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16章

393話 徐々に見えるイベント

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 イベントの拠点に来たらNPCばっかりでプレイヤーの数はそんなにいない。普通に考えれば開幕早々でこっち側に来る奴って大体捻くれてるプレイヤーだよな。
 で、まあまあ走ってやってきたこの拠点、外周をぐるっと砦が囲んでいて、全周から襲われている状況ってのがよくわかる。まあ、この辺に関してはマップ見てた感じでこうなってると思っていたからそこまで驚きはなかったが、人が少ない方がちょっと意外だった。もうちょっと調べに来るようなのがいると思ったんだが、特にそういう事は無く、物好きか私と同じような考えか?
 
「あ、そこの人、プレイヤーですよね?」
「そうだが……なんじゃい」
「えーっと、どの砦から来たか教えてもらえませんか」

 とりあえずあっちと指を向けてみるが何処かわかんないよ!とツッコミを入れられる。

「マップに自分の所属砦書いてない?」
「んー……これか」

 マップを開いて自分が来た砦の番号をチェック。で、私がリスポンしてきた砦は1番と書いてあり、私が寄ってきた砦の方が40番と書いてある。こうもまあ都合のいい感じで頭とケツの番号が分かるもんかね。って言うか、寄ったから番号が分かったのかな、これ。他の砦に関しちゃ特に番号が振ってあるわけじゃないし。

「砦の番号聞いてどうするんだ」
「どのくらい人がいるかなーって」
「砦の数はマップで見たらわかると思うんだが……まあ、40までだからざっと8000ってとこじゃないか」
「ふむふむ……1砦200人前後で×40の簡単な計算ですね……」

 手元にメモ帳を出してあれこれと書き込みながらふんふんと鼻息荒くなっている。こういうの傍から見るとなかなかだなあ。って言うか私に声を掛けたので少し分かったが、この拠点にはNPCが存在しているっぽい。流石に無補給で持ち込みだけってのはないだろうから銃弾は売ってそうだ。
 それにしても拠点が中央にあるって事は、砦が何個か抜けられると一気に此処まで侵攻されるんじゃないか?ソロゲーなら実験として1回しくじってから攻略方法を見つけるのもセオリーなのだが、オンラインゲームでなおかつ一発勝負だと下手にしくじる事は出来ん。
 とにかく集められる情報は集めて地盤を作ってから攻勢に出たい所だが……。

「敵襲ー!敵襲ー!!」

 拠点の上、高台にいる奴が鐘を鳴らして叫びをあげる。
 次ウェーブの発生が速過ぎる、まださっきの襲撃からリアルタイムで1時間も経ってないぞ。

「こっから戻るの結構大変だな」
「転移はないですよ、復活地点も拠点固定ですねー」

 私の独り言に反応してか、近づいてきたプレイヤーがメモ帳を開いてあれこれと私に口出ししてくる。

「その感じからして情報クラン所属っぽいな」
「はい!情報クラン所属のサンダース軍曹です!」

 またネタ感の濃い奴が……とにかく今の所やらなきゃならんのは砦の方に行かないといけない事か。

「出せりゃいいんだけど、なっ」

 拠点の中で自分の搭乗機体、4脚戦車召喚のスキルを使ってみると、あっさりと出てくるのでにんまりと。やっぱ移動距離の長い道のりはこういうのがないとな……って最初から使って置けよって話か。こういうの結構忘れるんだよね、八兵衛八兵衛。

「おお、乗物は出せるんですね、盲点でした!」
「その台詞私も言いたいわ」

 手を合わせて小さくぱちぱちとしているのを横目に、砦の方へと向いてさっさと発進。
 後ろで手を振って見送ってくれるわけだけど、あいつは何をしているんだろうか。情報クランの連中って勝ちだったりランクを気にしない連中なのかね。

 そうしてそのまま走り続けている途中、拠点と砦のそこそこある距離の途中でモンスターが発生している。その代わり、特に移動するわけではなく、うろうろとするだけで砦にも拠点にも近寄ったりはしない。ただただ移動を邪魔してくるモンスターって事か。

「襲撃中のお邪魔キャラ扱いか」

 こういう時はダメージ覚悟。やっぱ移動と兼用できるようにグレネードランチャーの機構くらい開発しておくか、いちいち投げ物ポーチから取り出して使うの手間だし。
 で、うろうろとその辺りで歩き回っているモンスターの中心辺りに向け、急停止からのグレネード投擲。相変わらずのボンバーマンっぷりに自分でも惚れ惚れする。とりあえず投げて着火していないグレネードをPウサ銃で3発使って撃ち抜いて、モンスター群のど真ん中を吹っ飛ばし、爆炎と土煙が舞っている中を突っ切り砦の方に向かう。

「あちち……って言うか一発だけで足りないじゃん」

 煙から抜けると、まだ結構いるモンスターを見てから、またグレネードを取り出してPウサ銃で2発撃ち込んで爆破。相変わらずの良い威力で爆音が響き、煙が舞っている所に入りながらPウサ銃の装填。チャキンとクリップが弾き飛ぶ音をさせると共にまた煙を抜ける。

「いい加減に黒色火薬じゃなくてダイナマイト辺り作らないと駄目か」

 吹っ飛ばしまくってモンスター群を抜け、さらに加速して自分の担当砦に向かう。




 レース場で使うだけあって騎乗ユニットの速さってガチよね。
 砦に近づくほどに銃声が大きくなり、裏口の辺りでユニットだけ停止させると共にジャンプ。慣性の法則ですっ飛んで砦の中に戻り、襲撃されているが外周側の方にさらに走る。

「おっと、待機命令と」

 ユニットに遠隔で待機命令を出して置き、バリバリと撃ちまくっている戦列の所に辿り着く。
 とりあえずPウサ銃を肩に担いだまま、最初に登った高台に上がりつつ残りのグレネードの本数を手で数え、土煙が上がりまくっている戦場をトラッカーで見渡す。

「最初の襲撃より少し押され気味か……あれからしっかり部隊編成したっぽいね、まあ平撃ちしてるのは変わらないけど」

 少し出ていっただけでしっかり部隊編成しているって凄いわ、そこそこ距離があるから遠距離向きのライフル系を前面に出して、拳銃やショットガン系はまだ待機している。なるほど、最初にやってたバカスカ撃ちまくる方法をやめて、平撃ちでしっかり制圧射撃で数を減らして、近づいたら当てやすい近距離系の銃撃で倒すって感じか。

「大物が出てきて壁になる……ってのもいないけど、モンスター群も特に変わり映えは無し、と」

 まあ序盤の数ウェーブは余裕で行けるもんだし、特に言う事も無いな。特に触れる必要もあまりなかったが、今の所4足歩行系の獣モンスターばかりで大体1発2発直撃したら倒れていっている。これなら特に問題はない……と、思っていたところに咆哮が響き、ボスモンスターの姿が見える。
 
「って思ってたらボスが出てくるとは……このまま平撃ち一斉射撃で倒せるような気もするけど、ちょっと撃ちすぎなきもする」

 とりあえずPウサ銃を壁の上に置いて照準越しにボスを見つつどうするか思考を巡らせる。ぶっちゃけここでいきなり前に出ていってあれやこれやするなら、このまま平撃ちの連中と合わせて撃破して凌ぐかな。

「襲撃の間隔、ボスが段階的に増えていく、やっぱ典型的なウェーブ防衛イベントで確定っと」

 モンスター群から抜け出したのを3発撃って倒して一息、やっぱり距離があったり小さい標的だと3、4発使ってしまうのは今後の課題。何て言うかここまでやって来て課題とやる事ばっかり多くなっていくって終わりが無さすぎる。

「とりあえずボス級か、でかいウルフだからさっくり倒せるだろうよ」

 新しい煙草を咥え直してやってくるボス級を平撃ち、約200人同時斉射を食らわせる事になる。
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