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15章

386話 クラン的な日常

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「アカメの奴が勝ったか……じゃ、儂の勝ちだな」
「うーん、ボスに素直に賭けておけば良かった」

 十兵衛と菖蒲が机の上でかけ金を清算していると大会に出ていたのがわらわらと帰ってくる。中途半端な成績のバイパーとももえ、2位のマイカ。もしもアカメが大会に参加せずここにいたら散々っぱら笑い転げて馬鹿にしているだろう。
 
「もうちょっと上に来てたら楽だったのになぁ」
「闘技場に出てない奴が強いってパターン多いんだよ」
「1位の脳筋さんもあっさりやられてるしねー」

 珍しく勝ちにこだわったマイカ、残り2人も勿論勝ちを拾いに行ったわけだが、そこまで成績が振るわなかったのは事実で、あーだこーだと反省点を言い合っている。

「おかえりなさいませ」
「アカメちゃん、元気だったよぉ」

 アイオンがいつもの様に出迎えるので、マイカがわしゃわしゃと撫でてからクランハウスの2F自分の定位置に座ってぐてりと垂れる。バイパーとももえも同じように定位置に。

「バイオレットさんも参加してたみたいですけど、決勝には行けなかったようで」
「序盤のバトロワで負けたらしいよぉ?」
「あいつもあいつで苦労しているな」

 そんな話をしていると珍しくアイオンがカットイン。

「バイオレット様からの伝言を預かっております……『暫く戻らない』との事です」
「俺様のクランはストイックな連中が多いな」

 1Fから上がってきたニーナが欠伸をしながらどかっとアカメの定位置だった椅子に座って一息入れる。

「元ボスが負けず嫌いばっかり集めすぎなんだよ……アイオン、クランの連絡事」
「かしこまりました」

 アカメがいなくなり、クランマスターの代わりを務めてきた訳だが、1週間程度やっていればやる事もスムーズにこなしていく。メニューウィンドウを開きながらあれやこれやの報告書を処理しながら大きくため息を吐きだす。

「主要面子がいるから聞いておくが、クランメンバー増やしてもいいか?」
「かなり急だな……何かあったのか」

 アイオンにグラスを持って来させて自作の酒を傾けながらどうするんだ、と言う顔でニーナを睨む十兵衛。下手に酒造樽を弄られたくないってだけなのだろうけど。

「そこの3人が目立ったおかげってのと、アカメが色んな所でやらかしてるからだな……元々参加申請は結構来てたが」
「あたしは良いけどねぇ」
「資金と材料持ってかれて逃げられるってあるから、暫くは1、2Fの立ち入りだけだな……特に地下は弄ってほしくない物が多すぎる」
「自分もそうですね……作業場は立ち入り禁止で」
「儂も酒造所は立ち入り禁止だな」
「私は部外者だからー」
「……お前ら、どんだけ自分専用に弄ってるんだよ」

 はーっと大きくため息を吐きだしてクラン関係の仕事を終わらせてニーナが眉間に指をあててちょっと考え込む。譲り受けたとは言え、いきなり勢力拡大し不名誉な事を広めるというのはまずい。少人数のクランとは言え、預かっているクランの名前含めてかなり大きく重い。

「面接して2人くらい様子見るか……アイオン、シオンに俺様の補佐を頼んでくれ」
「かしこまりました」

「さて……とりあえずももえ、銃見て欲しいんだろ、地下行くぞ」
「うーい、バイパーさん、ガトリングやめたら?」
「機能と性能じゃなくて浪漫でやってんだよ」

 ももえとバイパーが地下の銃工房に向かう。

「で、元ボスはどうだったんだ」
「そうだね、やっぱ強いよ、あそこまで耐えきれるとは思ってなかったし……持ってるスキルほぼ全部使ったもん」

 マイカが居直してはあーっと大きめにため息を吐きだして貧乏ゆすりを始める。相当悔しかったのかいつもより落ち着きがない。

「で、アカメはいつ戻るって?」
「自分が納得して満足するまでは1人でいたいってさ」
「ボスらしいですね」
「ま、暫くは戻ってこなくてもいいけどな、俺様がこのクランを良くするって啖呵切ったしな」

 そんな事を言っているニーナがクランのメニューを操作すると、階段横にエレベーターが作られる。

「ったく、施設の前に利便性を上げろっての」





「クランマスターニーナ様から補佐をしてくれとの命令を受理」
「元クランマスターアカメ様は暫く戻らないと」
「職務を全うしろとの命令は維持」
「ニーナ様がクランハウスの拡張を実施、移動の際は動線に注意を」
「クラン資金の減少についてニーナ様に連絡」
「マイカ様からわしゃわしゃが1回ありました」
「新規加入希望者の申請を受信、転送致します」
「希望者の増加についてのメールを送信」
「アカメ様が設定していた項目についてメールを送信」
「それでは本日もお願いいたします」
「お願いいたします」
「お願いいたします」





「あいつらは元気だなぁ」

 煙草をぷらぷらと揺らし、ちゃりちゃりと弾を込めながら紫煙を燻らせつつ、設置したタワーシールドの裏から炸裂音だったり攻撃される音を聞きながらメールを確認する。一応設立して集めたってのもあるし、何だかんだで三姉妹も気になる。もっと傍若無人に立ち振る舞えれば良いんだが、嫌な性格してるわ。

「猫耳の奴が私が戻るまでにどこまで大きくするかってのも結構楽しみだ」

 タワーシールドから少し顔を出して敵の方向をちらりと見てから引っ込み一息入れてから大会でも使ってた銃剣ライフルを出して攻撃を返してすぐに引っ込むと、設置している盾に衝撃が走る。

「と、先にこっちをどうにかしないといけないんだけど」

 どごっと大きい音と共に設置している盾が割られるのでごろごろと転がって次の手を考えながらメールの表示画面を消して銃剣ライフルと提げていた銃を2丁、敵の方に投げると同時に銃操作での遠隔射撃。新しく覚えたスキル周りは操作難度が高すぎる物が多い。これでも以前のステータスとスキルだったらまともに扱えていなかったし、全部見直して組み直したおかげもあるわ。

「そういう訳だし、そろそろ落ちてくれや」

 左右と正面から射撃を当てて撃破すると共に、機械音声が流れてその場所から転移させられる。そして転移させられた場所、上を見れば私の名前が表示されている。闘技場ランク50位、ようやく上位陣に食い込んできたが、この辺りからが本番だろうな。

「チャンピオンだーって言って置いていつまでも低ランクにいるのもあれだしな」

 ぽちぽちと次の対戦相手を決めながらにまーっと次の対戦相手を決めていく。待機部屋にいないと対戦できない仕様だが、ランカーは結構待機状態だったり、常に戦い合っているからすぐマッチするのは良い所。うちのクラン連中、結構上位に食い込んでるけど今はいないから対戦が出来ないが。

「っと、次のランク戦が決まったか」

 35位のそこそこ上にいる奴とマッチするので試合成立させてマッチ待機中にもう一回送られてきたメールを眺めてふふっと軽く笑う。

「戻るのも楽しいだろうけど、傍から見て何処まででかくするかってのも面白いな」

 転移が始まり、闘技場に飛ばされると共に次の対戦相手を笑いながら見据える。
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