 まだって事は、別のタイミングでは見つけたのか。
 とりあえず茂みをかき分け、銃声を響かせ続けながら接近していくこと数回。ようやくアリスの奴を見つけることができる。でかい図体のわりに小さく丸くなっているのでため息一つついて声を掛ける。

「大丈夫か」
「……」

 とりあえず縦に首を振って返事をしてくる。
 さて、問題はこの状態で戦力になるのかどうかってのがあるので、今一番大事なことを聞いておかないと。

「首を振って返事してくれればいい、正直に答えるんだぞ」
「……」

 わかったというように頷くのでそのまま話を続ける。

「戦闘するの、嫌か?」

 そんな事をなんで今聞いたの?といった顔をした後に小さく頷く。なんとなくだけど、防御極にしていたのはどちらかといえば景色だったり雰囲気を重視してこのゲームをしていたから、だったのかもしれない。

「……わかった、ちょっと待ってろ」

 すっと立ち上がり、いつも仕込んでいるグレネード、しかも通常より倍の火薬量の奴を投げて爆破。草原に爆音が響き、土砂の雨を降らせたのち、ぽっかりと大きい穴ができる。いい感じの穴ができたのでそのままアリスをぐいぐいとその穴に入れさせ、上を盾で塞がせる。ついでにその穴の上にさらに4脚戦車を足を広げて塞いでしっかりと蓋をする。

【絶対にそこから出てくるな、爆発と銃声で他のプレイヤーが押し寄せてくるから、じっとしていろ】
【……でも、盾役だから】
【いいからそこでじっとしてろ】

 いつもの煙草を取り出して咥え、火をつけてから大きく吸い、紫煙を吐き出す。あんだけばかすか銃声を鳴らして爆発音まで響かせていたのもあって、プレイヤーがぞろぞろとやってくる。全く、これだから戦闘好きの連中はこうだ。まあ、バトロワ系のゲームじゃ漁夫を狙ってくるのが当たり前だわな。
 一つだけよかった点は、アリスを見つけたところの草原、周りの草がほかに比べて高いこともあって、遠距離からばかすか撃たれたり場所を把握されないってところだな。
 
「ボス稼業も大変だな、全く……」

 トラッカーを使い、索敵状態にしているうえで、ハンドガンを2丁構え、銃剣付きのARは地面に突き刺しておく。
 
「マガジンはまだ余裕がある、ポーションもあるし、精神状態も悪くない」

 ふいーっと細く長く息を吐き出し止める。
 風で草が揺れる音が響く中、ちらりと映る赤い影を目で追ってから姿勢を低くして息を潜める。そうしてすぐ、茂みから赤い影が飛び出してくるのでこっちから駆け出し、先制攻撃。体を思い切りぶつけて体制が崩れたところ、すぐさまハンドガンを構えて接射。相手がどういう職か確認する前にやっちまったけど、仕方がない。こういうのは先手必勝だし?
 ぶつかった感じで言えば軽装、盗賊系や身軽な感じの相手だな。がちがちの戦士系じゃないならガンナーで押し切れる。不意打ち体当たりを食らってうめき声を漏らした相手に対して銃口を押し付けて連射。なんかよくわからん声を発しながらポリゴン上に消失し、脱落していくのを確認してからすぐさま装填。銃声を聞きつけた別のプレイヤーが茂みから斬撃を飛ばしてくるので、銃受けしてから後ろに飛んでからの後転。2撃目を振りかぶっているところを射撃で牽制をかけ、そのまま連射をしつつ前進。

「次から次へと」

 何度か金属音をさせ銃弾を防いだプレイヤーに対して手持ちのハンドガン2丁を投げつけ、銃操作で回転を掛けてぶつける。もちろんこれも防いでくるのは織り込み済み。前進しながら突き刺しておいたARを引き抜いて銃剣突撃、思い切り突き出したのを剣で受けられ拮抗状態にはなるが、銃操作で投げつけたハンドガンで背後から不意打ち。まさか卑怯とは言うまいな。流石に後ろから不意打ちを貰ったのもあり、バランスを崩したので銃剣を突き刺し、ARで射撃追撃で2人目を撃破。すぐに体制を整え、使った分のマガジンを入れ替え。
 ガチャガチャとマガジンを入れ替えているところに、右肩が氷結する。魔法やら剣士やら、銃声につられてやってきすぎだろう。

【やっぱり、出たほうが……】
【黙って中にいろ】

 凍結系の魔法を食らったの初めてか。雪山での戦闘の時にもそんなに搦手を使ってくる奴いなかったわ。そもそも私自身、このゲームのすべての魔法やスキルを把握してる訳じゃないから初見の攻撃が飛んでくるのは当たり前だってな。
 
「全く、これだからサプレッサーを作ろうって毎回思ってるんだったわ」

 召喚しておいた騎乗ユニットに関しては障害物扱いされているだけで、特に攻撃を貰ったりしていないし、このままここで暴れまわっても問題なさそうだ。

「もっと私以外の奴と戦ってほしいんだけどなあ」

 凍結している右肩をがしがしと叩いて砕きつつ、集結し始めているプレイヤーとの乱戦が始まる。
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