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15章

385話 殴り合い

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『決勝戦、すごい戦いでしたが、改めて解説をして貰っても良いでしょうか!』
『そうですね、表彰までまだ時間があるので言える範囲で解説いたしましょう』
『では序盤の方からですね!』
『マイカ選手の基本が元から速い所に自己強化で更に速度を重ねて超スピードで戦う……と言うのは今まで通りでしたね』
『それとは別にアカメ選手は多種多様の銃とスモークや撒菱、小道具を使っての迎撃として割り切ったって感じでしたね!』
『はい、徹底的に自分の長所を伸ばしたマイカ選手に対して、相手への対抗策を講じたのがアカメ選手ですね、どちらが良くて悪いのかと言うのは人それぞれですが、両者共に勝ちを拾うためと言うのは変わりないです』
『終始マイカ選手が優勢だと思ったんですが、結果アカメ選手の勝利でした、この辺りはどういう事でしょうか!』
『アカメ選手の立ち回りが上手かったですね、ぎりぎり回避し、致命傷をなるべく避け無理な攻勢に出ないという点が非常に素晴らしい。種族特性の尻尾もしっかり生かしてましたし』
『マイカ選手も視界を防がれた時に耳を使っていましたね!やはりヒューマンや、そういった身体的特徴の無い種族では不利では?』
『先程も言った通り、非常にピーキーなスキルなので取ったからと言って有利になるかと言われると難しいです、取得していても使いこなせないならマイナス方向に働きます』
『つまり、上級者向けスキルと』
『そういうことですね、音による位置把握、尻尾による体勢の保持など、運営が想定していた使い方をされていたので、何よりです』
『なるほど……それでは話を戻して、最終的にアカメ選手が勝った理由はなんでしょうか?』
『結果的ですが、マイカ選手が強化スキルを使いすぎたのが原因でしょう、強化スキルは重ね掛けが出来るのですが、強力な物ほど反動が大きくなるように設定しています』
『つまりアカメ選手の粘りだったという事ですか?』
『そうなりますね、ただ今までの戦闘を見ればそこまで使わなくても勝てた可能性はあったでしょう』
『あそこで何であんなにも許可を入れたのでしょうか』
『さあ、そこまでは……後は本人の気持ちでしょう。と、表彰式の準備が出来たようですね』
『それでは上位三名の選手の表彰です!』



「3位決定戦なんてやってたんだな」
「いやあ、あのガウェインって人強すぎでーす」
「ちゃっかり勝ってる辺り、曲者だなおめー」
「ねー、アカメちゃん、再戦しよーよぉ」
「さっきやったばっかだろうが」

 ピエロの奴が犬野郎を倒せるとは思わなかったが、こんなふざけた奴に負ける犬野郎も大概だな。がっちり防御固めておけば倒せると思ったが、あいつ対モンスターしか強くないんじゃないのか?対人の勝率悪い気がするんだけど。

「これでアカメちゃん、クラン戻るのぉ?」
「いや、戻んない……って言うか、戻る気ないんだけどさ」
「何で?」
「あそこはもう手放した所だから」

 表彰台の上、隣にいるバトルジャンキーとそんな会話をしている横からピエロがちょくちょく茶々を入れてくる。鬱陶しいので一発引っぱたいた。

「手に入れ直しても良いと思うんだけどなぁ」
「手放すには惜しいでーす」
「戻ったら戻ったでまた微温湯に浸かるし……まあ、顔を出すくらいはするわ」

 えーっとぶーたれているジャンキー、それよりも茶々入れてくんなよピエロ。とにかくいつかは戻るかもしれないけど、今すぐ戻るって選択肢は今の所ない。たった一回優勝したからって満足して戻るってその程度の覚悟だったのかって話にもなるし、私が納得するまでは戻らないぞ。

「じゃー、どうするのぉー、いつまでぷらぷらするのぉ?」
「そうでーす、いつまでぷらぷらするんですかー」
「まだレースの大会もあるし、次のランク系イベントが来たら、かな」
「先が長いなぁ」
「計画性がないでーす」
「もっかいボコってやるぞお前ら」
「いいよ?此処でやる?」
「はーっはっは、まけませーん!」

『それでは表彰を……って何やってんですか!』
『場外乱闘ですね、まだ闘技場エリア内なので誰かがやると思いましたが……まあ、楽しいんで良いでしょう』
『いや、運営!こういうの普通止めるもんでしょ!』
『あ、チャンピオンが良いパンチ入れましたよ……まあ、規約違反や不正、予期せぬバグでのトラブルじゃないと基本的には介入しないので』
『殆ど投げっぱなしじゃないですか!』
『そうとも言います』

「もっかいくたばれ、こいつ!」
「おーう、痛いでーす!」
「隙ありぃー!」

『今ここでチャンピオンを倒せば下克上ですね』
『運営が油を注いだぁ!』
『こういうのは楽しんだもの勝ちですよ』

「全員掛かってこいやぁ!」

 FWSを取り出してチャージを開始しつつ、スモークと通常グレネードをばら撒いて時間稼ぎ、辺り一面で騒動が起きている最中、思いっきりぶっ放して射線上にいた連中を薙ぎ払う。やっぱりこれを頭空っぽにしてぶっ放す時が一番楽しい。砲身をインベントリに放り込み、使わなかったランペイジを2丁取り出してばら撒き文字通り「バラララ」と音を響かせて制圧射撃。

「いででで!」
「今魔法撃った奴でてこいや!」
「チャンピオンがいたぞー!」

 こっちを指差し声を上げた奴にインベントリから斧を一本取り出してぶん投げる。流石に全年齢のゲームなのでスプラッタにはならないのだが、鈍い音が響き間抜けな声を上げて倒れる。

「くたばれ、有象無象の雑魚共が!」

 今までの鬱憤と言うか散々っぱら用意してきたものをインベントリから片っ端出して投げ、撃ち、炸裂させて使いまくる。あー、いい、この無駄な消費をしまくる感じ。あくまでも闘技場内の持ち込みアイテム数だけ無限に使える仕様を逆手に取っているだけだが。

「下がれ下がれ!」
「チャンピオンを止めろー!」
「倒したらチャンピオンだぞ!」

『ええっと、もう実況出来る状態じゃないですね!それにしても酷い乱戦です、チャンピオンは集中砲火を貰ってますが、よくもまあ凌げますね!』
『こういうお祭りは参加してなんぼですよ』

 随分とはっちゃけてるな、運営は。

「アカメちゃん、アカメちゃん、これからどーするのぉ?」

 そんな気の抜けた事を思っていたら、前髪が焦げる程の蹴圧を振り抜いてくるジャンキーの攻撃を避けつつ、たまに近づいてくる有象無象にも撃ち返しながら戦闘を続ける。

「さっき言ったろ、レースで勝って、イベントで勝って、満足したら帰るってな」
「じゃあ、いつさぁー!」
「知らねえよ!」

 一発かまして、無理くり避けたジャンキーと対峙して大きくため息を吐きだす。

「つまり私が満足するまでは帰らないって事よ」

 にぃーっとギザ歯を見せる笑みを見せる。
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