上 下
462 / 622
16章

432話 燃え尽き症候群

しおりを挟む
「左3、中央2、右4、左旋回からグレネード1」

 敢えて口にしながらやる事を言い、騎乗ユニットでもある4脚戦車の上部に設置したガトリング2門を銃操作で掃射しつつ、自分で言った通り左旋回をして薙ぎ払い、左の敵を撃ち抜いたのを見てから旋回中に用意していたグレネードを背面投げ。掃射で足止めした所にグレネードが落ちるとその直後に爆発が起こって吹っ飛ばす。
 本来ならポッドで操縦するのだが本体上部で身を晒した状態で、旋回中にぐるりと周りの状態をチェックして、右翼が多少前に出てきているので、其方に向かいつつ湧き地点の方を正面にして横にスライド移動。接近してくるのがいたらそのまま2門掃射でひき肉にし突出してきた右翼に辿り着くなり、アデレラで迎撃。
 
「左は……塹壕に引っかかっているとして、移動中に撃ち切り装填」

 暫く右翼に出てきたのを吹き飛ばし、ある程度落ち着いたら一気に左翼側に機体を滑らせる。遠距離攻撃と手数さえあれば特殊な攻撃してくる虫共以外は問題なく倒せる。スピードの速い狼も機体に乗っていれば振り切れるし、すぐさま倒せるので問題なし、今の所ヤバいのはキメラくらいか。森の中であれこれやってた時は機動力が問題で、どうしても避けきれない事が多かったが、今はそんな事もなく、機体の足回りでどうにでもなる。特殊と遠距離攻撃、結構な耐久力があるキメラ、そんなに数がいないってのが救いか。
 そうして右翼を押し込んだ後に、スモーク3本で足止め、ついでに連結グレネードで穴を開けて追加の塹壕を作った後にまた反転。中央は左右の往復の途中にちょっかいを掛け、あまりにも前に出そうなら3種グレネードで考える。
 やっていることは自分の機体でカバーできる範囲の横一直線の防衛線を維持し続ける、たったこれだけだ。機体操縦をしつつ、こいつの速度でカバーできる範囲を見極め、左右中央の突出部分を見てどこから攻めるかの判断、使うグレネードの種類、攻撃手段と掃討する動き。ああ、考える事が多いったらない。少しでも気を抜けば自分の戦線が崩壊して稼ぎも悪くなるしで良いことが無い。
 
「そろそろ、リロードか」

 1人でいるからリロード隙を考えなきゃいけないってのも大変だよな。左翼に移動をしている間に中央に射撃して牽制しているが、同時発射しないと火力と弾幕が足りないのは盲点だった。
 左翼への移動中に中央への攻撃を続けている半ばにからからと2門共とりあえず機体上部でしゃがみ、ガトのマガジンを移動しながら取り換える。それにしてもガトリングのボックスマガジン、もうちょっとこれも改良するべきだな。ボックス外して新しいのに変えてから、連なってる弾を入れて回してやらないと発射されないって、バイパーの奴にもうちょっと簡易的で使いやすい構造にしろって文句いってやらねえよ。

「ああ、くそ、落ち着け」

 ガチャガチャと音を立ててガトリングのリロードを済ませて顔を上げると、モンスター群の方に寄っていたので、慌てて距離を取る所にゴーレム、キメラのダブルビーム攻撃。この4脚戦車、二次元起動は強いけど三次元にまでは手が届かない。
 どうせ避けられないし、ぐるりと機体を回転、搭乗ポッドで敢えて受けると爆発が起きて体勢がぐらつくのを制御し回転したまま勢いを殺して撃たれた方に向き直り、ガトで掃射して反撃をしながら左翼にスライド移動をしつつスモーク2本投げて足止め。幸いにもポッドの中で操縦しなくても問題ないので、被害がこれだけってのは集中砲火を貰った割にはいい。

「リロードはもうちょっと考えないと駄目だっての」

 機体を制御し、ポッド損傷の弊害が無いかを確認したらさっきの予定通り左翼側に。
 ほぼ湧き地点でもあるダンジョンの入口少し手前くらいでやっているので一定数が溜まれば詰まって出てこなくなるの最大限利用している戦法なので、ちょっとでも遅れると湧きとこっちの処理速度が噛み合わなくなる、そもそもダメージを受けちゃいけなかった。

「ちぃ……!」

 速度に影響は今の所ないけど、安定性が悪くなったか?半壊しているポッドのせいでちょっとふらつくようになった気がする。が、それくらいならどうにでもなる。多少尻が振られるようになったけど、制御できない程じゃない。そうして左翼側に辿り着くまでの間にふらつく機体を制御し、事前にグレネードで開けておいた塹壕にモンスターが溜まっているのを見つけ、相変わらずのガトリングスライド撃ちで奥にいるのに攻撃を与え、溜まっている所には連結グレネードを放り込んで爆破。
 連続した爆発音が響き、ポリゴンを散らしているのを見ている間に塹壕を飛び越え、爆炎の中を突っ切ってくる狼。相変わらずの飛びかかり攻撃を機体を回転、半壊したポッドを叩きつけ横に吹っ飛ばした後、アデレラで追撃。回転しながらの勢いでぐるぐる回りながら一旦距離を離し、正面を向いたらまた掃射。
 
「悪くない悪くない」

 まだ装弾が残っているガトを確認し、MPポーションをがぶ飲みして銃操作で常に消費しているMPを補充し、右翼側にまた移動。戦線の反復横跳びってきつすぎるというか、頭を使いすぎている。
 でもあれこれマルチタスクするのはそこまできつくない。なんだったらリアルで運転している時と変わらないくらいのタスク量だ。ここにパーティやクラン、全体の戦場把握まで来たら確実に手はまわってない。
 あれこれ考えている間にまた中央に、スモークが結構長い事効果が続くおかげ焚かれてる所は進行が遅くなってはいるが、横から抜けてくるし、スモークから突破してくる奴もいる。視認さえすればこっちに攻撃が飛んでくるのもあるで、油断は出来ない。それに左翼中央右翼と言ってはいるが、長い戦線を私が暫定的に区切っているだけであって別れている訳でもない。塹壕を掘って、グレネードを駆使してまとめてどうにか倒している状態でかなりギリギリだったりする。
 
「きつい、きついったらありゃしない」

 銃撃、爆撃、ビーム発射音、機体がきしむ音。
 色々な音を響く中、ギザ歯を見せた高笑いをしてしまう。

「あー、やべ、たのしい」

 1発食らえば多分って言うか確実にダメだろうな。
 機体がやられてもダメ、弾やアイテムが切れてもダメ、処理に手間取ったら勿論ダメ。この戦闘が始まってずっとギリギリの状態でやってきている、この状況が楽しすぎる。

「ああ、楽しい!」

 勿論戦う事よりも勝つ事の方が私としては一番ではあるのだが、別に戦う事が嫌いと言う訳じゃない。こうしてひりついて、手に汗握る状況。自分がミスったら全て台無しになる、かといってミスらなければ全てが上手くいく、この状況。ギリギリすぎて、面白過ぎる。

「吹っ飛べ、クソ共が!」

 掃射している間に接近していたオーガに対し、忍者刀を抜いて、機体ごと突撃。相手の顔面に思い切り突き刺し、そのまま押し込みながらガトリングも掃射して視界確保。びゅっと刀を振るって仕舞えばアデレラ、ガトリング、グレネードでひたすらにモンスターを狩り尽くす。
 
「まだまだ楽しもうじゃないか、なあ」

 前方、モンスターが溜まった所にグレネードを放り込み爆破。
 爆炎の中突っ切ると共に葉巻に火を付けて咥える。

 私はまだまだいけるぞ。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

処理中です...