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15章

382話 準決勝1試合目

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『今回の大会もついに準決勝ですね!』
『はい、残った選手と第3回戦はこちらですね』


第3回戦
-試合 盛り蕎麦
1試合 アカメ〇 一二三四五六七八九〇 ×

-試合 ガウェイン
2試合 マイカ〇 ビッグアップル×

準決勝
1試合 盛り蕎麦 アカメ
2試合 ガウェイン マイカ


『残った選手を見ていきますが、注目の方とかいますか!?』
『そうですね、どの選手も面白い傾向にあって、突き抜けて特化しているか、徹底的に自分の弱点を補っていると言う点でしょう、特に突き抜けて特化している2試合目の2選手はどっちが勝ちあがってもおかしくないです』
『そうなると1試合目の方は、弱点を補っていると?』
『はい、盛り蕎麦選手アカメ選手共に弱点を補っているタイプですね、特にアカメ選手は種族特性まで活用しているので非常に素晴らしいです』
『種族特性、とは?』
『身体的特徴のある種族を選んだ方が使える物ですね、当たり前ですが消費SPの高さ、取得条件、なによりも操作難度が高いので玄人向けのスキルです』
『種族差はないと言ってたじゃないですか、やだー!』
『取らなくも問題はないですが取ったらマルチタスク要求なので難しい、と言う事でバランスを取っています。尻尾以外にも獣人であれば鼻が利く耳が利くというのもありますが、今の所種族差を覆すデータは出ていないので、今後何かあれば修正項目にはなっています』
『なるほど、バランス調整は都度やっていると、それにしても種族特性なんてあったんですね!』
『キャラ作成時、サイトマニュアルにも記載されてるので目を通してみるのもいいかと』
『説明書は読もうって事ですね!と、そろそろ準備が出来たようです!』

 闘技場の対面から、ピエロのような恰好をしたのと、全身黒尽くめのが出てきて対峙する。それぞれ、煙草を吸っていたり、ボールジャグリングをしながら試合開始の合図を待っている。

『それでは準決勝1試合目、盛り蕎麦選手VSアカメ選手、試合開始ー!』

 



「ちぃ、くっそ厄介だな、お前」
「はっはー!誉め言葉だねー!」

 飛んでくるボールをいつもの様に手裏剣を飛ばして迎撃しながら距離を取っていつ攻勢に出るかを伺う。こうして撃ち合いをしている少し前に接近戦をしたら、まあアクロバティックに動くわ、変な体勢で反撃してくるわでやりにくい。単純に動きが予想できないから反応できずに何発かもろに食らっているし、これはこれでかなり厄介。
 何度目かの迎撃をしてから大きく距離を取って息を入れる。そういえばこういう変な動きをするのってあまり相手にしたことなかったっけか。特別攻撃が強い、変な状態異常を掛けてくる、追いつけない速度、硬すぎる防御力、多種多様な魔法、こういうの特徴がなく、掴みどころが無さ過ぎて相手にしにくい。
 銃撃でごり押しと言うのも考えたが回避もそこそこあるから案外避けてくる。だからこそ足を止めさせて一発かましてやりたいのだが、それが上手い事いっていない。
 
「何か良い物残ってたっけか……」

 手持ちの装備を確認して何か使える物が無いか確認する。この間にも色々飛ばしてくるからそれを防ぎながらだからまあきつい。
 
「と……そういえばこういうのが刺さるかもしれんな」

 インベントリから一つ装備を取り出してどすっと展開。移動設置型のタワーシールドの構想は前からあったけど、結局使いにくくて実用レベルじゃなかった。ただ障害物として置いておくだけならこれほど有用な物も無い。
 握り手の部分とは別に付いてあるレバーを捻ると成人が2人程隠れるほどの大きさに左右拡張してからバイポット展開、地面にがっつり杭が刺さって自立する。障害物だとしても一方だけしか攻撃は防げてないので回り込まれたら終わりではあるが、射線を少しでも塞ぐって大事。とにかく硬めのボールが盾にぼんぼん当たっている裏で少し考える。

 接近するとどうしても見劣りする後衛なのでダメ、遠距離攻撃は投げナイフ、トランプ、ボールとサーカスだったりマジシャンが使うような道具で絶え間なく攻撃してくる。中距離牽制しながらってのも何とも言えない。

「何でも出来るって強いな」

 この盾持って移動すればって話にはなるが、STRが足りなくてそもそも装備出来ないし、装備出来たとしてもAGIのマイナス補正値が高すぎて向いてない。あの脳筋野郎や、犬野郎辺りが持つのにふさわしい装備。

「だからっていつまでもこうしてる訳にもいけないが」

 煙草を咥えて火を付けてからさっきと同じようにガンベルトに提げていた銃を2丁抜いて、上に高く放り投げた上で、盾から軽く顔を出して相手を補足。と、思ってたらがっつり接近されていて、華麗なアクロバットでこっちの盾を踏み台にして頭上を通っていく。

「ふははー!美人が隠れているのは勿体ないですよー!」

 そのままレイアウトバラニーでしっかりこっちを補足しつつ、空中で火吹き芸。咄嗟の動きが出来ずに初弾をもろに食らってからガンシールドで火炎を防ぎ、横に転がって回避。対火装備なんて暫く使っていないし、装備にもそんな性能入れてないから結構なダメージを貰う。

「クソ、やっぱあれこれやって来る相手はきつい」

 一瞬で燃え尽き、フィルターだけになった煙草を吐き捨てて前回と同じように銃剣ライフル……ではなく忍者刀を抜き接近戦。着地し、また小道具を用意している最中に強襲を掛けて一撃。が、それをトランプで防いでくる。指2本で持ってるトランプごときに私の一撃止められるのすげえ屈辱的。
 そのまま何度か打ち合いをし、金属音を響かせつつ、意識を集中。投げておいた銃を操作するようにイメージしてピエロに向かって飛ばす。こんな所で負ける訳にもいけないし、必死こいてるのもあって折角散々ブラフに使っていた動作もできやしねえ。

「あー、頭いてぇ……!」
「はっはっはー!無理は禁物でーす!」

 こうしている間に剣戟して、空中に飛ばしてる銃2丁を操作、姿勢制御の尻尾。マルチタスクが得意だからってこれは普通にきつい。MPがどうとかの前に私の精神的な疲労の方が強い。長時間操作しつつの戦闘って、あんましやってないしなあ。

「負けたら楽になりまーす!」
「だからって勝ちを諦める理由にはならんだろ」

 少し強く斬りつけ、軽く距離を取ったら銃に意識を向けて遠隔射撃。相変わらずの轟音の発砲音を響かせて相手の持っていたトランプを弾き飛ばし、そのまま残っている銃撃で追撃しながらその中を突っ込んで更に一撃乗せる。が、それでも銃撃16発分をトランプで防ぎ、忍者刀の一撃を螺旋状の刃になっている剣を抜いて防ぐ。

「まどろむような剣持ちやがって!」
「柔軟性ってのは大事ですからねー!」

 何度か斬り合い、大きく弾き合って少し引いた所、腕の捻りを加えた突きの攻撃をガンシールドで防ぐが、あっさりと貫通。散々防いで燃やされてるから当たり前か。自己修復するビームシールド的なの欲しいわ。手頃に使えて取り回しのよさを追求した結果が脆さって所だから仕方がないか。そう思っているとしゅっと剣を戻して、次の攻撃に移っているピエロ。

「厄介さで言えばナンバーワンだよ、お前は!」

 ガンベルトに提げていたマガジン2本を苦無の様に浮かせておいた銃に向けてしゅぱっと投げ、マガジンが届く前に銃を縦回転。空マガジンを飛ばして、そのまま投げたマガジンが入るように調整。ああ、もうMPめっちゃ食うし、頭いてえ。

「ただ、私はうどんの方が好きだな」

 突き攻撃を繰り出してきた瞬間、同じように忍者刀を突きだして少しでも攻撃を反らさせるが、突きの攻撃が思いっきり肩を貫通する。が、その瞬間に相手の剣を握ってから忍者刀を握っていた手。銃の様に人差し指を向けて残ったMPと集中力を全投入して遠隔射撃。16発フル発射で直撃8発、4発掠り、4発ミス。

「おーう、痛いでーす!それと振られて心も痛いでーす!」

 ダメージも入ったし、引くと思ったがそのまま肩を貫かれたまま設置しておいたタワーシールドまで押し込まれ、背中に衝撃、かなりの強さだったせいで忍者刀を落とす。こいつは、このまま持続ダメージでやる気なのか貼り付けにした状態にされたままでぐりぐりと剣を捻られる。

「かけうどんに改名してから出直してこい!」

 搾りかすのようなMPと気力を振り絞って銃の操作を1丁にしたうえで高速回転。十分に勢いがついた所でピエロの顔面に思い切り叩きつける。いまほど大型拳銃にしておいて良かったと思わなかったよ。
 もろに顔面に入ったのもあり、肩に押し込まれていた剣の強さが弱まった所でこれまたガンベルトに入れておいた剥き出しの銃弾を3発抜いて指の間に。

「一か八かは、いつもの事なんだ、よぉ!」
 
 タワーシールドを思い切り蹴り、肩に突き刺さった剣を更に深く刺しつつも接近し、ピエロのボディに思いっきり銃弾を握った拳を叩きつけると同時に生活火魔法で雷管に着火。零距離で3発分を文字通り叩き込むとぐらっとピエロが倒れ、こっちの右手からは黒煙が上がり革手が焼け焦げる。

『準決勝1試合目、勝者アカメ選手ー!』

 わっと大きく上がる歓声を聞きながら一息つける。あーあ、視界真っ赤だよ、全く。
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