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16章

389話 変わってないスパルタ

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「もうやだああああ!」
「黙って戦え!ああ、馬鹿!そっちは迂闊に近づくなって!」

 いつもの様に煙草を咥えてマガジンを入れ替えつつ、連れてきた2人の泣き言をBGMに楽しんでモンスターの相手をする。ヴィエ周辺からのレベルアベレージは60以上、私でも複数相手だとあっさり死ぬくらいには強い所なので油断できない。で、連れ込んできた2人だがレベルはまだ40ちょい。
 普通であれば戦っても勝てる要素がないのだが、その辺はガンナーの強い所。固定ダメージでのごり押しって言う、他の職には出来ない事を出来るのがやっぱり強みだな。
 ただレベルの高いモンスターになると、撃って、当たって固定ダメージで撃破……なんて簡単にはいかず、装甲なり鱗だったりと防御手段を持っているのと、元々のHPが高いのでいかに装甲の無い所を狙いつつ、銃弾を叩きこまないといけないという問題はある。
 あの2人が必死こいて戦っている相手も鱗が硬くなったリザードマンな上に、防具も着込んでいるのでどうにかこうにか攻撃して鱗を剥がして、防具を構えていない所を狙っていくわけだ。勿論普通に斬り込んでくるわ、軽いブレスを吐いてくるわで直撃したら即死だな。

「ポニテがあと6回、カウボーイがあと5回ノルマだぞ、さっさと達成しろ」

 自分のノルマは既にこなしているので、今目の前にいる奴にはとにかくぶっ放せば済む。と、軽くは言っているが、レベル差もないし、こっちも攻撃を貰えば瀕死にはなる。ここに来てガンナーの「やられる前にやる」と言う大前提が重要になってくるとは。
 リザードマンが持ってる斧が前髪を焦がし、数本斬り飛ばすのを見ながら尻尾を使っての上体反らしで避けて装填し終わったアデレラで反撃。獣特有の叫び声と言うか、高めの鳴き声を発しながらポリゴン状に消失していく。
 倒してふいっと一息入れている間にポニテの馬鹿が迂闊に別の敵を引っ張って2対2を繰り広げるので参戦する前に煙草で一服。そもそも目的地に近づいてもいないので、こんな所で足止めを食らう訳にはいかないのだが……あいつらが付いてきたいって言ったんだから自分の尻拭い、てめえでやれって話よ。

「まだ目的地の採掘場まで行ってないんだよ……はいはい、ちゃっちゃと倒す」

 手をパンパンと叩いて倒すことを促す。全く、この辺ならまだトラッカーを使って置けばさくさく進められるってのに、ポニテがふらふらしたせいでこうなった。まだヴィエ出て2エリアだぞ。

「無理無理無理!!」
「アカメさん、流石にきついから!」
「ノルマも達成してない、敵も倒せてない、付いてきたいって言ったんだからつべこべ言わず言いなさいよ」

 Pウサ銃に装填していた銃弾をがちゃがちゃと全部抜いてから、新しい銃弾を詰め込み。苦戦している2人の方へ撃ちこみ、リザードマンの攻撃に対してキャンセルを入れる。やっぱライフルは命中させやすくて非常に良い武器。

「あっぶなあ!」
「誤射だけはやめてくれよ!」

 爆破物じゃないとFFは入んないし、何だったらFFかまして攻撃の反動で無理やり回避させるって事も出来るから悪い事じゃないんだぞ?そもそも私よりも固定ダメージの高い銃を使ってるんだから装填の隙さえ晒さなければ強いはずだ。

「ポニテはもっと相手を見ろ、後3発は直撃出来ているぞ」

 銃剣ライフルを杖代わりに寄りかかりながら状況を見つつ、革手の具合を確かめる様にぐぱぐぱと握って開いてを繰り返しつつ指先を伸ばしたりする。

「カウボーイ、お前は装填のタイミングが悪い、使った銃弾の数を覚えろ」

 たまに飛んでくる攻撃を尻尾を使って避け、煙草を咥えて火を付ける。この動作も慣れたもんだな。そうして紫煙をふいーと大きく吐き出してからPウサ銃を構えて前に出る。まったくこいつらは、もうちょっとガンナーとしての戦い方を教え込まにゃならんのか。
 大きめに紫煙を吐きだしてからてこずってたリザードマン2体をPウサ銃で仕留めて、くるりと銃を回して肩に担ぐ。

「ポニテ40点、カウボーイ60点……もっとしっかり立ち回れ」
「いきなり高レベルの所連れてきてひどぉ!」
「それは同意!」

 もう一度はーっと大きめにため息を吐きだしてから強めに睨みつけてから煙草をぷっと吐き出す。

「まだ2エリア先だからな、索敵しくじったり、ポニテがテンパって無駄に敵釣ったりしたらもっときつくなる……覚悟しろ」
「ええええ!もっときつくなるのぉ!」
「大会チャンピオンになる理由が良ーくわかったよ……」

 ぐったりして座り込んでいる2人に向かって弾を入れ替えたPウサ銃で撃ち抜いて回復。回復弾ってあんまり発想が無かったけど、あるとあるで便利だな。ダメージは無いけど当たった瞬間は衝撃が走るから大体びくんと体が跳ねる所かな。

「いっだぁああ!頭狙わなくてもいいじゃんかあ!」
「……つまり、苦戦してダメージを貰うとダメージは無いけど痛い攻撃をアカメさんから毎回貰うって事か」
「物わかりの良い子は好きよ」

 にぃーっとギザ歯をへたり込んでいる2人に見せつけると、このゲームが始まって以来のとっても良い笑顔を見せつけると、2人揃って付いてくるんじゃなかったというような顔を浮かべる。





「あー、時間掛かったわ、ほらあんた達も使うんだから採掘しときな」

 何もない所からつるはしを出してがんがんと採掘を始める。狙いは金がメインだが、その他諸々の功績も取れるので一石二鳥。元気に採掘を始めている後ろでぐったりしたままの2人をちらちら見ながらも作業を続ける。

「アカメさんが何で強いかよくわかった……」
「やっぱももえさんのいう事聞いておけばよかったな」

 何を言ったのやらと思いながらざくざくと鉱石を順調に集めていく。それにしてもあれだけ言って置いて良く付いてきたな、こいつら。あのポンコツを見ているだけあって結構根性はあるし、もうちょっとしごいてやったらいい感じになると思う。

「そういえば、アカメさん色々珍しいスキル持ってますけど、どうやってとったんですか」
「銃操作は俺も欲しいな、滅茶苦茶便利じゃん」
「最初は有線で銃を投げたり発射したりしてたら発現したかな、ただ銃操作を覚えて実用化するためにステータスの振り直しや忍者のスキルを上げたり、種族特性含めてだからかなり難しいぞ」

 採掘をやめて、Pウサ銃を手に持ってからしゅぱっと上空に回転を掛けながら投げてから意識を集中して銃操作を発動。回転速度が加速したり減速したり、ぴたっと銃口が2人の方へ向けて止まったりとする。が、この操作をするたびにMPがごりごりと削れていくので長時間は結構きつい。

「それにしても何でこんな事覚えようと思ったのかが分からない、十分立ち回りでも強いと思うのだが」
「うんうん、此処まで来るときもそんな使ってないし」
「今日は採掘がメインだからだよ、討伐メインならMPポーションがぶ飲みして立ち回るからな」

 手元にぽすっとPウサ銃を落としてキャッチすると共に、また杖の様に使って一息。
 今みたいな操作はまだそんなにMPも使わないし、1丁だけなのでそこまでだが、2丁で複雑な動きをすればするほど、脳みそがこんがらがる……これリアルに影響ないだろうな。

「1人で立ち回るとどうしても攻撃したいタイミングや角度が悪い、それと単純に手数を補うためもあるな……まあ、対人だったりソロで何でもかんでもやろうと思わなければ必要ないぞ」
「でもいいなあ……カッコいいし」
「そこは大事だ」

 ああ、うん、よくわかってるじゃないか。
 カッコいいってマジで大事。
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