最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

文字の大きさ
394 / 625
14章

366話 着火

しおりを挟む
 向こうで手を出すなと言っている十兵衛を見ながら煙草を味わいつつ所作を見据え続ける。抗争クエストの最中ではあるが、こういうプレイヤー同士の戦闘になると一応ケリがつくまでNPCは無視してくれるのはシステム的な問題なんだろう。ありがたいのかありがたくないのかは別として。

「一服は済んだか?」
「まあね」

 吸い切った煙草をぷっと吐き捨てて、べこべこになったガンシールド、THを手に取って一息つける。そういえばこうしてガチで戦うのって初めてだっけか。レースイベントは乗物ありきだったし、こういう機会じゃないと戦う事がない。
 
「こうしてちゃんと戦うのは初めてだったな……一ヶ月ちょっとの付き合いだってのに」
「そりゃ、対人じゃないからこのゲーム」

 槍、そうそう、酒ばっかり作ってるから忘れてたけど、ランサーなんだよな。大体2m弱くらいの長さの槍をびゅんびゅん振るうのだが、よくもまあできるな。それにしたってどうしてこうもうちのクラン員ってこんなに強い奴が多いかな。
 
「そっちは一杯やらなくて良いのか」
「勝ってから楽しむとするよ」

 そう言うとぴしっと槍を構えてじりじりと近づいてくる。
 バイオレットは一気に近づいてがんがん攻撃してくるタイプの相手だったが、十兵衛の奴はじっくり戦うタイプか。結構歳だって言ってたのもあって攻め方がいぶし銀。こっちもこっちでいつもの様にガンシールドを構えてTHで狙いを付け、開幕ともいえる1発。
 「しっ」と細かい息を吐き出すと共に銃弾の先に合わせて槍で一突き。空気が割けるような音と共に銃弾がはじけ飛ぶ、おいおい、幾ら鉛弾で柔らかいとは言えはじけ飛ぶってどういう事なんだ。って言うか何であいつも銃弾を落とせるんだ。

「何でこうも私の近くにいる奴は遠距離対策してるかなあ」
「自分のせいだと分かってないのか」

 そもそも遠距離攻撃してくるモンスターってそんなにいないし、連射もしてこない訳だろ?モンスター相手や対魔法相手にしても過剰な精度の防御力だろうに。

「闘技場には基本出ないんだから取る意味あるんか、それ」
「いつか出ると信じていたんだが?」

 2発目、3発目は槍先を振るってすぱすぱと斬り落とす。さっきも見たぞ、その光景。

「素直に酒造してなさいよ、全く」
「それはあくまでも趣味だからな」

 小走りで近づいてくるのでそれを迎撃、残っている2、3発目を撃つが踏み込むと同時にすぱっと斬り落としてくる。ここまでしっかり迎撃されると自信無くしてくるな。この銃、結構あれこれ考えて作ったってのに通用しないって中々心折れるわ。今度は銃弾側の方を改良して斬られても大丈夫なようにしてやろう、まったく。

「気軽にスキルや装備を更新したいわ!」

 そんな愚痴を吐きながらガンシールドを構えた状態で片手で装填。その間に十兵衛との距離が目測5mくらいの所で急に動き出す。十兵衛の奴がいきなり大きく踏みしめる一歩を出すとガンシールドを構えていた腕が弾かれる。所謂飛ぶ斬撃の応用かと思っていたけど違うな、多分べらぼうに強くて速い突きだ。
 このゲームっていちいちスキル名を叫んで発動って事が無いから、何を使ってるかってのが分からんのよね。って言うか、わざわざ相手を倒すって時に「これからこの技を使います!」って宣言するのは間抜けすぎる。私だったらいちいち「装填!」って言う事になるんかって話よ。

 とにかく弾かれた腕をすぐに引き戻して一呼吸、少しだけ腰を落とし、ガンシールドを胸に密着するようにして弾かれない様に注意し、連続突き警戒。懸念材料としてはさんざん殴られてべこべこの状態になっているガンシールドがどこまで耐えられるのかって所か。

「儂だってそんなに更新している訳じゃないぞ」

 余計な事考えてたせいで装填忘れてた。そんな事をふと思っていると腕と体に衝撃が走り、後ろに軽く吹っ飛ばされ、視界が明滅する。胸元にシールド構えていたのが仇になったか?高レベル帯の槍使いの攻撃速度頭おかしいな。

「ぐあっ!?」
「ほう、耐えるか……結構本気だったんだが」
「ギリギリに決まってんだろ、馬鹿が」

 後ろに飛ばされたおかげで距離が取れたので装填をし、ガンシールドの方をちらっと確認。駄目だ、穴開いてるわ。

「バイオレットの奴でも壊せなかったってのに、マジかよ」
「先が鋭い程、槍ってのは強いだろう?」

 先の鋭い物を指で押したりすると痛いあれか。銃弾の先も鋭くしてみたらもっと威力が上がるかもしれんな、そういえば試作しただけで使ってない貫通弾どこやったっけか。
 なんて事を思っていたら一定距離を保って正確にこっちに攻撃してくるので、それを穴開きガンシールドで何とか防ぎ、HPポーションを飲みリカバリーを挟みながら何度も突いてくる攻撃を後ろに下がりつつ、少しでも威力を減らしていく。
 何度も撃てるような状況ではあるんだが、上手いのが照準を定めさせない様に細かく攻撃して来たり、距離を取った時には威力があまりないが伸びる攻撃でこっちを小突いてくる。ああ、小賢しい。

「私のメタが多すぎるんだよ、もお!」
「癇癪か」
「ああー、一個決めた、絶対決めた」
「何だ、勝ち方か」

 そんな事よりもだよ、私がここに来て「甘く」なっている事に気が付いた。私に対するメタって訳じゃないだろうけど、普通の飛び道具や魔法に対してあんなに正確に防御スキルがあるのは確実に過剰だろ。

「このイベントでぼろ負けしたら、ソロクランにする」
「……どういうことだ」
「あんた達におんぶにだっこで甘くなってる私が許せなくなってきた」

 会話をしながら一旦大きくバックステップで離れて相手の射程圏内から出ると共にTHで3連射。流石の槍捌きでびゅんびゅんと風切り音と共に銃弾を落とされるが、それは知っているのですぐに装填を済ませ追撃し、ここでTHではなく鳳仙花と交換。

「クラン解体するには惜しいほどに揃ってるだろう?」
「元々商人クランの連中を倒すために立てたもんだしな、全員辞めて貰って施設だけ開放するわ」
「本気か?」

 3発斬り落として体勢を整えた所で鳳仙花で1発追撃。流石に槍で散弾貰うのは厳しいのか槍を回転させて弾き飛ばすが、子弾が何発か当たって少しだけよろめく。その隙を見逃さず、残った1発も撃ち切ってすぐに中折して排莢。流石に2発もショットガンの攻撃は捌ききれないのでしっかり防御して攻撃を受ける。

「闘技場の連中も、レース場の連中も、イベントに参加している連中も全部ねじ伏せるためにも、微温湯に浸かる訳にはいけないんだろ」
「なるほど……だったら此処で勝ちを譲る……何て事をしても嬉しがらないか」
「よく分かってんじゃないの」

 撃ち切った鳳仙花の装填を済ませ、ガンベルトの間に差し込んでからランペイジを出し、もう盾として機能しなくなったガンシールドも仕舞っておく。

「チェル、ももえ、バイオレット、十兵衛、あんた達と戦ってよくわかった」

 投げ物ポーチから手裏剣の連打をしながら相手の射程圏内を見極めつつ、ランペイジを構えては下ろしてのフェイントを掛けて揺さぶりを促す。
 替えのマガジンは持ってきていないので中に入ってる弾を撃ち切ったらそれで終わりだが、ここも甘えだな。新しい銃さえあればどうにかなるだろうって慢心が招いた結果だ。こういう甘えが私の弱さに繋がってるんだ。

「私は弱い!現状に満足して弱くなった!」

 投げ物を嫌がって軽く後ろに下がった所でフラッシュバンを投げ付ける。流石に何回も使ったのもあって対抗策としてしっかり視界を防ぐようにしているが、持続するしないにかかわらずどうしても視界を防がざるを得ない。
 
「だからこそお前らと決別しなきゃならんのよ!」

 インベントリからスモークグレネードを回転させながら投げ付けると共に、ランペイジのマガジンを抜いて、すぐさまそれも投げ付ける。

「これから全員叩きのめしてやる!!」

 白煙が上がると共にトラッカーを使い、投げた勢いのまま一回転。もう一度十兵衛の奴に向き直るタイミングでマガジンを持っていた手に込めた魔法を発動。
 
「吹っ飛べやぁ!!」

 炎の燃え盛る轟音を発している火球を投げ飛ばしてマガジンに当てると、銃声が響くのに合わせて炸裂音が同時に起こる。
 
『斎藤!車!』
『調達した、今行く』

 ごうごうと燃え盛り、黒煙を上げている所、びゅんと何かが一閃、ちらりと見えたその何かを咄嗟にガンシールドを装備していた腕の方で反射的に受けてしまい、余計なダメージを貰う。

「ちっ、浅かったか」
「この程度でくたばったとは思ってなかったよ」

 攻撃を貰った方の腕をぷらつかせつつ、鳳仙花を抜いて回転リロード。こんな事ならショートバレル化しとけば良かった。その間にびゅんびゅんと槍を振るって当たりの視界を晴らしつつ此方にやって来るので鳳仙花での時間差射撃で足止めと攻撃。いい加減水平2連じゃなくてポンプかマガジン式のショットガンも作んねえと。

「やはり意外性含めて厄介な奴だよ、お前は」
「その台詞も何度も聞いたわ!」

 槍の突き攻撃を後ろに飛びながら回避、と合わせて射撃してちょっとした加速。
 そのまま尻餅……ではなく、車の後部座席にぼすんと。

「ナイスタイミング」
「じゃろう?」
「逃げるのか!」
「いいや、私の勝ちさ」

 クエスト終了の画面、しかも私の陣営が勝利したというのを見せながらにぃーっと口角を上げて笑う。

「十兵衛殿には悪いが、お暇させてもらおうか」

 助手席に乗っていた児雷也が印を組むと共に辺りが霧に包まれ始める。どうだ煙より晴らしにくいだろう。こういうスキルもあるんだったらもっと先に行ってほしかったってのはあったが……とにかくこのまま離脱して追撃もされないうちにさっさとその場を離れ勝ち逃げをする。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...