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17章

444話 本領発揮

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 さて、此処までは前座であって本番はこれからって事になる。
 今まで数人吹っ飛ばしたり倒したりしてきたが、それはあくまでも溺れていたり、不慣れだった連中を相手いしていただけであって、まだまだ人は残っている。何だったら、まだこれからと言った感じに戦い合っているので、今までは練習と言うか順応できるかどうかの篩に掛けられただけ。
 地上じゃ確実に勝てないだろう相手でも宇宙じゃ並以下の動きに早変わり、逆に地上じゃそこまでの奴が宇宙じゃ想像以上に動いたりするから勝ち目がまだあるってのは良い所。

 何だかんだで結構動き回っている柳生もようやくと言うか、暫く同じ奴といちゃいちゃと戯れていたおかげもあって、溺れないくらいには動けるようにはなっていたが、所々危なっかしい所があるので目を離せない。他のプレイヤーも中々に良い動き……って私が言うのもあれなんだけど、順応するのは私の方が速かったからな。

『ようやくコツを掴めてきたが、某は地上の方が良い』
『私はソラにいる方がいいな』

 一機倒して爆発が起こっているのを背景に柳生がブレードを振るっている様を上下……ではなく、横になっている状態でちらみしつつも、サイドブーストでそこそこの速度で回転して周囲索敵。一応コックピット、全天周モニターにはなっているんだけど、こうやって機体を動かして索敵しちゃうのは癖だわ。

『チーム全員を倒せたら脱落だけど、上位4チームって事は最高で21人倒さないといけないのはキツイなあ』
『2機は倒しているからあと19機か』
『他の連中もバチバチにやりあっているし、私らで全部倒す必要はないんだろうけどね』

 そういう会話をしながら手頃なデブリにフックショットを引っ掛け、それを足場にするように揃ってそこで待機。これが通常のバトロワ物のゲームだったら、アイテム収集して装備なり回復アイテムを揃えていって、適度に戦って……って事を繰り返せばいいだけだが、回復手段が無いからダメージを負ったら負ったで後々が不利になる。しっかり擬装用として、機体全部黒色にしているのも余計な被弾をしないためだしね。派手な色にしている奴がたまーにいるけど、あれは実力があるからなのか、縛りプレイなのか、はたまた酔狂な奴なのか、よくわからん。

『某としてはもっと戦って感覚を掴みたい所だが』
『ん-、そうねー……孤立している奴見つけて叩くか?』
『某が巻き込んだのにすまんな』
『なーに、巻き込まれるのには慣れてるさ』

 フックショットを外し、デブリを足場に軽くジャンプするとふわりと機体が浮き、デブリと同じようにくるくると回り始めるので索敵をし始める。

『向こうの方で戦闘音は聞こえるなあ』
『では、某が前で』
『ういよ』

 戦闘音が響く方に指を向ければ、分かったと返事をしてくるのでそっちに向かい発進。




 特に道中何事もなくと言うか、機体に乗っているおかげもあって移動距離が長くても移動速度が高いのであっという間に接近出来る。今まではデブリ帯にいたが、目の前にはどこかで見たことあるような筒型のコロニーが。代わりにプレイヤーの攻撃で吹っ飛んでいる個所があったり、内部で所々爆発が起きたりと、中々にカオスな状況。

『あの中に突っ込んでいくってのは無しだぞ』
『ダメなのか!』
『こういうのはね、頭を使って戦うのが良いのよ』

 デコイ代わりになるようなデブリも無いし、コロニーの外壁くらい転がってないかと思ったがそれも無いので、射線は空きまくりだがじっとしてりゃ特に攻撃される事はない……と、思う。

『さーて、どう戦おうか』
『突っ込んで行って戦うってのはダメなのだろう?』
『バトロワの基本は漁夫狙いだから、一段落して油断してる所を叩きたいのよ』

 この手の戦闘をしているときはいつも言ってるけど、なるべく余計な戦闘はしないで自分に有利な状況で戦いたい。疲弊している所を叩いてさくっと離脱して、また漁夫を狙いたい。って、言うのは簡単なんだろうけど、それを意識して出来る奴ってあんまりいないのよね。

『ここから見えるだけで6機ほどやりあっているようだが……』
『チーム最大4人だから……4:2、3:3、2:2:2……結構組み合わせはあるけど、戦ってる感じを見ないとねー』

 デフォ機能でスコープが付いているのは良いゲーム。コックピット内のバイザーを引き出して戦況を見ながら、どうするかを組み立てていく。やるなら強襲して、一気に横やりを入れて1、2機落としてみるのがいいかな。柳生の奴もそういう一撃を与えて離脱する方が良い感じに動けるような気がするし。

『コロニーの外で戦っているし、一気に突っ込んでコロニー内に退避、付いてきた奴がいたら反撃ってのは?』
『上手くできるか不安だが……』
『姿勢維持しながら戦うよりマシでしょ』

 遠くでバチバチとやり合っている相手の機体を見据えてからAR、ビームシールドを構えて姿勢を真っすぐにコロニーへと向ける。上下左右と言うか、位置関係としてはコロニーでやり合っている連中の上を取った形になるのか。そうして私が突撃の構えを取るのを見て、柳生の奴もブレードを肩に置いた状態で構えて準備完了。

『やはり某が前で?』
『私が先導して、怯ませるから足の止まった奴を追撃して』
『あい、わかった』
『抜かるなよ』

 勿論と言う感じに返事をしてくるので、いつものようににーっと笑ってからブーストに点火。
 その斜め後ろで柳生もしっかり追従してくるので、戦闘を行っているプレイヤー群に向けてぐんぐんと加速。


 どういうチーム割での戦いかは知らないが、ビーム兵器が中心としてあまり近接戦闘をしている雰囲気はない。上から見ると円形のように撃ち合いをしているのを確認してから左側の2機に目がけて上空、上空って言い方はおかしいな、上方からグレネードランチャーで一発、急な爆発が起きて一瞬動きが止まった1機に狙いを付けてARを掃射。そしてこっちに向く前に数発当たり、姿勢制御がぐらつく。

『見えてるか』
『ああ、任せろ』

 そのまま上から下へと高速機動のまま、私が先に突っ切り、後続にいた柳生がよろけた奴へと一閃。戦闘中、そしてなおかつ不意打ちと言うのもあって綺麗に機体を切断していくのが見える。
 
『このままコロニー内部に行く、付いてこい』
『お手柔らかに』

 あまり無茶な機動をすると慣れていない柳生が付いてこれない可能性もあるのでなるべく直進。そして散々ここで戦闘していましたと言う様に、ぽっかりとコロニーの外壁が開いている所へ目がけて飛んでいく。と、後ろから2機ほど付いてくるので上手い事釣れたようだ。

『楽しくなってきたなあ』
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