上 下
456 / 622
16章

426話 先に言っとけっていつも言っただろ

しおりを挟む
「で、ボス、弾持ってない?全部撃っちゃってさ」
「ああ、もう、だからお前はポンコツなんだよ!」

 銃受けでキメラの攻撃をいなしてはいるが1発も撃ってないのを見ると、弾切れか。他のパーティから貰ったりなんだりできるだろうに。

「パーティは」
「組んでたけど、ぜーんぜんダメ、1人で立ち回った方が良いからぬけちった」

 マイカとバイオレットに揉まれてるせいで下手な仲間じゃ付いていけないのか。って言うか私も付いていけないと思う。ガンナーを長くやっているからこそ他のプレイヤーよりも先に進んでいる……様に見えて実の所戦闘力は高くないし、ガチでやったら普通にももえに負けると思うわ。

「パーティに入ってあいつ倒すなら銃弾分けてやる」
「とか言って、入んなくても分けてくれるでしょー」

 ねー?と言った感じにこっちに顔を向けて笑みを浮かべる。こいつも今度締めてやらんとダメか。ただ、まあカットインしてくれたおかげで立ち直れる状況になったのは良い。手早くパーティ申請を送るとすぐに受理、その間にポーションで回復をいれ、あいんつとアホが合流。

「あー、ポンコツピンクちゃんねるの人だ」
「知ってるのか」
「ガンナー界隈じゃ有名なんよ、アカさんどういう関係?」
「元上司」

 あいんつがこっちのカバー、アホがももえのカバーに入っている間に事情説明、さくっと紹介を済ませた後に手早く陣形の整理、HPMPの立て直し、各々の立ち回りを指示してキメラと改めて対峙。それにしても4人で前後を組めるようになると安定性が増す。

「って、先に弾ちょーだい弾!」
「弾込めてやるから後ろにマグ飛ばせ」
「もぉー!そうやってすぐ無茶ぶりするんだから!」
「あいんつ、ももえに弾の込めた銃を、アホはカバーだ、しくじるなよ」

 3人とも返事をするなり言われた通りの行動を始める。私はと言うとももえの少し後ろに回って、マガジンを受け取り、ちゃりちゃりと弾を込める。

「まあ器用にやるもんだ」

 キメラを正面に捉えたまま、マガジン一杯になるまで弾を詰めるのだが、その間前衛をしている百恵の奴はうまいことキメラの爪やら体当たり、ビームを捌いて立ち回っている。なんか思っている以上に強くなってる。何か出来るようになってるのがちょっとムカついたので、軽く声を掛けてからマガジンを強めに投げてやったらそのまま銃で受けてリロード完了。なんともまあ、器用な事を。
 そしてやっぱりと言うか当たり前だけど、がんがん前に出てヘイトを稼ぎながらガンカタで近接戦闘が様になっている。独立したのもあるし、あいつはあいつで動き方を研究していったんだろう。元々センスはあったしな。

「やっぱボスの元で戦うのがストレスフリー」

 気持ちよく格闘と銃撃を織り交ぜてキメラに肉薄していくももえを眺めつつ、避けきれないだろうって攻撃の時にはこっちから攻撃を入れて援護、弾を使い切ったらあいんつが装填済みの銃を投げ渡し、撃ち切ったらすぐにキメラにぶん投げ、アホは普通の援護射撃、何と言うか急造のパーティの割には良い連携が出来ている。

「それにしてもあいんつがももえの事を知っているのは意外だった」
「そう?アカさんの事知ったのもそこからだしねー」

 ああ、なるほど、それは確かに。結構配信しているからその時に知ったのか。表舞台にあまり出てない……とは言い切れない。この間の闘技大会なんてがっつり目立ってた。
 ももえの配信もログイン中は何でもかんでも映しまくってたから私があれこれやってるのも分かってるし、クランハウスの中も丸見えか。

「……お前は知って無さそうだ」
「悪いか?」
「知らない事があるのは当たり前だが、人の事を悪く言うのはないな」

 案外根に持つんだよね、私って。とは言え、悪口を言うだけあって基本は結構しっかいりしている。さっきは普通の援護射撃だけしか出来ていないと言ったが、逆を言えば普通の援護射撃が出来るって事は悪くはない腕はあるって事だ。このまま良い感じなら名前聞いてみても良いな。

「そろそろ決めるぞ」

 その声を聞くと、ももえがキメラの攻撃を滑り込んで避けると共に顎を思い切り蹴り上げる。そういえば昔にもこんな風な立ち回りしたような気がする。
 そして上がった顎と言うか頭に向けてあいんつがさらに銃を投げて追撃。そのまま滑りこんだももえは腹の方にまで回り、げしげしと蹴り上げてそのまま蹴り進める。おお、青天井にする気か。そんな事を考えながらもこっちもこっちでアデレラを2丁抜いて浮いている顎に向けて連射。このゲーム、たまーにあるんだけど格闘ゲームのような浮きが状態が発生するんだよね。

「追撃の手緩めない!」

 隣にいたアホに発破を掛け、向こうが連射している間にアデレラの装填を済ませる。で、こっちが攻撃を始めたらアホが装填する。うむ、よくわかってるな。やっぱり基本は出来るんだよな、こいつ。
 あいんつに関してはある程度好きにさせた方が良いので、隣で銃撃と銃を投げさせている。うーん、やっぱり袖から大量に出るのは客観的に見ると中々に不思議な光景だ。

「ああー、銃ちょうだい、銃!」
「あいんつ、投げてやれ」
「はいよー」

 股潜りを成功して後ろに回ったももえが新しいマガジンを使おうとしたが弾切れ、すぐさまあいんつがくるりと回転して遠心力を付けてハンドガンを投げると、ブーメランのように曲がり、キメラの後ろに回り込んだももえにヒット、やっぱポンコツだわ。

「うーん結構ちゃんと投げたはずなんだけど……」
「キャッチミスしただけでしょう!」
「ポンコツだからな」
 
 くつくつと笑いながらアデレラの予備マガジンを使い切ったのでPウサ銃に切り替えて連射。かちあげからの前後での射撃攻撃に手……いや、足か。それも出ずにヒットストップ食らって呻きながら徐々にダメージが増えていく。

「そろそろ、くたばれ!」

 5度撃ちでの追撃をかますと共にクリップが弾き飛ぶ。
 体勢を崩され、前後で挟みうち、絶え間ない射撃攻撃に耐えられるわけもなくそのままポリゴン状に消失していくのを眺めながら一息。インベントリから煙草……はないんだったな。
 
「やっぱボスはイイね……煙草は?」
「吸い過ぎで切らしてな」
「しょうがないなあ」

 何て事言ったらももえの奴が煙草を取り出して私に手渡してくるので、早速咥えて火を付けて一服。すぱーっと紫煙を燻らせながらその場に座って、銃弾をまとめて取り出して渡す準備。

「それにしても案外手応えの無い奴だったきーがするんけど」
「まー、確かに……案外あっさりだったな」
「キメラ何匹もいるからねー、そのせいじゃない?」

 ぽろっと零したももえの一言で私を含めた3人がぴたりと手を止める。
 確かに中途半端な強さだったけど、これが複数いるってマジか。まさかのエリア全体ボスエリア、レイドボス複数いますってタイプか?

「それはもうちょっと早く言って欲しいわ」

 煙草の先をぴこぴこと唇で器用に揺らしながらどう立ち回るかを考える。
 出来る事ならもう1人やっぱり増やして山狩りするのが良いか……まあ、森なんだけど。

「……とりあえずももえ、このエリアは一緒に来てもらうぞ」

 インベントリから出した銃弾アイテムのデータを目の前に出すtお、それにすぐさま飛びついてくるので、ぱっと上にそれを持ち上げてじっと見つめる。こういうポンコツはしっかりと躾をしてやらんといかん。

「もー、ボスは心配性なんだから……分かってるって」
「どうせ配信してるんだ、それが証拠にもなろうよ」

 その通りで、と言った感じでえへへーっと笑うのを少しばかり眉間に皺を寄せてみるが、元々こんなやつだったな。

「……それじゃあまあ、改めて自己紹介とやれる事、言っとくか」

 アホの名前初めて聞くな。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...