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19章
476話 阿鼻叫喚
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舐めて掛かったってのはあった。
正直な所、人数差もあったし、向こうはやけに偏った編成をしていた。だからこっちは単純な人海戦術で余裕をもって戦えると思っていた。なのだが、蓋が開いてみたらどうだ、ずっと後手後手に回っているのはこっちじゃないか。
「はぁ、はぁ……!どうして、どうしてこうなった!」
後ろから追ってくる気配を背中に受けながら森の中をひたすら走る。
あれだけいたうちのクランメンバーは1人、1人とやられて結局、自分しか残っていない。急襲を貰って、ちりじりに、そこからは本当に早かった。クランチャットで連携を取っているにもかかわらず、ぽつぽつと会話が途切れなくなっていくのは恐怖でしかなかった。
「クソ、クソ、なんなんだよ、あいつら!」
最初は良かったんだ、最初は。
数人のまとまりを叩き、すぐに撤退するから追撃戦、1人1人ぷちぷち倒していったと思ったら、途中からこっちがやられるようになっていた。どこでどういう事になったのかが分からない。気が付いたら自分だけ。本当に訳がわからない。
「なんだよ、もぉ……」
思いっきり文句をぶちまけてやろうと思ったら、視界が暗転する。クソ、なんなんだよ、あいつら!ピンク色の髪をしたあのプレイヤー、マジで覚えてろよ。
「止めろ、止めろ!」
「やってるよ!」
「防御体勢ー!」
そう言うと前衛の数人が吹っ飛ばされ、その吹っ飛んだところから銃声が鳴り響く。後衛に回復を促している間にも、前衛削られていく。こちらの前衛は少なくとも30人がいるからそうそう抜かれないと思っていたのに、あっさり突破され、孤立したのからぷちぷちと潰されている。
「前衛は何やってるんだ!」
「相手の突破力が高すぎるんですよ!」
「後衛の手が薄いぞ!弾幕張れ、弾幕!」
回復、そして魔法、矢、弾が乱れ飛ぶ中、楽しそうに兎の耳を揺らしながら突っ込んでくるのが見える。そしてその後ろには紫色がちらちらと見える。あいつら確か闘技場の上位陣だったはず。ただ向こうの人数が少ないはずだし、こっちは手数で押せるだろ。
「たった3人だぞ!防御を固めろ!」
「やってますよ!」
「もぉー、やだあー!」
金属がぶつかる音、銃声、プレイヤー毎の怒号や悲鳴、そして眼前に広がる、陣形を突破してくる兎。楽しそうに、そして何よりも狂気的な目をしてこっちの前衛を吹き飛ばし、攻撃をぎりぎりで避けるのにスリルを感じている。
「敵襲ー!後ろだ後ろ!」
「何人か報告!」
「2人!2人!」
たった4人でこんなにも押し込まれるってありえないだろう。イベントルールも人数差での補正値がある訳でもないし、何があってそんなに……。
「……ぐあ!?」
「狙撃注意!移動しろ移動!」
「林の方に移動だ!囲まれるぞ!」
前が主力だと思ったのに、後ろの方がメイン?
どっちにしろ、このままじゃやられる。
「撤退しろー!陣形の立て直しも忘れるなよ!」
人数差を覆せるほどの何かを持っているという事か。
「第一陣、射撃用意!」
「発射よーい!撃ぇー!」
連続で響き渡る銃声、そこから金属音が大きく響くと、すぐさま距離を詰めてくる足音が響く。一糸乱れぬ足並み、足音をさせながらしっかりと自分たちの交戦範囲を守り、変な追撃や深追いを全くしてこない。
完璧な統率、完璧な防御陣形、完璧な攻め。それが完璧と思うのは、しっかりとした立ち回りが戦っているからこそわかるから。
「第二陣、射撃用意!」
「発射よーい!撃ぇー!」
有名な3段撃ちを参考にして、射撃間隔をあけすぎず、なくしすぎずの押し込みをしているわけだけど。そんな小細工なんて効きませんと、そんな感じに前進してくる相手クランが怖すぎる。臆する事もなく、一糸乱れぬまま常に前進。
「距離を詰められた、後退!」
そう言うと共に、前にいたメンバーが倒れる。
「『スラッシュ』で遠距離攻撃ですか……シールド展開、弾幕を絶やさないように!」
一番前にいるメンバーにガンシールドを展開させて向こうのクランからの攻撃を受けさせつつ、弾幕の形成。容易に近づけなくさせてはいるが、派手な抜けもしなければ突破もされない。膠着状態と言えば膠着状態になっている。
「これは……どっちかの心が折れたら負ける」
弾が尽きるか、向こうの回復か防御が崩れるか。どちらにせよどっちが先に折れるかの戦いだ。
開幕、速攻で1人やられた。
その後、相手の姿が見えないまま、1人、1人と潰されている。
直ぐに接敵しているはずなのに、全くもってその痕跡すら見つからない、ダメージと言うか攻撃的には銃撃なのは確かなのだが、銃声もマズルフラッシュも見えない。50人もいたクランメンバーの大半が1発、もしくは2~3発食らったらすぐに死んでしまう。
「あと何人残ってる」
「15人です、円陣を組んで索敵してますが、向こうの数も戦力も……」
そう言っていると小さく音が響いてくる。
何度も聞いたこの音、これが響くと誰かが倒れるが……金属の甲高い音が強く響き、防御に成功する。
「南西側から飛んできたぞ!」
「円陣を崩さないまま移動だ!追撃するぞ!」
銃声、攻撃を貰った方に移動していると。
「北東側から攻撃!」
「馬鹿な、少ししか移動してないんだぞ!」
「挟まれるぞ、周囲警戒!」
回り込みの速度が速過ぎる、何かタネがあるはずだ、それを知らない限りこっちは後手後手に回り過ぎる。
「T2Wの対人バランスどうなってんだよ!」
正直な所、人数差もあったし、向こうはやけに偏った編成をしていた。だからこっちは単純な人海戦術で余裕をもって戦えると思っていた。なのだが、蓋が開いてみたらどうだ、ずっと後手後手に回っているのはこっちじゃないか。
「はぁ、はぁ……!どうして、どうしてこうなった!」
後ろから追ってくる気配を背中に受けながら森の中をひたすら走る。
あれだけいたうちのクランメンバーは1人、1人とやられて結局、自分しか残っていない。急襲を貰って、ちりじりに、そこからは本当に早かった。クランチャットで連携を取っているにもかかわらず、ぽつぽつと会話が途切れなくなっていくのは恐怖でしかなかった。
「クソ、クソ、なんなんだよ、あいつら!」
最初は良かったんだ、最初は。
数人のまとまりを叩き、すぐに撤退するから追撃戦、1人1人ぷちぷち倒していったと思ったら、途中からこっちがやられるようになっていた。どこでどういう事になったのかが分からない。気が付いたら自分だけ。本当に訳がわからない。
「なんだよ、もぉ……」
思いっきり文句をぶちまけてやろうと思ったら、視界が暗転する。クソ、なんなんだよ、あいつら!ピンク色の髪をしたあのプレイヤー、マジで覚えてろよ。
「止めろ、止めろ!」
「やってるよ!」
「防御体勢ー!」
そう言うと前衛の数人が吹っ飛ばされ、その吹っ飛んだところから銃声が鳴り響く。後衛に回復を促している間にも、前衛削られていく。こちらの前衛は少なくとも30人がいるからそうそう抜かれないと思っていたのに、あっさり突破され、孤立したのからぷちぷちと潰されている。
「前衛は何やってるんだ!」
「相手の突破力が高すぎるんですよ!」
「後衛の手が薄いぞ!弾幕張れ、弾幕!」
回復、そして魔法、矢、弾が乱れ飛ぶ中、楽しそうに兎の耳を揺らしながら突っ込んでくるのが見える。そしてその後ろには紫色がちらちらと見える。あいつら確か闘技場の上位陣だったはず。ただ向こうの人数が少ないはずだし、こっちは手数で押せるだろ。
「たった3人だぞ!防御を固めろ!」
「やってますよ!」
「もぉー、やだあー!」
金属がぶつかる音、銃声、プレイヤー毎の怒号や悲鳴、そして眼前に広がる、陣形を突破してくる兎。楽しそうに、そして何よりも狂気的な目をしてこっちの前衛を吹き飛ばし、攻撃をぎりぎりで避けるのにスリルを感じている。
「敵襲ー!後ろだ後ろ!」
「何人か報告!」
「2人!2人!」
たった4人でこんなにも押し込まれるってありえないだろう。イベントルールも人数差での補正値がある訳でもないし、何があってそんなに……。
「……ぐあ!?」
「狙撃注意!移動しろ移動!」
「林の方に移動だ!囲まれるぞ!」
前が主力だと思ったのに、後ろの方がメイン?
どっちにしろ、このままじゃやられる。
「撤退しろー!陣形の立て直しも忘れるなよ!」
人数差を覆せるほどの何かを持っているという事か。
「第一陣、射撃用意!」
「発射よーい!撃ぇー!」
連続で響き渡る銃声、そこから金属音が大きく響くと、すぐさま距離を詰めてくる足音が響く。一糸乱れぬ足並み、足音をさせながらしっかりと自分たちの交戦範囲を守り、変な追撃や深追いを全くしてこない。
完璧な統率、完璧な防御陣形、完璧な攻め。それが完璧と思うのは、しっかりとした立ち回りが戦っているからこそわかるから。
「第二陣、射撃用意!」
「発射よーい!撃ぇー!」
有名な3段撃ちを参考にして、射撃間隔をあけすぎず、なくしすぎずの押し込みをしているわけだけど。そんな小細工なんて効きませんと、そんな感じに前進してくる相手クランが怖すぎる。臆する事もなく、一糸乱れぬまま常に前進。
「距離を詰められた、後退!」
そう言うと共に、前にいたメンバーが倒れる。
「『スラッシュ』で遠距離攻撃ですか……シールド展開、弾幕を絶やさないように!」
一番前にいるメンバーにガンシールドを展開させて向こうのクランからの攻撃を受けさせつつ、弾幕の形成。容易に近づけなくさせてはいるが、派手な抜けもしなければ突破もされない。膠着状態と言えば膠着状態になっている。
「これは……どっちかの心が折れたら負ける」
弾が尽きるか、向こうの回復か防御が崩れるか。どちらにせよどっちが先に折れるかの戦いだ。
開幕、速攻で1人やられた。
その後、相手の姿が見えないまま、1人、1人と潰されている。
直ぐに接敵しているはずなのに、全くもってその痕跡すら見つからない、ダメージと言うか攻撃的には銃撃なのは確かなのだが、銃声もマズルフラッシュも見えない。50人もいたクランメンバーの大半が1発、もしくは2~3発食らったらすぐに死んでしまう。
「あと何人残ってる」
「15人です、円陣を組んで索敵してますが、向こうの数も戦力も……」
そう言っていると小さく音が響いてくる。
何度も聞いたこの音、これが響くと誰かが倒れるが……金属の甲高い音が強く響き、防御に成功する。
「南西側から飛んできたぞ!」
「円陣を崩さないまま移動だ!追撃するぞ!」
銃声、攻撃を貰った方に移動していると。
「北東側から攻撃!」
「馬鹿な、少ししか移動してないんだぞ!」
「挟まれるぞ、周囲警戒!」
回り込みの速度が速過ぎる、何かタネがあるはずだ、それを知らない限りこっちは後手後手に回り過ぎる。
「T2Wの対人バランスどうなってんだよ!」
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