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16章

430話 宣戦布告

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 残った2人と合流……する前にゴーレムをぷちぷち片付けながらボスエリアの方に向かう。
 2周目以降の奴はしっかりと雑魚にトドメを指していて、そうでもないのは動きが止まったらさっさと奥に進んでいる。イベント期間が2日ってのもよくよく考えれば短期決戦過ぎるわ。

「っと、いたみたいだ」

 そんな事を考えつつ、暫くゴーレムを片付けていると、ようやく残り2人とも合流。あいんつがやけにももえの奴に懐いているというか、仲良くなっているのだが、何があったんだろうか。おおかた配信してるってのもあって自分の銃が宣伝されたってくらいか。

「投げて良し、撃って良し、威力は御墨付だよー、みんな買ったげて」

 ほら、言った通りだ。こうなると私があいんつを誘った意味が無くなってしまう。それにしても自分が配信者ってのをよーくわかっているってのは良い事なのか?何て事を思ったが、好き勝手に楽しむという事に関しては私と変わらないか。

「勝ったら宣伝と違って、配信してりゃ宣伝なら後者の方が良いか」
「でもアカさんの知り合いだから付いてこなかったら会えてないし?」
「売れてないのが不思議なくらいに良い出来だけど、ボス的には?」
「いまいちなんだって」

 2人揃って「えー」って感じの反応をしてくるので少しため息を吐いてから、ゴーレム潰しを再開。この辺に関してはもうやってる事なので特に言う事も無いし、さっさとボスの場所に辿り着いてボスの出現待ち。少しばかりの空き時間の間に葉巻を咥えて……ももえが火を付けてくる。とりあえずすぱすぱと紫煙を辺りに燻らせつつ休憩。

「ねえ、ボス、勝てそう?」
「……まだ見込みはあるかな、結構時間空けた割に上にいたし……ここと次、最後の襲撃でひたすら得点稼ぎかなあ」
「それだけでいけるん?」
「どうかな……まー、今の所半々かな」

 実際のところは6:4で負けそうだけど。
 あんまり効率よく進んでいる訳ではないし、9時間の点差をひっくり返せるかって言われると……まあ難しい。一応健康的な生活のために深夜~明け方まではイベントマップから弾かれてたらしいけど、それでも点差はあるのは変わりない。ボス戦である程度詰めて、襲撃で稼いで勝ち……ってのがルートとしては正攻法だな。

「ゴーレムとキメラはさくっと片付けたいけど、野良じゃ難しいし、なんともだなあ」

 紫煙交じりのため息を吐きだしていると、ゴーレムが集まり始めるのでボス戦開始の合図が見て取れる。うーん、これも種が割れると面白くない相手だなあ。いや、どのゲームでも2周以上やってりゃ大体どういう弱点か耐性は何かって覚えてるんだけどさ。
 とりあえず前と同じようにタワーシールドをがちゃがちゃと設置し、シールド裏に装填済みのあいんつ銃を並べて準備完了。ゴーレム相手にはガトリングだとちょっと面倒だから今回は出番なし。

「おいおい、アカ、あのアホと一緒になんでいるんだよ」

 もう少し残っていた葉巻を咥えていた所、シャールの奴が相変わらずの喧嘩腰でこっちに合流。合流したのって言ってなかったっけ?
 
「でもレイドボスやる前に知り合いがいるといいですね!」
「確かにアカメさんを侮辱した人ですね」
「……一緒にいるなら認められてる?」

 サンダース、アオメ、ベギーも一緒か。って言うかこいつらもボス周回してたんだな。

「まあ成り行きではあるんだけど……色々あったんだよ」

 とりあえず成り行きを説明してあーだこーだ言っている間にボスゴーレムが出てくるので、いつものように指示を飛ばして速攻を掛ける。





 で、ボスゴーレムはあっと言う間に、ついでに言えばキメラも横一直線で9人がかりでローラー作戦をしたら簡単に見つける事が出来た上に2体片付けれたので、もう1周を考えたのだが、移動やボスを討伐する間にそろそろ襲撃の時間になってしまっているので、全員で拠点に戻ってどうするかを話し合い。
 
「とりあえずこれからは別行動か……イベントも佳境だし、全員いいポジションにいるから誰が勝っても恨みっこ無しだな」

 戻って来て順位を見たらとりあえず上位100位くらいまでは食い込めたので、後は襲撃でのモンスター討伐数次第。地味に上位にマイカとバイオレットの名前があったので、結構やばい気もする。それにしてもこのイベントで知り合いが増えすぎてる。私の許容範囲がそろそろ溢れそうだ。

「……なあ、1個聞くんだけど、ガンナーで一番強いのは誰だと思う?」

 全員がこれからどうするか、補給はどう、フレンドを登録しようとあれこれやっていたところにぽつりと言ってみると、散々悪態を言っていたアルバスも含めて私に指を向ける。その指を一旦下げさせてから葉巻を咥え、火を付け……られるのも止めさせてから大きく吸い、勢いよく紫煙を吐きだして、いつも以上に強く全員を睨みつけてから払う動作をする。

「確かにまあそう言われて悪い気はしないがな、お前ら根本的に間違ってるぞ」

 葉巻を摘まむように持ち、1人ずつに先を向けてぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。

「今までガンナーの為に色々なアイテムやら武器、ファンタジーじゃ似つかわしくない物を作ってきたけど、それは自分の為だけじゃないってのを分かってるよな?」

 色々と情報を流したけど、そもそも流さなくても良かった話でもある。上から下まで何にも教えずに1人で抱え込まなかったらこんなにもガンナーが増える事も無かったし、ゲーム内で認められるって事もなかったはずだ。今じゃ遠距離職としてパーティの選択肢にも上がってるらしいしな。
 だからこそ、全員がそれぞれが確かにと言う風に頷いたり、ちょっと考えるような仕草をし始める。

「ある意味で、この情報を流してたのは私が自分で難易度を上げるためだったと思うわ」

 葉巻の灰を落とし改めて吸い、吐き出してからもう一度全員を睨みつける。

「良いか、一番強いって言われたら真っ先に自分の事を上げろ。その上で私は対等な立場でお前らに1つ言う事がある」

 少しだけ距離を取り、葉巻を落として火を消し。

「私はこれから自分の持てるものを全部使ってトップを狙う、相手は誰であれ、そしてお前らには絶対に負けん」

 ビシっとスーツの襟を正すと共に真っすぐに元仲間を見つめてから自分の砦に向かう。

「……確かにそうですね、自分も負けませんから!」
「ああー?当たり前の事を言ってんじゃねえよ!元からこっちは勝つ気だっての!」

 私の後ろ姿にそれぞれ決意表明の様に言葉を投げかけてくる。
 
「パチモンと言われるのもそろそろ終わりにしたいですし」
「ライバル認定は普通に嬉しいね」

 ああ、そうだ、私が上になる為にはでかい壁があってこそなんだ。

「ボス超えしたら名前で呼んじゃおーっと」
「……こっちにだってプライドがあるさ」
「自分の銃が売れれば良いんだけど、巻き込まれてね?」

 1人だけちょっと方向性が違うけど、やる気が出るのは良し。

「……それでも勝つのは、私だ」

 ここから最後まで、誰が本物か存分にやろうじゃないか。
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