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16章

394話 はみ出し者

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 2回目の襲撃もさくっと終わらせ、ボスタイプのウルフは可哀そうなレベルで滅多打ちになった。そういや私がリスポンした砦の中に、トカゲが作り上げたガトリングを使っている奴がいるとは思わなかったし、私が思っている以上に火力が高い上に、色々持ってるのが多い。
 って言うか、改めて2回目の襲撃を見て分かった事だが、やっぱり下手な職よりも制圧力が高い。弾幕が厚い薄いって問題はあるにせよ、そもそもの火力が高いのが顕著に表れている。集中砲火で固定ダメージ撃ち込んだらそりゃ強いわな。

 ただ、ここで問題が出てくるのだが、制圧力が高すぎるのがそれぞれの足を引っ張っている。最初のイベントと同様なのであれば、原因を探ったりなんだり隠しボスを出して進行を上げる、もしくはひたすら倒しまくる事でランクを上げていくことになるはず。
 前回の様に狭い界隈であれこれと調べまわる事は広さ的にも時間的にも難しい。円形に砦が配置されているから大きくマップを見ても円形だろうから、一部の砦に偏って何かあるとは考えられない。そうなるとあの森やらなんやらがありそうな奥地の方に出向かないといけないか。
 スコアを稼ぐというのであれば、襲撃中は砦と拠点の間にモンスターが出てくるからそれを倒しまわるってのも手だが、根本的な解決にはならんな。

「さて、どうしたものか」

 ぶいーんと愛機の4脚戦車を拠点に走らせて、調べ切れなかったNPC関係をさくっと調べに行く。結果だけ言えば銃弾は売ってると言うか、普通に配られていた。その代わり1ウェーブ毎に無料で貰えるのは100発、交換と譲渡も可能、イベントマップから戻ったら全消滅、追加で欲しけりゃ金を払うかモンスターを倒したら良しって条件も付いている。
 ただまあ、こっちに戻ってこないといけない訳で、戻っている途中で襲撃があると道中のモンスターに手をこまねいて砦が落ちる、と……難しい所だな、全員一気に拠点に回収しにいって必死こいて戻るか、ある程度戦線を維持しつつ、順番に戻って補給するか。

「結構やらしい選択してくるなあ……」

 煙草の先を上下に揺らしながら少し考える。拠点と砦間の移動はユニットを使えばそこまで移動時間は掛からないが、8000人はいるプレイヤーが1個の拠点に殺到してきたら補給なんて言ってられん状況になる。今の所パニックにはなっていないが、そのうちごった返しそう。ついでに言えば砦が落とされ始めると拠点にプレイヤーが溜まる。防衛自体は強固になっていくけど、さっきも言った通り何千ものプレイヤーがごった返していたら防衛もままならん。

 まあ、その時はその時だな、まだ序盤だしヤバそうになったらヤバそうになったで考えよう。とりあえず私と同じように考えている奴もいて、砦と拠点を行き来しているのも見かけるし、そろそろ動き始めないと上位入賞なんて出来る訳がない。

「ある程度人数揃えて遊撃に出たかったけど、仕方がないか……例の情報クランの奴もいないし」

 協調できそうな奴がいたらピックしてほしかったが、それは無理そう。結局、いつもの感じで1人で動き回るのが良いって事か。ああー、大変だなー、1人であれこれやるの大変だなー。

「とりあえず奥地に行ってモンスター狩りしてみるか」

 じゃないと襲撃だけでランクは上がっていかないし、ここがポイントだろうよ。





 担当砦の横を抜け、襲撃先へとガンガン進んでいく。
 そうしてあっさりとたどり着くのは先の見えない森、ここまでの距離的には砦と拠点1往復ちょいって所。道中は特にモンスターが出る訳でもないし、何かめぼしい物がある訳でもない。ああ、でも途中で隣の砦が作った前線はあったかな。あれって前線に出ている連中にしか得しない気がするけど、同意してるって事は納得してるんかな?

「ま、ライバルが減る分には構わないんだけど」

 そんな事を考えていればあっという間にモンスターの森にやってくる。襲撃まではまだ時間もあるし、今のうちにどんな所かチェックして、稼げるならここで稼ぎまくろう。死んだら死んだで拠点に戻るから、何だったら弾撃ち切って襲撃開始の時に死ねばデスルーラと補給が出来て、その上で沸いてきた相手を片付ければいいだけよ。

 とにかくユニットから降りてPウサ銃を構えつつ進行開始。
 1歩入っただけでマップの表示が切り替わり、ここがダンジョン扱いってのがよくわかる。何と言うかまあ、ひたすらに広大な森が広がっているのが気がかりではある。

「それじゃあ、まあ……行きますか」

 まさかこんな所で森系のダンジョンアタックをする事になるとは思わなかったが、この手のダンジョンって迷路っぽい作りになっていたりして面倒なんだよね。左右からいきなり襲い掛かって来て、そのままボコられるとか、そういう可能性もあるから神経使うわ。

「一応用意はしとくか」

 ガンベルトに提げておいたアデレラをすぐに出せるように調整しつつ、じっくりと森の中を進んでいく。トラッカーも使ってしっかり索敵しつつ、銃剣で枝や草を切り払いながら先に進む。
 襲撃の時間にならないとモンスターが沸かないって訳じゃないだろうし、いつでも襲われる覚悟出来てるんだけど、特になし。

「こうなってくると逆にこえーな」

 たまにモンスターの鳴き声も響くから、生息自体はしているぽいし、そのうち出会うだろうよ。
 なんて思っていたところ、がさがさと茂みが揺れてくるのでPウサ銃を構えて、飛び出してくるのを待って、大きく茂みが揺れて飛び出してきた瞬間に引き金を。

「待って待って!」
「横に飛べ」

 飛び出てきたプレイヤーの必死な形相と勢い、ついでにトラッカーの発動しっぱなしでちらっと見えた後ろの赤い点を見て、どけ、と軽く顔を振って横っ飛びさせ、まだちらちらとしか見えないモンスターに5発全部撃ちこんで、素早くクリップ排莢、装填。

「どんなモンスターだった」
「ええっと、ああ、狼型だよ、狼型!」
「ウェーブ毎にモンスターが追加か……一匹だけ?」
「と、とりあえずは……」

 ぜいぜいと荒い息を整えながら持っている拳銃を構えて追いかけられた方に向けているのは、中々に根性の座っている奴だな。必死こいて逃げてたって事を除けばだけど。

「よくもまあそんな貧弱な恰好で来ようと思ったな?」

 少しだけ腰を落としてすぐに飛び退ける状態で構えて暫くじっとし、辺りを警戒し続ける。
 とりあえず少しその場にいた後、追撃が来ないのを確認してから、構えを解いて一息入れる。

「弱い相手にそんなにびびり倒してちゃ、先進めないぞ」

 へたり込んでいる奴を引き起こしてからもう一度ぐるっと周りを安全確認。

「はー、助かったよ……あんたも何か調べものか?」
「いや、稼ぎに来たんだけど、ライバルなら見捨てた方が良かったわ」
「そんな事言うなって」

 はーっと大きくため息を吐いて拳銃の装填をしているヘタレにさっさと言えと言う様に睨みつける。流石に分かったという様にマップを開いて情報交換。と、言ってもめぼしい物は特になく、ここから先もずーっと森が続いて行くと言うだけ。

「モンスターのリスポンしてる所とか、そういうのはないの?」
「森が深いから分からない、獣道から逸れたら本気で未開の地だし……不服そうな顔やめーや」

 おっと、顔に出てたか。

「で、あんたは何のために?」
「一緒だよ、襲撃だけじゃ稼げないと思ったから来たんだが……一人じゃきつすぎる」

 ま、確かにあの状況を見たらそもそも1人がきついんじゃないのか?と、言っても私も1匹倒すのに5発撃ち込んだからそんなに長い事いられるわけじゃない。ついでに言えば爆発物は火災がヤバそうでちょっと使うのが躊躇う。

「ちなみに私以外にプレイヤー見た?」
「銃声は聞こえたからいると思う、見てはいないけど」
「ふーむ……私はもっと奥に行くけど、あんたは?」
「継戦できる程弾が無いから戻るよ、拠点に行ったら補給できるらしいし、襲撃に備えないとな」

 どっこいしょ、と年寄り臭い声を出して、腰を叩きながら私がやってきた道を戻り始める。

「気を付けて戻りなさいよ、もう助けられないんだし」
「分かってるよ、あんがとさん」

 手をぷらぷらと振って 私がやってきた道を戻っていくのを見て、少し大きめに息を吐き出しもう一度銃を構えて飛び出してきた茂みの方を見つめる。

「やっぱり道は逸れてなんぼって事か」
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