上 下
483 / 622
17章

452話 決勝戦

しおりを挟む
『今回のイベントもいよいよ大詰め!Aリーグの方、観客の皆様お待たせいたしました、第32回チームトーナメント、決勝戦になります!』
『文字通り長らくお待たせしてしまいましたが、これで最後ですね』
『それではチーム紹介といきましょう!此処までレッドとブルーとしか言ってませんでしたが、AチームBチームと呼びましょう!』
『それはどういう理由で』
『それぞれリーグの一番強いチーム、と言う事ですね!』

 こっちの実況解説は結構愉快だな。
 試合開始までの間を盛り上げながらやたらとテンション高く話している。私らが戦っている最中もこんな風に実況していたっぽいな。流石に戦闘中に相手の状況が筒抜けになったら問題だから聞こえないようにしているのはちょっと考えりゃ分かるけどね。

「それにしたってよくもまあ此処まで来れたわ」
「自信無かったのか」
「正直地上だったら勝ち目は無かったか。柳生クラスのがごろごろしてるのも分かってるし」

 ほんと、宇宙マップって条件じゃなかったらあっと言う間に負けてただろうな。

「それで、作戦は」
「相手がどう出ようが前があんた、私は後ろ、上下と背面を取られない様に常に正面に相手を捉える」
「簡単だ」
「頭使わなくていいでしょ」

 確かに、と返事を貰い満足そうにしてから眼前に広がる黒い空間を眺める。
 マップはどうやらオーソドックスだと思っているデブリ帯にプラスして廃船がちらほらと漂っている所でやり合う形だ。結局コロニー内で戦うのはバトロワの時だけだった。もうちょっと楽しみたかったのに。

『さあ、それではAチームの紹介です!
 まさに一撃必殺!その一太刀は全てを切り裂き、その一太刀で全てをねじ伏せる!柳生選手!』

「ひゅー、かっこいいー」
「やめんか」

『そして次の紹介です!
 まさかの初心者プレイヤー!強豪プレイヤーにも引けを取らない強さで此処まで勝ち上がってきた、謎の初心者!アカメ選手!』

「謎の初心者らしいぞ」
「うっせーよ」

 そのままBチームの方の紹介もされるのでそれを聞きながらどういう相手かを考える。と言っても前2機後2機の4機編成、聞いている限りだと前1中1後2って感じの立ち回りをする編成だと思う。後はもう、とにかくやってみるしかわからん。

「さてと……これで最後だ、気張って行こう」
「寂しくなる」
「はいはい」

 チームの紹介も終わり、煽りも終わるとでかでかと宇宙にカウントが表示され、数字が減っていく。

『さあさあ、カウントが終われば試合開始です!悔いの無いよう両チームは頑張ってください!』

「此処まで来たら優勝よ」
「ああ、優勝だ」

 そんな事を言っているとカウントが0になり、大きく試合開始の合図が響き渡る。それと同時に柳生が加速、その後ろにぴったりとくっついて武器を構えて索敵をしつつ付いて行く。
 今回の機体組み合わせと武器。機体の方は軽量機、足の方を膝下からソードにしているのだけが特徴。武器周りはかなり変更して、ヒートホークを抜いてハンドガトリング2門、ハンドガン2丁、腰部キャノン2門、お守りフックショットが1個、サブアームは2本装備、近接戦は足のソードのみにした尖った構成。T2Wじゃ思いっきり重量過多。
 
「2:4だから敵の位置は常に見れるようにしないとねー……」
「数が減るまで火力を出せるのはお主に任せるぞ」
「うーい、まかせい」

 






「此処まで来るだけあって強敵だ」
「分かっている!」

 実弾とビームの二重射撃を柳生が刀で弾き飛ばしている後ろでサブアームを使いハンドガトリング、普通にハンドガン2丁抜いて掃射、盾役と後ろで射撃している相手に対してバリバリと撃ちまくりながら後退。
 開幕接敵してすぐに陣形を組んで不意打ちをかまして結構なダメージを与えてのだが、しっかり立て直して反撃の射撃と、近接戦でしっかり距離を取られてからこっちが圧倒的に不利になっている。

 こっちの立ち回りと言うか、立ち位置を見てしっかり連携を取って無理な突撃もしてこないし、幾ら前後上下に振ってもしっかりと追従して向こうもこっちもしっかり前面に捉えた状態での撃ち合いになっている。ついでに言えば下手に柳生が突っ込んで行って殴り合いになると集中砲火を食らいかねない。

「それで、どうするんだ!?」
「今考えてんだよ!」

 また飛んでくる射撃を受けて貰いながらも反撃射撃を繰り出しつつ、デブリ帯を抜けていく。こうなってくると障害物が無くなるからさっきよりも射撃が激化する。って言うか、マジでどうする?1機さえ落とせればまだ勝負は出来そうだけど、1:2を2組作った所で前1後1の組み合わせで近接か射撃しか出来ない単体で戦うのは無理だ。そんな事をあれこれ考えていると撃ち続けていたハンドガトリングとサブアームが一つずつやられるので火力が落ちる。
 
「確かもう少し後方に廃船があったろ、あそこまで誘導して炉に火を付けて爆破に巻き込んで反撃は、どうよ」
「某はもう、お主の作戦に乗るぞ」
「信用されてるわ」

 移動しながらの射撃で、ようやく廃船とデブリが転がっている宙域に抜け、さっきと同じような射撃をしながら柳生に合図と言うか、バック走で向かう方向を指示し、良い感じの距離を保ちながら廃船の近くまで誘導。

「勝負を掛けるぞ」
「散るなら華々しく、か」
「縁起の悪い事言うんじゃー無い」

 射撃を受けつつ、廃船の上部に着地すると共に、真っすぐ後ろに下がりながらサブアームに付けたハンドガトリングで廃船を撃ち抜きながら片足のソードも突き刺して装甲を引き裂いて行く。が、爆発はするものの、そこまで規模は大きくなく不発。

「クソ、外れ引いた!」
「原型が残っているのはあと2隻だぞ!」
「分かってるって!」

 小規模の爆発から出てくる多少ダメージを受けた相手チームを見ながら次の手を考える。考えると言っても残っている廃船にも同じように攻撃を加えて爆発を促して、隙を窺う。
 そうして相変わらずの射撃戦を繰り広げながら2隻目も同じようにダメージを与え、上手い事相手チームが近くを通った時に大きく爆発。さっきの小規模爆発で油断していたっぽい。

 爆発に巻き込まれ視界が塞がったのを好機と見て後退から一気に転身。レーダーと最終位置にいたのに目がけて柳生が突っ込むので、それに合わせて射撃をしながらすれ違いでの攻撃を狙う。爆炎の中、金属音を響かせて一気にすれ違うと、すぐに振り向いて私だけ後方射撃で追撃防止をしながら体勢を立て直す。

「手応えは?」
「腕1本だけだ!」

 収まり始めた爆炎からまた射撃が飛んでくるので柳生が盾に、まだこっちの姿を正確に捉えている訳でもないのはお互い様なので、腰部キャノンを構えて発射。真っすぐ飛ぶ高火力兵器って素敵。ともかく当たったらしく炸裂音が響くので距離を取りながら更に連射し追撃していく。が、それにしたって手応えがなさすぎる。しかもしっかりこっちのマズルフラッシュを見て反撃射撃をしてくるし、このゲームで一番の強敵じゃねえか。

「しかもその腕1本は中衛機だからそこまで戦力差が出ないって言うね」
「頑張ったのだがな」
「まー、2機くらいは持っていきたいわな」

 あの爆炎の最中、しっかり前2枚にして防御体勢を取って不意打ちに対処していたのを考えると、腕1本持って行けただけでも中々に良かったが……此処までくさいわ。

「まだ勝てると思う?」
「諦めてはおらんぞ」

 後退しながらの射撃し合い、距離を図り、宇宙空間を飛び回り続ける。
 何だかんだで盾役やってる柳生もギリギリと言うか、うずうずはしている感じもある。こうなったら好き勝手やって華々しく散ってやるか。

「どうにか前2機を1人で仕留めれない?」
「無茶を言う」
「代わりに後2機を私がやるから」
「つられてくれるといいが……それじゃダメだな」
「代案は?」
「うむ、作戦はだな……」
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

処理中です...