上 下
457 / 623
16章

427話 狙いは1個

しおりを挟む
 例のアホ、名前がアルバスだった。
 やっぱりアホやんけ、ちょっと足したらアルバトロスでアホウドリ……うん、アホで決定。まあかなり無理やりこじつけているのはあるし、未だに許してない私の器の小ささもあるわ。

 とりあえず全員のやれる事と自己紹介を改めて済ませて今後の動き方を考える。
 ポンコツがポンコツたる所以を発揮してくれたおかげでキメラが複数いるというのが、ようやく倒した後に発覚したわけで。ここからはキメラ討伐にシフト……することも無く、あちこち探し回った割に1匹も見つける事が出来なかった。

「肩透かしだ」
「まさかとは思うけどもうお払い箱?」

 ももえの奴が小動物の様にぷるぷるし始めるのだが、それはそれでほったらかしにしておいて……これからどうするか。一応討伐自体は出来ているが証を手に入れる事は出来ず、次エリアの祭壇も今の所見つかっていない。あっちこっち行っても雑魚ばかりでキメラは見つからず。流石に時間含めて掛かり過ぎだろと思っていた時に、アホが声を上げて切り上げようと提案する。

「こんなに歩き回ってもいないなら無駄な行動じゃないか?」
「知ってる、だからどうするか考えてるんだ」

 一旦止まって全員で休憩を入れている間にアデレラをくるくる回して考える。頭を使わないでバカスカ撃ちまくれば楽なんだろうけど、それをやってひいひい言ってたのはそこのポンコツ。計画性が無さすぎるんだよ。

「……一旦解散ってどうよ」
「此処まで来て解散なん?」
「どうせここでどん詰まりであれこれやってもしゃーないだろ、こういう時はさっさとログアウトして飯食って寝るに限る」

 もう日曜の深夜1時だし、イベント開始からずっとマグロの様に走り抜けてきたが、そろそろ精神的にきつい。気が付いたら朝になってるなんて事もあったけど、今じゃアラサーだから明日って言うか今日の分を走り切る体力を戻しておきたいって切なる願い。

「パーティはどうするかな」
「私はボスと一緒がいいなぁ」
「アカさんが付いてこいって言うから維持だねー」

 最後はアホだが……一番抜けそうだ。って言うかキメラ倒す時に無理やり引き込んだから別に抜けても問題ないと言えば無いのだが。

「好きにしていいが……二度と人の事を悪く言うなよ」

 いつまでもぐちぐち言われた事を引きずった所で何か良くなるわけじゃない。ちょっとでもこいつが悪口を言った相手がどういうやつか分かればそれでいい。
 
「……いや、付いて行く」
「なら元パーティにはちゃんと説明しとけ、余計ないざこざは御免だからな」

 一応釘を刺しておいてから帰還用のアイテムを取り出す。
 戻ってくるのが結構大変だから最後に何かやりたい事や残しておいた事が無いか確認も怠らない。まあ、聞いた所で3人共特にはないのでまとめて全員拠点に戻る。




「さて、と……銃弾の補給して、イベントマップ飛ぶ前にグレネードの補給をして……」
「ねー、ボス、順位見よ順位」
「じゃあ、また後でな」

 あいんつ、アルバスとは一旦ここで分かれてももえと一緒に順位を出してくれるNPCの所へ。
 あれからあんまりやってないしそこまで変わらんと思うのだが、寝る前にチェックするにはいいか。

「えーっとボスと私の名前はっと」

 あれよあれよと確認しているももえを見ながら、ももえから貰った煙草に火を付けて一服。そういえば煙草の自作しようと思ってちょっとだけ農場弄ったんだっけか……結局頓挫してほったらかしだし、そろそろ葉巻、煙草の量産もするかな。結局そのままほったらかしにしそうだけど。

「おおー……ボス!ボース!」
「なんじゃい」
「1位取れてるよ!」

 何でこう、私が見る前に言ってしまうのか。ネタバレされてもそんなにイラついたりしないので良いと言えばいいんだが。で、言われた通りに順位表の所で確認したら確かに1位にはなっている。が、あくまでもガンナーとしてなので総合順位で言えば上の方ではあるが10位以内には入ってない。

「……ボス2回分か」
「総合順位はまだっぽいね」
「お前は?」
「えーっと29位かな」

 こうなると、ボス倒すのがやっぱりキーポイントっぽい。わざわざ2回倒す必要もないってのを考えると結構盲点なのか?総合上位とどれくらい差があるのか分からないが、そういうのを考えればボス巡りなんてやってそうだ。ただ、もう1つ懸念点としては、現状で襲撃が収まっているから、また襲撃された場合は順位付けがころころ変わるはずだ。襲撃モンスターとダンジョンモンスターの得点が一緒かどうかは分からないが、数が多いのは前者なので捲られる可能性はまだある。

「終わるまで油断できんなあ」
「そんな事あるの?」
「余裕のあった時なんてないさ……そういやうちの連中元気か?」
「んー、元気だよー?」

 久々にあれこれ聞いてみると、私が作ったヴェンガンズカンパニーは事業拡大、店舗増設、人員微増。まずクランハウス自体が地下と地上1F増設、何だったら横にも1ハウス分増やしたらしい。で、1~2Fは完全に店舗と菖蒲の作業場に。地下に関しても区画整備できっちりと作業場化。
 そして各々は相変わらず。十兵衛は更に作れる酒が増えて酒造クランと行ったり来たりで結構いいポジションになっているらしい。バイパーは注文殺到でガンナー御用達の高級品製造、最近新しい機構を開発してるらしい。マイカ、バイオレットに関してはあっちこっちでつるんで戦闘しまくってるので消息不明……ではないが、クランハウスには殆どいない。して、色々とやっているニーナはあっちこっちで奔走しているらしい。

「私がいた時よりもでかくなったな」
「資金は使ってなんぼ!だって」
「使いたいもの無いかって聞いたら何にも言わなかったくせになあ」

 元クランの現状を聞きつつ、次にログインする時の事も考える。
 グレネードの補充に特殊弾、マガジンの数も揃えておかないといけないし、襲撃用の銃も揃えれるだけ揃えて……。

「ねー、ボス、何処まで行く気なの?」
「んー、そうだなあ……」

 不意に掛けられた声を聞きつつ、ログアウト処理を始めて。

「やっぱりここだな」

 人差し指をびっと立ててそれを見せつける。
 
「それ以外にあるか?」

 にぃっとギザ歯を見せるいつもの笑みをももえの奴に見せつけてからログアウト。
 さあ明日も頑張るか。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...