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14章

357話 イベント恒例の相手

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 新しくかっぱらった車に乗り、3人で移動中。
 最初は車盗んで移動するのに抵抗があったし、警察NPCに追い掛け回されるのにも少し不安を感じていたが、人間何回かやったら慣れるもので、今ではうざったいってくらいにしか感じない。

「それで、他勢力は?」
「うむ、大きく5つあって、パワーバランスは今の所は均等、クエストの達成有無により押し引き……と言った感じだ」
「陣取り合戦するゲームなんてものもあったのう」
「そう、基本はそれらしい」

 助手席でいつものようにメモ帳を開きながらその話を纏める。こういうのばっかりやっている気がするな、私は。

「一回でどれくらいでなんだろねー……通常マップで稼ぎもしたいし、具体的なイベント内容出てたっけ」
「出てたじゃろ?期間は2週間程で、通常のマップとイベントマップを切り替える事が可能ってのう?」
「いつから開始くらいしか見てなかった」

 あれこれ準備して何かをする事が多いけど、そこまで大事じゃない物って目が滑るんだよ。だからイベント開始くらいしか気にしていなかったてのもある。と言っても、当たり前だがイベントに合わせて新しい銃を創ったり、ガンナーギルドのNPC好感度を上げてみたり、色々と手を尽くしたのは事実。
 惜しいのは此処までしっかり作った銃を誰にも見せていない上に、トカゲにすら「秘密」と言ってパーツだけ作らせた所か。
 
「5勢力だが……ノルテ、イステ、オステ、サウテ、セントラと街があって、拙者らはノルテという地名の所に所属している」
「なんとなーく、分かりやすい名前になってるわね」

 東西南北中央って意味だろう。うん、まあ分かりやすいってのはかなり大事な事だ。物凄く凝った名前を付けたり長い名前を付けた所で、大体は略されて言われる。分かりやすさってのは本当に大事。重要な事だから二回言う位には。

「後は最低の街とか俗称が別にあるって感じ?」
「うむ、その通り」
「よく調べたもんじゃな」
「それは思った、どういう事してきたん」

 ふふんと少し得意げな顔をしながらメモ帳を開きつつ、解説タイム。

「まずはクラン会話フレンド会話から参加しているかどうかを確認、メッセージは封鎖されていなかったからそこも使い、どこにいてどういう感じかを聞きだした」
「結構しっかり情報集めてた」
「うむ、其れと合わせてマップの境界線を一般人を装い移動し、プレイヤーから直接話も聞いた」

 話を聞くほど、この忍者がしっかり諜報としての忍者をしていることがよくわかる。おしゃべり忍者のやつはどっちかっていうと忍者大戦的な、派手に忍術ぶっぱして戦う方なので、系統が違う。何か違うなーって違和感があったのだが、此処で確信したわ、こいつ圧倒的に地味だ。拙者と言ったり、動きのあるような事をしているんだけど、何から何まで地味なのよ。
 車から1人離脱する時も、ムササビの術?なのか風呂敷を広げてブレーキをかけてすたっと着地していたわけだが、うん、やる事は派手に見えるがやっていることは凄い地味なんだ。でもまあ、地盤を固めるとか、足元からって考えているのならいいプレイヤーか。

「それで、名前以外に分かった事は」
「そうじゃの、そこは大事じゃ」
「まずプレイヤー同士は基本的にどの勢力にいるかは分からん、プレイヤー同士のクエストが発生した場合に、ようやく分かると言った形だ」

 これはさっき追いかけられていた時の話だからだろうなって感じ。ただ他勢力には会話ではなくメッセージしか送れないって事はその辺りの情報戦的な事もあるんだろうか。

「それとクエストの発生基点はあくまでもNPC相手の物で、そこから派生して他勢力の追撃などがメインらしい」
「さっきやったのと概ね変わらぬな」
「勢力図が変わるのはまずNPC相手で、それが成立するかは追撃を逃げられるかどうか……ってとこか」

 後部座席で「その通り」と返事をして満足そうにしている。私と爺だけじゃとりあえず暴れまわって走り回って終わっていた可能性はかなり高い。って言うか、それだけだったな。

「そうなってくると、近場で敵対勢力の相手がNPC相手のクエストを成功させると、私達も追撃戦になるか」
「おぬしら、飛び道具は?」
「拙者、一応打剣は持っておる」
「私は当たり前だけど銃器だけど、何で?」

 そういうと、少し加速し始め、前を見ろと言う様に合図される。なるほど、追撃戦は突発的に発生するから、いきなり表示が出てくるのか。
 そんな事を確認していたら目の前でバタバタと建物から出てきたプレイヤーが4人。足でもある車をが近くにないらしいので必死こいて走っているのが見える。

「なるほど、追撃戦がイコール防衛戦になるわけだ」
「やるかえ?」
「拙者はいつでも」
「それじゃあ、まあ、潰しに行こうか」

 外に紫煙を流していた葉巻を咥え、大きく吸って紫煙を吐きだしてから、葉巻をぷっと吐き捨ててからTHを取り出して準備する。




「いけいけいけ!」
「車どこに止めたのよ!」
「あっちだったかなー」
「もう追手が来ますよ」

 4人それぞれがぎゃーぎゃーと騒いでいるのが走っている車の中からでもよくわかる。最近ゲームと仕事ばっかりで走ってないな、たまにはリアルで運動でもするか。

「このまま進行方向上に車を回すかの?」
「つーか爺って何が出来るんだ」
「ライダーは何かに乗ってさえいればどうにでもなるんじゃよ」
「では悪魔殿と拙者が下りて白兵戦と行こう」

 そうして騒いでいる4人の先に車をドリフトからの停車、新しい葉巻を咥えつつ、弾を詰め直してランペイジを構えて走ってきた4人の目の前に立ちふさがる。

「月並みだが、踊って貰おうか」

 じゃきっと構えてギザ歯を見せる笑みを浮かべ、狼狽えている4人に向けて掃射を開始。いきなり攻撃してきたのに慌てて騒ぎながら近くにある遮蔽物に隠れるので撃ち切るまで続けるが、これ本当にあたんないな。暴れるって意味の通り、派手だけど命中精度はポンコツだわ。代わりに派手に鳴るから、慌ててくれるのは良い所だが。

『横からちょっかい掛けれる?』
『うむ、任されよう』
『儂は近くで逃げ道を塞ぐかの』

 このある程度勝手に判断してやってくれるってのは良い所。
 撃ち切ったランペイジをインベントリに放り込み、THを構えつつ、一定の距離まで近づいてからクロスファイアになるように、横と前で封鎖を掛ける。

「ああ、もう、どうするんだよ、いまの!」
「横、横から来てるって!」
「やばいなあー」
「なるほど、そういう事ですか……」

 おっと、1人飛び出してきた。種族はよくわからんけど、盾持ちでしっかり遮蔽作ってくるのは偉い。

「んー……盾持ちって相性悪いのよね、私」

 THで2発撃ちこむと、金属のぶつかる音、跳ねる音をさせて、一旦突っ込んでくる足を止めさせることが出来る。

「知ってますよ、相性悪いのは」
「またガチガチになってるやんけ」

 イベントの時は大体会うんだよなあ、こいつ。相変わらず小さい奴だ、まったく。

「可愛い顔してえげつない耐久してるしめんどくさいんだよな、お前の相手って」
「凶悪な顔してそのまま凶悪な攻撃してくる人に比べればマシじゃないですか」

 お、ちょっとは言う様になったじゃんか。
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