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16章

423話 不意撃ち

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「こっからは初見だ」
「突破した事なかったん」
「さっき相手にしたゴーレムに右半身吹っ飛ばされたからな」

 そう言いながら右腕をぐるりと回す。
 あれからレイドボス扱いのゴーレムをあっさりと倒し、エリア5にまでやってきたのだが、今の所敵の姿は見えず。先行している元パーティの連中に連絡を取ってみたが、音信不通なので戦闘中か何かあったかもしれない。
 
「まあ、先に進もう、一回死に戻ったから結構出遅れてる」
「結構きにしいだね」
「そりゃいい順位だからな」

 此処まであれこれぶっ続けでやってきているので、そろそろ一旦ログアウト……の前に、完全にイベントマップから締め出される時間がある。流石にある程度の時限性と言うか、安全対策としてそういう処置を取ったんだろう。深夜3時くらいから昼前11時くらいまでは完全に弾かれると言っている。

「私としてはがっつり勝ちに行きたいのさ」
「アカさんは野心的だねえ」

 ガチ勢って野心的になるのか?どっちにしろ勝ちを狙っているのは変わらないので早い所合流してどういうエリアかの判断を……。
 
「右から来てるぞ」

 エリア奥へと進んでいる途中、何かしらの気配と言うか音を聞いたので素早くアデレラを抜き撃ち。仮にそれがプレイヤーだとしてもダメージは入らないし、モンスターなら先制攻撃。非常に合理的な攻撃。で、確実に当てた手ごたえはあったのだが、止まる様子はなくこっちに突っ込んでくる影が1つ。
 まだ茂みから全貌が見えないので素早く飛び退くと共に、私とあいんつがいた所に見知った攻撃、オーガによる棍棒攻撃で地面が陥没する。また同じ相手か?

「パターンなくなった?」
「大体こういう場合はだな」

 飛び出してきたオーガの攻撃を避け、2人で揃って射撃。飛び出してきた勢いはあったが、攻撃のおかげで足が止まったので、両サイドから射撃攻撃を与えてやればあっさりと倒せる。そうして倒して一息入れる……前にまた別のモンスターが飛び出してくる。で、次に出てくるのは蜘蛛なのだが、やっぱり混合編成でやってきたか。
 
「大体混成になってきたら、最後のエリアって感じあるな」
「あー、そんな感じある」

 あいんつがいつもの様に蜘蛛に対して自作銃をぶつけて怯ませると、投げて直ぐに抜いていた銃で追撃。ダメージを与えて軽くヒットストップを入れた所で更に私が追撃して撃破。案外弱いというか、手応えが殆どない。今まで出てきたモンスターが、弱体化して出てきたなら、ボスも複数か、キマイラみたいな合わさったのだろうか。
 色々考えている間にモンスターが襲ってくるわけだが、これまで出てきた奴らがぽこぽこ出てきて散発的に戦闘が起こるのが結構面倒だ。なんて思っていたのだが、ちょくちょく今まで出てきていないモンスターもいたりして、軽く苦戦する時がある。ここに来て新しい敵出すのはちょっとめんどくさすぎる。それでも進行するのにがっつりと苦戦する事はないのでひたすらにマップを進んでいく。


 

「……ボスが見えないな」
「雑魚ばっかりだし、他のパーティもいないのはなんだろね」

 何だかんだで雑魚を蹴散らしながら先に進んできてはいるのだが、ボスエリアに辿り着けない。エリア4だけは遺跡だったが、エリア5からはまた森のような場所のせいで歩き回っても同じような場所ばかりでよく分からんくなる。マップを開いても現在地が出ないので、完全に迷いの森状態。ダンジョン扱いだからって変なギミックいれおってからに。

「アカさんアカさん、一個提案なんだけど、敢えて単独で動かない?」
「ばらばらに動いて、ボス探しか……んー、やめたほうがいいな」

 そう返事をしてやれば、明らかに何で?って顔をするので一旦立ち止まったうえで説明を始める。この手のマップや、正解の分からないマップをあれこれと探索するのは良くない気がする。あくまでも気がするだけだけど。
 こういう構成をしているってことは迷わせて分断くらいまで考えているだろうから、こっちからばらけてしまうのは、ダンジョンマップの仕掛けに自分から突っ込んで行っている。って、勝手に思ってるだけで別にそういう意図は無かったりするもんだけど。

「ボスエリアが見つからないし、ばらけてる時にボスに遭遇したらきついだろ?合流できなくなる可能性もあるのも怖いな」
「まー、確かに?」
「ただ、分断されるって可能性はあるから、自作銃1つ渡してくれ、宣伝しとっから」

 優しいなんて事を言われながらライフルを1丁貰い、がちゃがちゃと弄る。性能的にはPウサ銃以下ウサ銃以上の中間くらいなので悪くはない。自分のサインと言うか、目印が銃身に書いてあるところがおしゃれポイント。

「これ使って戦うからな」
「うっわ、プレッシャー」

 そう言ってけらけらと軽い感じに笑いながら一緒に先に進んでいく。
 多分だけどパーティ会話も無効化されてるってのもある。だからここにいる前パーティの連中と連絡が取れない、そう考えれば結構納得はする。それも含めて別れて行動ってなると一回戻った方が良いレベルだと思う。
 
「もっと良い銃作れるだろうに、何か理由があるのか?」
「ん-、素材や技術の限界、現状じゃこれ以上作るのが難しいって感じ」

 素材は良いとして技術は難しい所か。だからさっき話してたビーム兵器の話も出てくるって事か。

「それと、アカさん、左から敵きてるよん」

 ちょっと考え事をしていたところでカットインするように雑魚モンスターの攻撃が飛んでくる……訳ではなく、明らかに殺意ましましのビームが掠めて、後ろにあった木を吹っ飛ばす。
 何事かと思い、すぐさま貰った銃を構えながら、攻撃が飛んできた方を見つめると、明らかに「俺はここのボスだ」って感じの図体のでかい四足獣がぬるっと出てくる。ベースは狼っぽいから、エリア1の奴か。攻撃方法がエリア4のゴーレムの攻撃だったから特殊攻撃とパワーは2、3の奴から引っ張ってきたか?

「そういうのはもっと早く言え!」
「ごめんってー」

 って言うかボスエリアにいつ侵入した?
 こうやってぐるぐると森の中を歩き回っていたから、知らない間に足を踏み入れてボスに先殴りされたのか?いや、それだったら他のパーティが戦っていたら侵入不可ってのも、レイドボスならそれも別か?他のパーティが見えないってのもそこに……。

「アカさん、危ないって!」

 戦闘中にもあれこれと考える私の悪い癖が出ているわ。あー、こういう時に頭空っぽにして攻撃できるのが羨ましい。とにかく、あいんつの呼び声で咄嗟に攻撃が飛んできた方を正面にしてまた横っ飛びで回避し、反撃射撃。が、素早く避けられて飛びかかり攻撃の爪をガンシールドで受け、一気に後ろに吹っ飛ばされる。
 
「いったぁ……!強いわ、こいつ」

 咄嗟に受けたとは言え、ガンシールドに結構ひびが入っているし、HPは3分の1くらい食らってるから、まともに受けてたら死んでるな。

「アカさん、平気なん?」
「今の所はな」

 軽口叩けるくらいだからまだいけるさ。
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