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14章

355話 ちょっとした小競り合い

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 この手のゲーム内容のカーチェイスってもろに運転手の腕前が左右される。たまーにあるのは、速い車ほど良いと思ったらハンドリングがスムーズ過ぎて結果的に運転がしにくくて色んな所にぶつけまくって結果遅くなるってのはあるな。

『さて問題です、後ろの連中からどうやって逃げたら良いでしょうか、さ、みんなで考えよう』
『後ろの連中を倒す、運転で巻く、くらいかの』
『追われているのか』

 走行中に会話の聞き漏らしがあると嫌なので、パーティ会話をしつつ、後ろの追ってくる連中をちらりと確認。前に2人、後ろに1人見えるので、このイベントが開始した時に組んだ状態のPTって所だな。

『良いとこ、他の勢力の奴を倒せ、なんて突発クエストの対象になったか』
『いい迷惑じゃのう』
『ま、私としては良いけどさ』

 持ってきたランペイジをインベントリから出して残弾確認。勿論だけどマガジンの予備はないので撃ち切ったらそれで終わる。リボルバータイプの銃をメインにしている時の弊害で、あんまりマガジンを用意しないし作らないんだよな。どっちかって言うとトカゲやポンコツの方が使っている。ただやっぱり浪漫があるのはリボルバーの回転弾倉なんだよなあ。

 とりあえずチャリチャリとリボルバーに弾を込めつつ、どうするかを考える。虎の子ってわけじゃないのだが、フラッシュバンはないし、投げ物はあんまり今日は持っていない。

『振り切れそう?』
『中々いい腕しておる、撃退しないと難しいのう』
『タイヤ狙うってフィクションよねえ……やってはみるけど』

 後部座席から上半身を乗り出して、後ろにいる追跡してくる車に向かってばりばりと撃ちまくる。レートは速いのであっという間に撃ち切るのだが、流石に遠距離攻撃のうえで反撃されるとは思っていなかったのか、多少蛇行するが、すぐに立て直して加速して追従してくる。

『ほー、やっぱいい腕してるわねぇ』

 怯んでそのままスリップしてくれりゃ良かったのに、これはもうちょっと手を考えないといけない。とりあえず撃ち切ったマシンガンをぺいっとインベントリに放りこんでTHを取り出して狙いを付ける。

「それにしたって、血気盛んな奴が多いこって」

 適当に狙い3射。さっきよりも威力が高いのでフロントガラスがあっさりと貫通して、向こうで慌ただしくなっている声が響く……当たったと思ったんだが、固定ダメージが入ってないぽい?流石に強すぎるから細かいところで修正してるか?

「うーん、肉入りだと弱体化補正が掛かるか」

 一旦中に入って空薬莢をぱらぱらと落とし、次の弾をガンベルトから抜いて手間をかけて装填。その間に距離を詰められると、トランクの部分が魔法で吹っ飛ばされ、道路に転がっていく。

『あんまり何度も喰らうと不味いのう』
『リアガラスは今ので吹っ飛んだしな』

 衝撃でバリバリになってしまったガラスを叩いてべろっと剥がし、後部座席から頭が出ない様に深く座って呼吸を整える。別にシステム的に必要かどうかって言われると必要のない物なのだが、止めてる方が当たる気がしてるってだけだ。

『うーん、追いかけてくるだけで派手に攻撃してくるって事はあんましないな』
『このゲームで遠距離攻撃ってのは少ないじゃろ?』
『魔法職って人口多いじゃん?』

 何て事を言っていればまた一つ魔法攻撃が車に当たり、次はこっちの車が蛇行する。それをなんとか制御しつつ、タイヤの擦れる音を響かせてる中、突っ込んでくる後ろの奴らにまた3射。こっちの威力を知っているのもあるので撃たれるとまあ向こうが思い切り蛇行する。やだ、なかなか面白いじゃないの。

『このまま連射して牽制してたらいけそうかな』
『車の耐久も結構落ちてるからのう、決着をつけるなら早く頼む』
『分かってるって』

 撃つ、怯む、その間に装填する、して、また撃ちを繰り返しているのだが、中々向こうを倒すことも出来ないし、なんだったらちょっとした膠着状態にもなっている。

「たまにでかい魔法は飛んでくるけど、何かやな感じねえ」

 ふーむ、と言いながら様子を伺っているのだが、急に加速すると共に横に付けてくる。
 どれ、どんな奴がいるのか……って思いったいたら、がっつりと銃口がこっちに向いているのでぞっとする。しかもちょっと見たことあるやつだし運転席の爺に向かって大きく叫ぶ。

「ブレーキ!」

 と、言うと共に、がっつり急ブレーキされて、助手席の所に自分の体を一回ぶつけるが、一気にばら撒かれた銃弾は回避でき、隣の射線あった建物がハチの巣の様に穴が開いていく。

「そういう事かよ」

 どっかで見た事ある銃だが、確信した。後ろに乗っているのはトカゲの野郎だ。あいつもガトリングがついに手回しじゃなくなったと言っていたし、絶対そうだろ。一応量産したから売り始めたって話も聞いたけど、あんなの使ってるのはトカゲしか知らん。

「今のはやばいのう……あんなのまともに食らうとこの車じゃ耐えられぬ」

 前の方に銃口出して撃って来ない辺り、結構でかい銃で取り回しが悪いって事だ。このゲームのガトリングって小型化するのが難しいはずだし、そもそも流通しているのは手回しのあのサイズだから横に無理やり並んでぶっ放したって事なのはわかる。それにしたってあんなのを使って闘技場で戦っていたトカゲってかなり頭悪いわ、火力ぶっぱしまくってるだけだし。

「此処で一気にUターンして、引き離せない?」
「きっかけをくれたらいける」
「タイミングは任せる」

 後部座席から相手の車の方へ上半身を出し、お決まりの3射から装填スキル。銃を回転させ、空薬莢を飛ばし、3発分同時にガンベルトから抜き出して同時に込めるとすぐに元に戻す。
 
「そろそろ、しつこいわ!」

 右腕を銃の支えにしたうえでそのままがっちりと自分で自分を締める様にホールド。タイヤを狙って三度撃ちをかますと一発が掠ってパンクさせることに成功する。勿論急に精度を失ったのでふらふらとし始めるが、何とか堪えて付いてくるのを口笛一つ鳴らして感心する。

「根性は認めるけど、相手はが悪いな」

 そのタイミングで急ブレーキからのUターンをするというので素早く上半身を引っ込めると共に、座席の下で自分が吹っ飛ばない様にすると、言葉通りに回り、また加速。
 追従してきていた相手の車も同じようにするのだが、パンクしたタイヤ1本あるだけでまともに動けるはずもなく、きゅきゅきゅっとタイヤが跳ね、地面と擦れる音をさせて停車するが、がっつりと後部座席からこっちが見える状況に。勿論中身がやられた訳ではないので、反撃してくるに決まってる。
 向こうが完全に停車し、逃げ始めたこっちの後部座席へと掃射。バリバリガシャガシャと金属音が響くと共に、こっちもこっちで蛇行して回避行動をするが、何発か貫通、直撃してHPが削られる。

「固定ダメはないけど、威力たっかあ……!」

 2、3発食らっただけで4割ちょい削られたので固定ダメージは攻撃力換算されたっぽい。とは言え、まだ走行が出来るので加速してその場を後にする。





「もう限界じゃの、この車も」
「そりゃ、ハチの巣だし」

 相手の車が見えなくなり、暫く走っていると煙が上り、徐々に失速し、ついには停車。爆発って可能性もあるのでさっさと二人で降りて、スクラップになった車に合掌。見知らぬNPCからかっぱらった割にはしっかり働いてくれた。

『よう、うちの構成員を助けてくれたみたいだな、また何かあれば頼むわ』

 こういう時のNPCの依頼達成のメッセージって結構イラっとするわ。
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