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16章

398話 Notパーティ

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 3回目の襲撃にもなれば、全員が手馴れているし特に苦戦らしい苦戦もせず虫のグロさで悲鳴を上げるのはいたが砦に関しては特に問題なし。体液や血で汚れたりする事は無いから文字通りクリーンな戦争だな。地形はぼっこぼこだし、滅茶苦茶穴開いていたりするから地面への環境は破壊しているが。
 ただ疲弊していると言えば疲弊している状態ではある、やっぱりあれだけバカスカと撃ちまくっている上に、手を抜いたら一気に襲われるってのを考えれば疲れないわけがない。連戦でなおかつ長期戦になればそりゃ疲弊するわ。
 とりあえず補給に関してはさっき教えたプレイヤーがさらに教えてくれればいいんだが、こういうのってしっかり伝わらない場合が多いから、良くて4分の1くらいの奴に伝わって広がれば全員に浸透するか。そもそもこれ以上は私の手を離れている事だから気にしても仕方がないと言えば仕方がない……いや、ダメだ、ここで手を抜いたら総合1位は取れん。
 
「情報クランの奴と会って、どういう状況になっているか確認もしておきたいな」

 どうせがっつり補給してダンジョンに引きこもるのは確定しているわけだが、探索中に砦壊滅、拠点陥落なんて起きていたら目も当てられん、こうなってくると何の為にダンジョンに行ってたんだって話になる。ダンジョンもクリアして、防衛線も維持して、自分の戦績を上げる、欲張りにも程がある。

「どっちにしろ、一旦拠点に行って補充か……流石に持ち込みアイテムや特殊弾は補充できんだろうし、やっぱ序盤で切るカードじゃなかった」

 後悔先に立たず。死に戻りしても良かったって考えると、ちょっと焦り過ぎたな、反省。反省終わり。
 とにかく今は拠点に向かって補給をしよう。
 



「って、機体吹っ飛んだの忘れてたわ」

 煙草を咥えて吹かしつつ、えっほえっほと走る。
 こんな事ならもうちょっと大事に乗ってやれば良かった、幾ら無限に使えるからって流石に乗り捨てして身代わりにするくらいならちゃんと回収して普通のクールタイムで再召喚出来るように意識しないと駄目だな。
 こういう機会だし自決して本当に拠点に飛ばされるか試そうと思ったけど、ダンジョンまで行くのと拠点戻るの大体トントンだし、なんだったらダンジョン潜ったらギリギリまで戦闘したい。こう冷静に考えていくと、後先考えずに色々やりすぎ。

「計画性がねえなあ」

 今まであれこれとやってきたけど、イベントになったら大体思い通りに行かないから毎回アドリブで動いている気がする。別に悪い事じゃないのだが、そろそろ2か月近くプレイしているんだからもうちょっとしっかり動くべきだわ。
 
「あー、疲れる、めっちゃ疲れるー」

 何て事を言っていれば問題なく拠点に到達。さっさと補給と言うか銃弾の配っているNPCの所に向かう訳だが……まあ人がいるわ。いや、良い事なんだが予想以上に人がいる。補給所が1個だけの弊害がこれか、他の職だとこういう事はないだろうからガンナーだけの問題っぽい。
 とは言え、文句ばっかり言っても仕方がないので、多少なりと時間はかかったが銃弾の補給自体は完了。ボックスマガジンで使用した200発、その他諸々細かく使っていた銃弾を100発分。これでも不安になるからさらに100発追加して計400発。イベント中しか使えない特殊弾なので価格自体はかなり安く提供されていた。こんな事なら無料で寄越せ。

「あとは露店を出してパーティ募集っと」

 どこにでも出して良いって今思えばかなり便利だよな。
 さくっと露店を立てて、一応の商品として持ってきていた3種グレネードを各5本ずつ並べておく。本数は少ないし1本5万でも十分だろ、メインはパーティ募集の方だ。文言としては『ダンジョンアタック要員、数人募集、集まり次第開始、要連絡』と、こんな感じで書いておけばそのうち連絡が来る……来るか?ちんちくりんとバトルジャンキーが釣れたのも結構偶然だし何とも言えん。

「お、メンバー募集ですね!」
「根性ある奴が来てくれるといいんだけどねぇ」
「大会優勝者が募集してるんですから大丈夫ですよ!」

 やっぱ情報通だなあ、一応鬱陶しそうだから変装していたんだけど、それを見破ってくる……って考えたけど、宇宙猫Tのガンナーの時点でかなり絞られるのか。

「次の襲撃前にはダンジョン行きたいけど、無理ならソロねえ」

 煙草を咥えて火を付けようとすると、情報屋の奴が代わりに付けてにこーっと笑う。
 ああ、こいつあれだ、しっかり私の事を教えてもらっているわ。

「それなら自分はどうですか!これでも情報クランのガンナー筆頭ですよ!」

 ぱちりと指を鳴らして生活火魔法を消すと胸を張って得意げにする。やっぱりガンナーが火を付けるスキルを覚えるのはマストだな。とりあえず大きめに煙草を吸って、紫煙を吐いてから丁寧にそれを断る。

「ええ、なんでですか!?」
「全体の状況を見れる奴がいなくなるのはヤバいのよ、申し出はありがたいけど」
「情報屋だからですか!」
「そりゃそうよ、全体の状況を見れる奴って重要なんだし」
「うちのクランマスターみたいな事言われてます!」

 ガンナーとして此処までやってきているから戦闘力はあるだろうけど、情報屋って大事なのよね。あー、一応フレンド登録を飛ばすか。そういう訳でさくっとフレンド申請を飛ばすと「おぉ!」とものすごく嬉しそうにして受理される。

「おー……感動です、トップガンナーとフレンドになりました!」
「そういえばまともに情報クランのとフレンド組むの初めてだわ」

 なおさら光栄です!と楽しそうにしているのでため息交じりに紫煙を吐いてからこれからどうするかを少し考える。こいつはあちこち回ってどういう状況かを分かっているだろうし、適宜連絡を貰うのがいいか。

「それで、自分はどうしましょうか!」
「現状でヤバそうな所ってないでしょ?」
「んー、チームとして危ないのは5か所ほどありますね、所謂内部崩壊と言うか、意思が真っすぐじゃないというか……」

 つまり、リーダー的な存在やまとめ役がいないので、とにかくとりあえずやってきたのを倒す。こういう構図が出来上がっているのでそれぞれが勝手にイベントをやって「俺が私が」で獲物の取り合いをしているって事か。
 
「今の所は?」
「ガンナーなので火力でごり押しで戦線を維持しているって感じですね!何かしらの問題があると一気に瓦解して陥落する可能性があるかと!」
「落とされると上に行けないのよね……こういう自分勝手な連中で集まってると他の所に行っても不和が起きるし、どうにかしたいけど」
「難しいですね!」

 元気はつらつと返事をしてくるのだが、結構頭の痛い問題だぞ。
 こういう不和を招く連中が他の所に行って更に問題が起きてじわじわと砦が落とされて行って、拠点だけになったら詰みだ。

「……どうにかこうにかその5砦を瓦解する前に纏めれるように誘導できんかな」
「自分そういうのは苦手なので!」

 ぴっと敬礼して無理です!みたいな顔をして真っすぐこっちを見てくるのでもう一回大きくため息を吐きだして頭を抱える。

「どうするかなあ」

 思った以上にヤバいかもしれん。
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