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15章

380話 ステゴロ

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 ただただ厄介な相手って、本当にやりにくい。
 最初の殴り合いを素直に受けた私も私だが、とにかく相手をしていてやりにくい。私自身はそこまで近づく事はしないが向こうは隙あらば接近してきてブレスや何やらよく分からん変な範囲攻撃を振ってきたりするうえに、距離を取ったらとったで遠距離攻撃で反撃してくる。
 魔法職って基本的に耐久面で難があるからよほどの事じゃないかぎり接近戦をしないと思っていたけど、どっちも対応しているってのは単純に強い。ポンコツの奴が相手次第ってのを抜きにして、強いって言われる理由は遠近両用で立ち回れるって部分が大きいからになる。めんどくさすぎるわ、マジで。

「厄介すぎてムカつく」
「そんなに褒めても攻撃しか出さないわよ」

 この感じも私そっくりでなおの事腹立つわ。つまるところ私の相手をしていると大体こういう感じの感想を抱くって事か。今まで相手していた連中よ、ちょっと申し訳なかった、これからはもっときついから覚悟しておけよ。

「それにしても貴女、大分タフね、結構本気なのだけど」
「軽く倒せたら楽しめないだろ」

 会話をしながらお互い回復と補充をして一息入れる。此処まで魔法と銃の撃ち合いをしていたのもあって、なかなかの長期戦だ。こっちはMPを使う行動を少なくしているのでHPの方だけが問題だが、向こうは向こうでまだまだ余裕だって顔をしているので油断は出来ない。

「結構弱らせてるのに、そこまで動けるの初めて見たわ」
「その台詞、そっくりそのまま返すわ」
「でも、まあ……私が勝つのだけど?」

 そう言うと共にまたブレス攻撃をしてくるのでそれを避け、すぐさま銃剣ライフルを構えて反撃……するにもやけに動作が鈍い。別に状態異常にかかっている訳でもないのに、こんな事が起こりうるのか?ここの運営ならそういう何かの異常が出たら警告が出るってのに。
 とにかく重たいライフルを構えて一発、さっきより大きい反動で銃が暴れたせいで狙いも定まらない。試合開始からの疲弊か?いや、そんな機能はないからあいつがなにかを仕掛けてきてるはずなんだが……そう思案している最中にも攻撃は飛んでくる。
 ずっと戦っている割に殆ど初見って魔法が飛んでこないのはやらしい。こっちはこっちで飛んでくる魔法を対魔法用のガンシールドで防いでどうにかこうにか凌いでいるばかりだというのに。大体なんだよ、目からビーム発射したり、手のひらから水圧の掛かって水を出したり、バリエーションが豊富すぎる。結構ガリガリ使いまくってるせいでガンシールドもそろそろ限界だし、この辺りで勝負を掛けないと負ける。
 兎に角現状、何をされたか分からないが、重量がきつい銃剣ライフルを持つのは厳しい、多分この状態なら腰に提げている拳銃も反動が抑制出来ない。ペッパーボックスは不意打ちの一発ぽっきりのびっくり装備だからこの試合じゃ使えない、なんだったら装填するのに結構手間が掛かる。

「こんな所で出したくなかったってのに、仕方がない」

 とりあえずのスモークグレネードで相手の視界を防いでからインベントリに突っ込んでおいた忍者刀を引っ張り出して銃剣ライフルと交換しつつ、腰に提げている拳銃と同じものを銃剣ライフルの代わりに取り出しこれも同じように腰に提げて、ちょっとした装備変更。何て事していれば風魔法のような物で煙をあっという間に晴らされる。あの手この手で反撃してきおって、厄介すぎる。

「あら、装い変わった?」
「少しだけ、な」

 スラっと忍者刀を抜いて片手で構えながら一気に接近。さっきまで遠距離攻撃主体で殴り合っていたので少し相手が驚いたのでその隙を見逃さずに攻撃。思い切り胴斬りしたがやはり硬い音をさせてからばらばらと殻が落ちてくる。
 とは言え、もうこっちは接近戦で行くって決めてるので、お構いなしに攻撃を続けて相手の魔法を出させないようにさせながらかなりのごり押し。向こうも向こうで防御魔法か分からないがどうにかこうにか堪えてくるのでまあ大変。ばらばらと殻ばかり落としてくる。

「もう、やめなさいよ!」

 そう言うと、辺りを吹っ飛ばすようにまた大きく風を起こしてくるので後ろに軽く吹っ飛ぶ。ただそれを足と尻尾で堪えて耐えつつ、苦無と手裏剣の投げ物コンボで追撃。さっきと同じように殻で阻まれると思っていたら最初の数発は普通に刺さってダメージが入るが、すぐに硬い音をさせて弾かれるようになる。
 
「このまま素直に負けてくれりゃやめてやるさ」

 投げ物ポーチから片手で4本、4枚投げ物を出しては投げ付け、その場に釘付けと少しだけ分かった攻略方法を試しながらまた接近して一発。この間にも礫や炎、水、風、色々な物を飛ばしてくるので中々のダメージを受けてガンシールドもひしゃげて、忍者刀もボロボロになったが最初に殴り合いした距離にまで近づいて折れるんじゃないかって勢いで殴りまくる、が、反撃の一発を貰うと忍者刀が折れ、また距離を取らせられる。
 って言うか忍者刀自体の振りも遅いし、結構がんがん殴ってるのに全然ダメージが入っていかない。あれもこれもあのブレスからだよな。

「……状態異常じゃなくてただのデバフ効果か」
「あら、ばれちゃった?」

 どちらかと言えば攻撃力、防御力の総合数値から割合なり、決まった数値を下げるものは知っていたがステータスに干渉してくる魔法ってのは初めてだ。だったらあの銃の反動が抑えられないのや振りが遅くなったってのに説明は付く。
 
「ステータス下げればいい勝負になったでしょ?」
「ネタはばれたし、決着付けるぞ」

 からんと中途半端になった長さ音の忍者刀を投げてから煙草に火を付け、拳を見せる。

「本気?」
「もう手しか残ってねえよ」

 落とされたステータスで銃を使うにもまともに当たる気がしないし、さっきの攻撃で向こうもMPがほぼない感じもあったので、この交渉は賭けに近い。

「もうMP無いんだろ、どっちも絞り切った後だし、いい勝負じゃないか」
「良いわ、乗った」

 同じように煙草に火を付けて、2人揃って一服した後に地面に煙草を置いてから最初と同じように2人並んで殴り合い開始。流石にもう引く事も出来ないのでどっちかが倒れれば勝ちって状況だ。
 こうなってくるともう意地の張り合いだが、ゲームには根性なんてステータスは無いので先にHPが尽きたら負け、何ともわかりやすい。そしてやけにリアルな音をする殴り合いを始めて数発目。

「……後一発ね」
「こっちもあと一発だ」

 ぜいぜいと荒い息を吐き出しながら相手をじっと見て右拳を握ってじっと見つめる。

「倒れ、ろぉ!」
「死ねぇ!」

 同時に右拳を振り抜いて相手の顔面に拳をめり込ませる。
 
『第2回戦第2試合、勝者は……』
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