上 下
486 / 622
18章

455話 再スタート

しおりを挟む
 久々にやってきたT2Wの自宅。
 何だかんだでメンテとアップデートは5日で終わったのだが、仕事の方が忙しくなったおかげで1日出遅れた。が、何かしら急を要するイベントがある訳でもないし、これと言って特筆すべきことが無い。

「フィーラ、インフォ」
「はい、此方です」

 うちのNPC本当に優秀。
 メンテナンスで特に気になる所は無し、そりゃメンテナンスなんだから当たり前だろって。次にアップデート内容、こっちも大幅に何か変わった……ってのは見られない。大まかには職業ごとのバランス調整、人口増加における各マップの調整、その他細かい所の便利機能を追加している。ざっと一覧を確認した所で私が使えそうなのは、マーケットボードの実装とそれに付随したユーザーオークションくらい。今までは露店しかなく、目的の物を探すのが大変で不便だったので、この機能の実装でそれを無くそうという魂胆らしい。
 いきなり全員使えたら露店の販売権を課金で購入した人が損してるじゃねえか!ってなるところもしっかり対策済み。課金で露店を使えるようになってると、街中ならどこでも手元で売買できるようになってる。流石にダンジョンだったりモンスターのいる所では使えない様に調整はされているので、金の続く限りダンジョン潜りって言う無茶は出来ない。
 オークションに関しては下限上限の値を決めて出品するだけ。これもマケボ機能の1つで、ちょっとした目玉機能っぽい。こっちも露店の権利持ってないと出品出来ないので課金したのが無駄になるって事はなし。

「露店環境がダメになるんじゃないかなって思ったけど、あえて露店だけで販売っての有りか」

 どっちにしろそこまで環境の変化はなさそうだ。運営の考え方を深読みしたらもうちょっと経済を回したいって所かな。まあ、あんまりにもインフレが起きたら何かしら対策も入れてくるか。

「何かしらのイベントやら記念クエストみたいなものは無いから、本当にメンテと細かいアプデだけだわ」

 とりあえずこれからどうしようかって話になるのだが……。

「まずは装備の揃え直しか」

 例のイベント後、特に揃えたわけでもないので、服装兼防具は相変わらずの加圧シャツにスーツの下だけって言う何ともちぐはぐな状態。武器に関しても手持ちの奴は全部あげたり破損したりなんだりで自宅に並んでいる武器しか持ち出すことが出来ない。

「どうするかなあ……」

 なんか此処まで来たら残ってる銃やら防具、全部売り払って新調するってのもありだな。ちゃんと売れるかどうかって話があるけど、一応マケボに出せば取り下げない限りはずっと出品できるみたいだし、全部投げっぱなしにしておくのも良いか。
 とりあえず自宅の装備ラックから色々引っ張り出し、羅列されているアイテム欄をチェック。
 ランペイジMk2、G4シュバルベ、Dボア、カスタムM2ラビット(劣化)、110mm対艦ライフル、CH、TH、鳳仙花、パンツスーツ(黒赤)、パンツスーツ(黒)、眼帯、ツナギ(青)、キャットスーツ 雪迷彩外装 防寒コート。
 防寒装備は使うからキープしておくとして、他は全部流しちまうか。全部ガンナーギルドで購入できるのを確認しているし、なんだったら自作用のレシピも手に入っている。って事は全部流して新規装備に資金を回そう、そうしよう。防具周りはそこまで高級品でもないから安めに設定しておいて、銃器は店売り半額くらいで捌ければ問題ないべ。

「ざっと計算してえーっと……1丁2万くらいで捌ければ良いとして、20万くらいになりゃいいか」

 そんなわけで早速手元のマケボ画面から手持ちの銃をぼんぼん出品していってずらっと並べておく。これ匿名で出せないのはトラブル回避かな。まー、そんなすぐ売れないだろう。防具に関してもまあ適当に1万無いくらいで投げ売り。そういやゴリマッチョの奴に結構な金払って作ってもらったってのに何とも雑に処分しようとしている気がする。でも全部支払ったのは私だから問題なし。

「じゃあ、出てくるわ」
「いってらっしゃいませ」

 自宅の事は相変わらずフィーラに任せつつ、出る前に少しだけため込んでおいた資金も引き出してゴリマッチョのクランに向かう……が。

「すいません、薫さんまだ来てないんですよ」

 折角来たのに……と言うのはこっちの都合なので、まあ忙しいんだろ。ログインしたら私が来たって事を伝えてくれと伝言を残しておいて、武器の調達か。このままガンナーギルドに行って新しい銃器を仕入れるとして、どんな銃を使おう……そういえばアサルトライフルだけはT2Wでは使ってないな。RPGなんかもあるみたいだし、いつもより重火器メインに武器を組むのもありっちゃあり。
 それと地味に使ってみたいのがクロカバの方でも使っていたフックショット。発射機構は先込め式でいけるだろうから、使い捨て運用すれば結構いい感じになると思う。まあ、結局の所、思うだの何だのっていういつもの見切り発車。

「それじゃあまあアサルトライフル買いに行くか」

 いつも私のタイミングで良いことがあるわけないわな。これまでがずっと上手くいきすぎただけだわ。




「つーことで、良い銃くれ」
「あ?」

 ガンナーギルドの受付でいつもの様に不愛想なNPCと会話、と言うただの無茶ぶりのような独り言を言いながらギルドショップの銃一覧を眺める。こういう武器やら防具のリストを見るのって楽しいのよね。昔は攻略本にイラストが乗ってたりしたけど、今じゃしっかりゲーム内で描写されるからそういう楽しみ方も無くなったわ。なんだったら○○Wikiなり攻略って入れたら出てくるから、そのうち攻略本って文化も無くなりそう。

「なんだったら忍者の方に力入れるのも有りかなあ」
「……買うのか、買わんのか」
「じゃあ一番安い奴」

 銃器の値段って銃の大きい分類と、その中の細かい分類で変わるのをすっかり忘れてた。同じハンドガンでもオートマチックの方が安かったり、銃器のステータス、特に固定値の部分や元の装弾数で値段もかなり変わってくる。その中でもアサルトライフルって一番安い奴でも15万はするから、結構な高級品だったわ。

「試し撃ちは?」
「いいわ、どうせこれしか買えないし」

 メニューでぽちっと購入し、インベントリに追加されたアサルトライフルを確認してから一応射撃場に持って行って無限弾をチューブマガジンにとちゃりちゃりと押し込みながら、次の予定を考える。
 とりあえずカスタムでちょこっと弄って銃剣付けて、アタッチメントで使いやすさを上げてから……上げてから?
 あれこれ作るってのも結局アイディアだけ出してトカゲの奴に丸投げしてたし、銃器製造、アタッチメント、防具諸々……自分から作るって事しなくなって結構長い気がする。いや、まだサービス開始2ヵ月手前くらいなんだけど。

「初心に戻って、1人であれこれしてみようか」

 弾を入れ終わった銃を構えて一発。レバーアクションで空薬莢を弾き飛ばすと共に二発、三発と連続射撃、このリロード含めて撃ち切るまでを2セット。あれこれと考え事をしながら撃ち、込めてを繰り返してから一息入れて最後の空薬莢を飛ばす。そして硝煙が燻る中、大きくそれを吸って吐き出してからきっと目線を鋭くして気合を入れる。

「久々に、1人気ままにT2Wの世界を見て回ろうじゃないか」

 そして決意表明を口にしたうえで、撃ち切った銃弾を残った金で購入してからギルドを後にする。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

処理中です...