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16章

392話 世界は広い

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 あーだこーだと考えていたらそこら中から発砲音が響き、そこそこの距離からモンスターを倒し始める。そんな事はと言う様に、高所に1人でいるのもあるし、戦闘も開始したからスキンケア券使って容姿を変えておく。ウルフカットの赤髪にして、宇宙猫Tを着て置いたら私だって分からんだろうよ。

「おー、やってるやってる」

 迫りくるモンスター群にそこら中から銃声が響き、えらい勢いで処理されていくのを眺めながらこのイベントの立ち回り方を考える。拠点を防衛するというのは大前提として多分段階的に敵の強さが上がっていくと思う。タワーディフェンス然りウェーブ系の防衛物って大体そうだからって理由なので、その法則で言えば序盤は小手調べだろうよ。

「それにしても結構面白い物使ってるのが多いな、後で聞いてみるか」

 射撃系の職なら高所取るのは基本だけど、普通に低所で撃ちまくってる。まあ、横並びで撃ちまくるってのも制圧射撃としては優秀だけど、装填する時にもたつくと手薄な所が突破されやすいんだよな、あれ。
 隙を無くして断続的にってなると三段撃ちかな、あれも本当はあんなんじゃなかったとか言われてたけど、そんな事はどうでも良くて、使えるか使えないかって所が大事だよな。

 そんな平撃ちしている連中の中に、長物にスコープ付けているのだったり、やけに遠距離射撃で当てているのが居たり、私いつも使ってる装填よりも手早く弾を入れ直しているのと、見た事も無いスキルらしきものやアタッチメントを付けているのがいる。
 やっぱりこういう時じゃないと他のガンナーってよく見ないんだよな。近場で見てたガンナーって、トカゲ、ポンコツだけだったし、その他で言えばパチモン、ポニテ、カウボーイだけってのを考えると私の交友関係狭すぎるな。

「そりゃまあ、私以外にもガンナーがいるんだし、当たり前か」

 いつも通り煙草を取り出し、咥えると共に火を付けて戦況を確認。特に私が攻撃参加しなくても良さそうだし、初回はどんなものかを見る事に徹しよう。で、ついでにあの珍しいアタッチメントだったりスキルの話をそれとなく聞いて、これから取得するかどうかを考えるかな。
 やっぱ不遇でめんどくさい上に安定させるまでの難度が高いだけあって、今もガンナーをやり続けているのって頭おかしい連中だよな。その難度の高くて面倒くさい事をやり続けてきた生粋の変態共って事か……ちょっと面白い。

「流石に火力だけ見ればゲーム最強クラスだから、制圧射撃するとまあーみるみる倒せていくわ」

 とりあえず小手調べと言う様に出てきたモンスター群はあっと言う間に制圧されていく。数もそこそこだったし、運営の感じを読むってのは好きじゃないけど「こういうイベントだよ」って軽めのジャブを打ち込んできたってとこだな。

「ふーむ、定期的にやって来るモンスターを倒しつつ、それ以外でも出張って倒す……なんて簡単なイベントだったら2日もやらねえよな」

 お、下にいるガンナー、レバーアクションライフル持ってる。いいなあ、あれ……じゃこじゃこ動かすだけでも楽しいし、スピンコックは憧れるんだけど、実用性はないんだよな。ショートバレルにしてレバー部分を改良で回転をスムーズにして……ああ、こういう弄り方をするってのも面白いのか。
 
「さてと、とりあえず斥候に出て何処からポップしてくるかチェックするのと、転移が可能なのか、リスポン地点を見て、ああその前に砦の中を見ないとか」

 情報っての武器だから、ここでどこまでやれるかがポイントか。とりあえず砦内の施設なり構造も確認しないと駄目か。あー、確認とか調べない事いっぱいあって大変だなあー。
 そうして、これからの事を考えていたら1回目の襲撃が終わったのか襲撃が終わり、一息付けれたのか自分の砦からの銃声が鳴り止む。遠くの方ではまだ音が響いてるので別の砦はまだやっているみたいだ。
 流石に戦力集中って事はないだろうから、全体的にある程度均一にしているとは思うんだけど、使っている得物によっては交戦距離も変わるだろうし、処理速度もまちまちってのが原因か。

「1砦200人くらいか?結構いるな」

 高台から降りて砦内部を歩き回り、大体の人数をチェック。それぞれが撃ち切ったマガジンに弾を込めて次の戦闘に備えているのや、音頭を取ってチームを組み始めている。
 
「とりあえず全員協力しよう!ここで仲違いしても仕方がないぞ!」

 おー、血気盛んだなあ……でもまあ言ってる事は悪くない、協力すれば良い所に行くし、全体的なランクも上がっていくだろうし?それに低レベルから高レベルまでいるから、まとまって行動するってのもいい作戦だ。
 
「そうね、ここでバラバラに動いても仕方がないし、協調しましょう?」
「何が使えるか話し合って動き方を決めた方が良いんじゃないか!」
「銃種で纏まってバランス良く配置ってのはどうだ?」

 凄いなあ、ああやって大人数で相談するって……私だったら私の理想の動きをさせるために死ぬほど人を使って無茶ぶりしまくるから、あんなことできんわ。なんだったら持ってる銃なんて関係ないからモンスターをぶちのめせって言うよ。そうやって盛り上がっている所をするっと抜けて砦の外に。
 
「とりあえず次の襲撃までは時間があるだろうし、隣の砦とモンスターの湧いてきた方を見に行くか」

 襲撃の間隔は全部一緒だろうから、まだ猶予はあると思うし、今の内に集められる情報なりは手早く揃えておきたい。

「んじゃー、まあ、走るとしますか……」

 えっほえっほと走り始める。
 砦同士の間隔がそこそこあるからさっさと行かないと大変だろうしな。




「っと、到着」

 特にモンスターも出ず、ただただそれなりな距離を走って来るだけで隣の砦に到着。
 中に入る事は……余裕で出来る、構造も一緒、特に変わった事も無いので配置くらいか?浅いとはいえ「W」の谷部分だから人数が少ない?

「……なんか人数少ないと思うんだけど、どうしたの?」

 手頃にその辺にいた奴に声を掛けてみる。

「ん?ああ、さっきの襲撃が終わってから砦の先にもう1つ陣を張ろうって言いだしたのがいたんだよ、それに同調したのが出ていったからだよ」
「何であんた達は残ったの?」
「低~中レベルや生産メインなんだ、俺もガンスミスであんまり戦闘はな」

 はっはっはと楽しそうに笑うのを見て少し呆れながらも小さく笑みを返す。

「なるほどねえ……撃ち漏らしや援護メインを後ろにしたって事か」
「そういう事よ、で、あんたはどうするんだ?」
「そーねー……前の前まで行く予定かな」
「前の前?」
「そ、前の前」

 結構砦ごとに戦略を変えているのは面白いな。私が割り振られた所はとりあえず全員揃って砦で迎撃って形だし、こっちは前衛と後衛をきっちり分けての戦い方とは。それにしてもやっぱ人を集めて何か出来る奴って結構いるんだな。日本人ってそういうタイプ少ないってのに。

「ふーむ?まあ、何にせよ気を付けてな」
「はいはい、あんがとね」

 手をぷらぷらと振ってその砦を後にし、煙草を咥えて少し考える。
 もう1つくらい他の砦を調べてから拠点がどういうものかを見てから、モンスターの進行ルートを調べるって感じで行くか。

「あー、これから忙しいぞー」

 ギザ歯をにぃーっと見せる笑みを浮かべつつ、拠点に向かってまた走り出す。
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