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15章

381話 第3回戦1試合目

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「リアルで殴られた訳じゃないけど、こんなに喧嘩したの、小学生ぶり位だわ」

 顎のあたりを擦りつつ、口を上開けて噛み合わせだったりが顎の関節部分を擦ったりしながら、今やってる試合のモニターを見ながら口を開けたり閉じたり。あいつマジでいい感じにパンチ入れてきやがって……最後の最後に殴り合いを提案した私が悪いっちゃ悪いんだが。

「それにしても熱い試合だったっすね?」
「アホの戦い方よ、アホの戦い方……」
「ああいうのはアホになった方が面白いんすよ」

 確かにまあ、試合展開的には見てる方が盛り上がっていただろうけどさ。





 少し遡り。

「私の勝ちだな」

 相手の右頬に私の右拳がめり込み。向こうの拳は私の右頬に数センチ足りてない。そして、そのままずるりと私の方にもたれるように倒れてくるので、さっと横にずれてそのまま倒れるの横目に、地面に置いてあった煙草を拾い、さっと咥えて一服。

「あー……勝つって気持ちいいわ」

 にぃっと口角を上げた笑みを浮かべながらぷはーっと紫煙を大きく吐きだすと共に勝利アナウンスが響く。やっぱりどんなゲームをしても勝つというのは気持ちがいい。それがNPC相手だろうが、肉入りのプレイヤーだろうが、とにかく勝つってのが良い。
 
「あぁー!めっちゃ悔しいぃ!!」

 倒れたままで動けなくなっている魔法馬鹿を上からがっつりと見下ろして、さっき浮かべた笑顔を見せつけながらすぱーっと紫煙を吐きだしながらだんだんと地面を叩きまくってるのを楽しく見つめる。やっべ、この人が悔しがっている姿すげえそそる。

「負けるのマジで悔しいんだけどぉ……!」
「殴り合いした時点で私の勝ちだよ」

 自分の吸い切った煙草をぷっと吐き捨て、魔法馬鹿が火を付けた残っている煙草を拾い、もう一度すぱーっと吸い。

「リベンジマッチは……受けてやらん、勝ち逃げしてやる」
「良いからもっかいやりなさいよ、負けっぱなしは性に合わない」

 やっぱこいつ私みたいだわ。負けるのが嫌で、その上で正道に行かないような奴。普通こういう場面だったら自分との姿を重ねてあれこれ言うんだろうけど……そういう私みたいな奴の鼻っ面をへし折って目の前で勝ち誇ってやるのすっげえ楽しい。

「さーて、と……次はどいつとやるんだったかな」
「見てなさいよぉ!」

 あー、その悔しさ満点の感じ、すげえ良いわ。やられたらすげえむかつくけど。





「お、反対のブロックも終わったみたいっすね」
「そうだなあ……確か1、3試合目の奴がシードだっけ」
「そうっすよ、だから次はアカメさんとやる事になるっす」
「……前にショットガン不意打ちで即死させたの思い出したわ」

 そうそう、クラン大規模戦で顔見知りってので上手いこと近づいて速攻でショットガンかまして倒したんだっけか。あれは悪い事したなーって今更思い出したけど、こいつ好き勝手させると厄介だから嫌なんだよな。そう思っていればぱっとモニターが切り替わって勝敗が表示される。


第2回戦
1試合 盛り蕎麦○ マッスル武田×
2試合 フォーゼ× アカメ○
-試合 一二三四五六七八九〇
3試合 ガウェイン〇 山田太郎×
4試合 マイカ○ バイパー×
-試合 ビッグアップル

第3回戦
-試合 盛り蕎麦
1試合 アカメ 一二三四五六七八九〇

-試合 ガウェイン
2試合 マイカ ビッグアップル


「やっぱお前とか」
「勿論っすけど、本気でやってくるんすよね?」
「当たり前でしょ、じゃないと私が此処に来た意味が無いから」

 そう宣言していると次の試合の開始アナウンスが入るので闘技場の入口に向かい、さくっと転送されて、対面におしゃべり忍者がやってくる。
 いきなり戦闘開始ではないので、前2試合と同じように装備なりスキルなりの準備を整えてから戦闘開始を待つ。当たり前ではあるが、闘技場で消費したアイテムなり装備はその試合限定なので毎試合回復するのは良い仕様。とにかくいつもの装備を整えて準備完了、前試合が魔法特化系の装備だったので次は物理特化の装備に切り替える。外面だけは分からないんだけどな。

『それでは第3回戦1試合目、アカメ選手VS一二三(以下略)選手、試合開始です!』

 どこからか取り出してきたのかゴングの音が響くと共におしゃべり忍者が手裏剣を連射してくるのでこっちも投げ物を飛ばして相殺しながら距離と出方を伺う。
 おしゃべり忍者の奴も遠近両用で戦えるが、どちらかと言えば近が7、遠が3って割合くらいなので、上手くこのまま距離を詰められずに戦えるなら良いんだが、そんな事はなさそうだ。
 弾かれた手裏剣が飛び交い、一つ一つを弾き、火花を散らしている間にも相手の様子をしっかり見ておく。よし、ここだ。
 少し覚悟を決めて片手で手裏剣を落としている途中に腰に提げている拳銃を抜いて一発。ゴウンと大きい音と反動を手に感じるが、しっかり前に飛んでいく。
 勿論それをまともに受けるはずもないので忍者刀を抜いてキィンと甲高い音をさせて弾くわけだが、そういう弾かれるのに対しての対抗策を私がしていないと思っているのか。
 
「うおっ!?」

 片手で軽く払おうとした忍者刀が大きく逸れる。その隙を見逃さずに投げ物ポーチを使っていた手を素早く片手撃ちしていた銃に沿えてしっかりとグリップとグリップ底に手を当てて連射。
 向こうも向こうで軽く切り払えると踏んでいたのが覆されたので、手裏剣を投げるのをやめてしっかりと忍者刀を握って撃ちこむ弾丸を力を込めて弾き始める。

「どうしてこうも近距離職の連中は遠距離攻撃を弾くスキルを持っているかね」
「まあ、ぶっちゃけ闘技場にアカメさんの名前があったから急いで取ったんすけど」

 やだやだ、こうやってすぐに対策してくる奴って……って文句を言ってみた物の、私も結構同じことをしているからあんまし強く言えないか。モンスターが銃を使う訳じゃないけど、遠距離攻撃飛ばしてくるのは結構いるし、対策としては良い判断か。
 
「だとしても、耐えられるかな?」

 チャンバーに含めて装弾8発、そのうち5発撃ちこみ、少しだけ蹈鞴を踏んだ所でもう1丁提げていた銃を抜いて、そのまま投げ付ける。流石にこの動作の意図だったり、どういう理由で投げたか分からないので少し引いた所で脳筋の時と同じように人差し指と中指を揃えて動かす。

「それは遠隔で射撃する奴っすね?」

 案外冷静だった。やられたフリってわけか、やらしいねえ、あのおしゃべり忍者は。
 そうして投げ付けて回転が掛かった銃を警戒してなのか数ステップ下がってしっかり叩き落とす所に合わせて操作から射撃。流石に精度ガン無視での射撃なので当たりはしないが、びっくりはしたろ。
 その隙を見逃さずに残った3発を雑に撃ち切ってすぐに装填、投げ付けた銃からの射撃とこっちからの射撃を警戒させてるので防御に手を回してる今の内よ。

「さーて、びっくりどっきりは此処からだぞ」

 装填を済ませた銃をさっきと同じように投げ付けてから銃剣ライフルを抜いて一気に接近。明らかに不意打ちを仕掛けた所で銃剣を振り下ろし。流石にこのまま攻撃を貰う程忍者も弱い訳じゃないので、しっかり忍者刀で受けて金属音を響かせる。

「やり口が全部わけわかんないっすよ!」

 ぎゃりぎゃりと金属の擦れる音から強く押し返される、当たり前だが普通に力負けするので大きくノックバック、銃剣ライフルを構えなおすところに手裏剣が飛んでくるのでガンシールドで咄嗟に防ぐが何発か食らうのでそのまま後ろに。
 勿論追撃して来ない訳じゃないので、片手で印を組むとどこぞの火球の様に火を噴いてくるのを同じようガンシールドで防ぎつつ、投げ物ポーチからパイプグレネードを探って投げ付ける。当たり前だが火の待ってる所に爆破物を投げ付ければ、すぐに着火するので私とおしゃべりの間で爆発が起こり、その爆風に乗って後ろに下がって距離を取る。

「自爆ってきついわ」

 そのままゴロゴロと転がり、爆発で起きた煙で視界が塞がれるのでトラッカーですぐに相手を補足したうえで前方に投げた銃を操作して遠距離攻撃。銃声が二度鳴って、相手の体勢がぐらついたのを見た所で銃剣突撃。一気に近づいて捻りを加えて胴体に1発……と思ったのだが、変わり身で回避。それにしても今時古風な丸太に変わり身ってどうなんだ。

「変わり身回避、強すぎると思うんだが?」
「いやー、十分っすよ?」

 斜め後ろ辺りから声が聞こえるので丸太から銃剣の先を引き抜くのと同時に振り抜き。びゅんっと煙を晴らしながら斬りつけるが、手ごたえ無し。

「やっぱり自分も負けるのは嫌っす」

 声がして攻撃した方向少し奥にいるのと、左右にもう1人ずつ同じおしゃべり忍者がいる。分身体はトラッカーでも認知できないのは初見だわ。って言うかそもそもこの状態はあいつのフィニッシュムーブだから非常にヤバい。

「もう勝負賭けてきたか」

 すぐさま投げ物ポーチからフラッシュバンを手に取って投げ……る前に詰められて、斬撃、忍術、手裏剣の三種攻撃が飛んでくるので必死こいて防御に回って耐えつつフラッシュバンをとにかく転がしてから投げておいた銃を手元に戻しつつフラッシュバンに発砲。ああ、くそ、MP消費がきつい、さっさと片付けないとジリ貧ではなく普通に負ける。

「うわ、眩しっ!?」

 出してもフラッシュ、スモーク、グレネードが分からないって所良い所よな。
 そのまま銃の操作をして斬撃で接近してきたのと、手裏剣を投げてきたのにもう1発ずつ発砲して、本体かどうかの確認。斬撃かましてきた奴が本体で後ろ2人が分身なので、思いっきり体をぶつけ、銃剣ライフルをおしゃべり忍者の背中に回してからぐっと引き寄せ逃げられない様に。

「なりふり構ってられんわ、お前とガチるの」
「何するつもりっすか!」

 銃撃1発で分身1人消しているので、後はもう1人の方から攻撃を受けない様に本体を壁にしつつ、拳銃2丁を操作して手元に引き寄せ、おしゃべり忍者にびったり銃口を付けて外れない様に。

「こんな事なら質量弾にするんじゃなかったよ」

 マガジンに残っているすべての弾を零距離発射でおしゃべり忍者に。
 そして全部撃ち切ると共にMPも全部空になるのでがちゃんと音を立てて飛ばしていた銃も落ち、残りは銃剣ライフルのみ……だが。

「まだ、終わってないっすよ!」

 拘束を外し、私の体を足場にしてジャンプするおしゃべり忍者を視線で追いつつ、素早くライフルを構える、所に残っていた分身の手裏剣を受けて狙いが逸れる。
 
「最後っす、これで仕留めるっす!」
「やってみろ、このおしゃべり野郎が!」

 このままどうせ撃てないというのなら、と銃剣ライフルすら思い切り横に投げジャンプ狩り。銃剣部分がしっかり当たる訳じゃないので、腹に銃身部分が当たるが特に大したダメージは出ない。だからこそ温存していた最後のびっくりどっきり武器。

「そのうるせえ口を閉じとけ!」

 大したダメージは出ないが少し反応が遅れたおしゃべり忍者に向け、インベントリからペッパーボックスを取り出して抜き撃ち。6発同時斉射の一撃を追撃がもろに入ったのを見て、さらにたじろいでいる所に思いっきり走り、近づいて。

「そろそろ倒れろぉ!」

 そのままおしゃべり忍者の顔面に向かって飛び、膝を入れて押し込む。もうやれる手は肉弾戦しかないが、このまま押し切ってぶっ殺す。

「そろそろ、くたばれぇ!!」

 入った膝の感触を受けながら、体を捻って更に膝を押し込んで吹っ飛ばす。
 こんなにも肉弾戦してくると思ってなかったのか、直撃したうえに不意打ちだったのもあってもろに入ってそのままごろごろと転がっていく。
 着地と共に投げ付けた銃剣ライフルを拾い、しゃがんだまま吹っ飛ばしたおしゃべり忍者の方に向けて雑に連射。5発しか入らないがそんな事はどうでもいい。全部撃ち切りチャキンと音を立ててクリップを飛ばしながらすぐに次の5発を入れ直し……するとともに。

『ここで一二三選手ダウーン!猛攻に耐えきれなかったのか、起き上がれない!』

 そういえば実況なんてされてたっけか。
 ふうふうと荒い息を整えつつ、構えたまま倒れているおしゃべり忍者をじっと見たまま暫くそのまま。

『決着ぅ!第3回戦1試合、アカメ選手の勝利ぃ!』

 そのアナウンスを聞いて一気に疲れが流れてきた、ぶはっと大きく吐き出して銃剣ライフルを落としてその場で座り込む。
 あと2回だ、あと2回。
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