最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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19章

478話 対集団、面接

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 あれやこれやと準備を進めていくと、ちょいちょいと露店のメッセージを見たのが個人通話を飛ばしてくる。とりあえず会って話すというのを着た順番に連絡していき、その間にクランの設立を済ませる。済ませるのだが、此処で問題が一つ。名前をどうするかってものよ。
 ヴェンガンズカンパニーは、例の商人連中に対して復讐するってのがあったから、文字通り復讐って意味を付けた名前だったけど、今回はどうしようかな。毎回こういう時に名前を付ける時に苦労するってのはどのゲームでもそうだけど、一時的に使うクランの名前って適当にしておきたいけど『勝ち』を狙っている以上、印象が残る物にもしておきたいジレンマ。

「でもまあ、面子を集める前に作っておかなきゃならんってのがあるわな」

 すっかり用のなくなっている冒険者ギルド。転職やクエストや、何か色々出来るわけだけど、ちゃんと通っていればストーリー的なクエストも分かるんだろう。とりあえず用があるのはクランの設立なので、さくっとクラン設立の手続きを進めていくのだが、やっぱり名前の所で立ち止まる。此処に来る間にもあれこれ考えていたけど、結局思いつかないままだったりする。

「ん-、名前なあ……」

 いつものように煙草を咥えて上下にぴこぴこと揺らしながら「名前を入力してください」と言った表記を眺める。いや、マジでどうしようかな。とりあえずなんかいい感じの奴を考えて……見てもしゃーないか。『と、仲間たち』って感じでいいや。で、クランも作ったし、早速連絡を貰った連中を片っ端か見て、勧誘するとしよう。





「なーんて、気楽に考えていたんだが」

 とりあえず5人程あって話を聞いてみたが、ぶっちゃけ微妙だった。
 私の事をある程度知っているから、それのおこぼれを的な奴、そもそも勝つ気がそんなにない、所謂エンジョイ勢ばっかり。エンジョイ勢が悪いとは言わないけど、あいつらとは絶対に相容れないし嫌悪する存在にも近い。つまるところ今の所全滅って事。

「要求値高いってのも考えものだよなあ」

 ちょいちょいと連絡は貰っているから、それを返して1人ずつあって合否をその場で言って……プレイヤーの数が多いから私が欲しい人材がヒットしやすいと思ったのだが、多いからこそヒットしないという事態に陥っている。
 
「まー……しょーがないかあ……」

 此処に関してはどうしようもない。今まで自分の理想の面子を揃えられてきたのは本当に出来過ぎていた。まあ、そりゃそうだよな、よくよく考えてみれば今まで都合がいい人材ばっかり引けてきたってのはある。だからここで妥協するってのもそれはそれでなあ。そんな事をぼーっと考えつつ、また面接した相手を返してため息一つ。
 って言うか、本当に碌な奴がいねえ、強い奴って軒並みちゃんとしたクランに入っているから、今更フリーの奴なんてイベント前にいるわけがないってのを失念していた。つまるところ現状で募集に食いついているのは、上手い事クランに入れなかった連中ばっかり。

「……やっぱりソロでやっていくの考えるか」
「それは勿体ないっすね」

 急に声を掛けられ、その方に顔を向けるとあまり見知っていない顔。って言うか村人AみたいなNPCな感じすらある。あんな縦線2本、横線1本みたいな顔が出来るんか。

「えーっと……どちら様」
「アカメさんがゲーム開始した時に、尾行してた奴っす」
「あー、舎弟って言ってたのか……」
「名前はヤスっす」

 最後の最後に裏切って犯人はヤスなんて言われそうだな。

「それで、情報クランのヤスがどうしたん」
「クランメンバーを募集していたっすよね、それっす」
「……いや、あんた情報クランでしょ、何で私の所に」
「あー、情報クランって専属のメンバーとフリーのメンバーがいるっす、自分は後者だってだけっす」

 それはそれでいいとして、何で私の所に来たのかって説明をしろって事なんだが?

「正直此処に来た理由は楽しそうって理由っす」
「エンジョイ勢って私死ぬほど嫌いなんだけど」
「いやいや、ガチをしながら楽しむってだけっす、それに面子集めなら自分にお任せっす」

 確かに情報クランにいたからプレイヤーの情報は結構持っているよな。私の事を尾行していたってのもあるし、やめろって言った後もちょいちょい動向を確認していたみたいだし、私が欲しい人材を持ってくるって言う点ではいいが……。

「私があんたに返せるもんはないわよ?」
「楽しんで『勝ち』を貰えるならいいっす」
「……イベント開始までに最低5人、10人くらいは集めたいけど、出来る?」

 お任せを、と言う様に胸を叩いて自慢げにする。
 ……やっぱ私運持ってるわ。
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