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13章

347話 技術革新

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 このゲームにおける産業革命的な事を何度もしてきたわけだけど、そのたびにそれなりな達成感が味わえるのって中々いいかも。と、言っても何にも進展が無いと言えば無いのだが。
 
「型作るって言ったじゃん」
「まずは合金を作ってからだろ、型はニーナに頼んでるからそのうち来るって」
「ねー、わたしいらんくない?」

 作業台の横で退屈そうにしているポンコツを眺めつつ、トカゲがあれこれ考えて合金を作ろうとしている。リアルだったら鉄何パーセントに対してクロムを何パーセント見たいな風に厳密化しているから、それに倣ってどうにかこうにか少ない量であれこれ試行錯誤している。

「試せばいいじゃん、もー……しくってもボスが取ってきてくれるって」
「試作できるくらいにはとってきてやったろ」

 私とポンコツ二人でトカゲにやんややんやとガヤを飛ばしつつ、唸っているトカゲの様子を楽しむ。それにしたってそんなに考えて試さなくてもいいと思うんだが、思い切りがないなあ。

「馬鹿、だからって無駄にするような事は出来んだろ、わざわざ取って来てもらって数があるからがんがん使うってのもだな……」
「私が良いって言ってんだからやりなさいよ、ダメならポンコツに取らせに行く」
「んぇ!?やだよぉ、あの雪山攻略難度高いもん」
「私がソロで行けるんだし余裕だろ、マップにダンジョンの場所も分かるようになったしな」

 唸りつつ組み合わせの配合量を考えているので共有ボックスからクロムと鉄を取り出して自分の窯を出して適当に放り込む。組み合わせ的には鉄2のクロム1で明らかにクロムの量が多い気がするけど、ゲームだから細かい所は気にしない……って思ったけど、火薬作る時にはめっちゃ厳密化してたな。あの時は失敗したくないって気持ちが強かったからなあ。

「ああ、おま、一応レアメタルなんだから慎重に使えよ!」
「私が取ってきたんだからいーんだよ……お、出来たっぽいぜー?」

 出来上がった合金のインゴットを何度か見てからトカゲに放り投げる。
 それを器用にキャッチするとこつこつと叩いたり、弄ったりして調べながら使えるかどうか確認し始める。

「ほら、やっぱ余裕で出来る」
「大体思い付きでどうにかできるのがこのゲームの良い所なんだよ、覚えときな」
「……と言ってもインゴット化したら銃身にしか使えねえぞ、本体は型取らんと」

 そういえば銃の製造って、ライフルしか手を出してないんだよね、私。拳銃やトカゲの手回しガトリングみたいな大型の銃って作った事が無いから、その辺のルールはよくわからん。ダブルバレルG4を作ろうとした時は銃の製造とはまた違う方向で、ばらしてるって訳じゃないからちょっと話しが変わる。
 G4ばらしたときは銃身と銃床、接続パーツじゃなくて、銃身と本体フレーム、接続パーツだったかな。ゲーム的ご都合主義で色々と吹っ飛ばして必要なパーツと材料さえあればさくっと作れるのは良い所。

「フル合金の本体って殴っても変形しなさそうよね」
「あー、それいいな、受けても大丈夫な硬度があったらわたしもらくちんちん」
「そもそも型に合金入れるってどうやんの」
「ガワだけなら型と材料を選択するんだ、手回し作った時の銃身以外はそれで作った」
「ふーむ……そもそも銃身と本体を選択するってのがなあ、接続パーツは意味分かるけど」
「んー、ボスってさ、パイプライフル使ってたよね?」
「使ってたけど、あれがどした」
「私の考え方だけど、銃身の出来で火力、本体側が何かで銃の種類が決まると思う」

 言われてみれば結構ストンと納得は出来る。ポンコツのくせにまあまあ鋭い推理をするじゃねえか。ちょっとだけ見直した。

「確かにウサ銃ばらしたときはそんな感じだったかな、銃身でM2ラビット、銃床で長銃だったから良い推理してる。けど、何も設定されてない銃身と銃床を組み合わせたらどうなるかはわからんな」

 作業台の近くに置いてある勝手に使えと揃えたライフルを一本手に取って、パーツごとに指差して見せてからスキルを使ってばらし、また同じように各パーツを指差して説明をする。

「えーっと、つまるところ必要なパーツさえ作っちゃえば良しってことだよね?」
「組み上げたときにどう判断されるかはシステム依存って所かな……手回しガトリングの時は」
「あの時はそれっぽく仕上げたら勝手に判断されたな、複雑なほど追加で必要なパーツが増えると思うぞ」

 よく考えてみればパイプライフルを作ってからは本格的な銃の製造せずに此処まで来れたのもあって、銃製造の詳しいルールって知らないんだよな。何となく型を作ってガワを製造して、銃身と接続パーツをくっつけて……みたいな簡単な考えでやってきたけど、それじゃ駄目そうな感じもある。

「とりあえず銃身作ってみ、トカゲの方がその辺詳しいだろ」
「分かった、何本か作っておく」
「んじゃ、猫耳待つ間にガンナーギルドで情報なり仕入れてくるわ」

 結局放置かいって言いながらも、合金が出来た事はいいので後は任せてガンナーギルドに向かうので、ポンコツも引き連れてそっちに向かう。




「ガンナーギルドも結構人いるよねえ……やっぱ場所教えない方がよかったんじゃない?」
「いつか分かるもんだし、隠していてもしょうがないでしょ、何だったらガンナーやってるなら自力で探し当てて一人前よ」

 受付カウンターでショップのラインナップを確認している所、ポンコツの奴が周りを見てぽつっと零す。確かにガンナーギルドの場所を漏らす必要は無かった気がするが、どうせ私が言わなくても誰かが言うだろうし、何だったら早めにばらして情報量貰ったから私としては十分なんだよな。

「ねー、フレームだけ売ってないの?銃作りたいんだけど」
「何だ、銃作りたいのか……だったら金出しな」
「十分金出してるじゃんか、幾らさ」

 ん、と返事をされると個別にウィンドウが開いて支払いしますか?といった画面が表示される。

「なになに、進展あり?」
「金払ったらパーツごとに購入が出来るっぽいけど手持ちが足りん、20万持ってない?」
「何時も金持ってるイメージだけど……」
「何だかんだでデスペナ食らう時多いから、余計な金は持たない主義なのよ」

 最近はっていうか、雪山の攻略するのにかなり死んだから、所持金すっからかんになってから預けておけば良かったって気が付いたんだけどな。とりあえずポンコツから金を借りてからすぐに不愛想な受付NPCに払ってやると、そのまま引っ込んでいくので、暫く待ち。 

「それにしてもガンナー連中はもうちょっとボスに対して敬意を払うべきだよねー」
「そういうのが欲しいからゲームをしてる訳じゃないからなー、ガンナーとして有名なのはポンコツだろ」

 受付の方にもたれたまま、こっちを見ている他のプレイヤーを指差してやる。こういう時に配信者らしく、すぐにファンサービスでポージングなんて出来るのはお前くらいだよ。
 そんな様子を見つつ葉巻を咥えて火を付けようとすると、受付NPCがカットイン。

「禁煙だよ」
「此処だけリアルと一緒で厳しいわ」

 とりあえず火を付けずに口に葉巻を咥えたまま新しく出てきたウィンドウのタブを開いてみると、いつもの銃……では無くて、銃身と銃床がずらっと並んでいる。なんだよ、やっぱり金でぶん殴れるゲームだよ。

「ポンコツ、あったぞ」
「え、ああ、うん、そういえばG4の価格が違ってたけど、ギルドレベルいくつ?」
「ぴったり10」
「私も10なんだけどボスが言ってる10万切った価格じゃないんだけど、どういう事なんだろって」
「私に言うな私に、そこまでガンナーの事情は知らん」

 購入できるという事実が分かればいいので、後は一旦帰って金持ってくるので良いだろう。まだサービス開始一ヶ月だけど、このゲームってとにかくユーザーが求めている事を見越して用意している事が多い……って思ったけど、よくよく考えたらこのゲーム最初から何でも金さえあれば解決出来てたわ。木炭も5,000Zで買えるし、必死こいて作ってきた銃弾だって此処で買えるわけだし。
 何て事考えていたらポンコツのサービスタイムがまた始まるので葉巻に火を……付けると怒られるから咥えたままで終わるのを暫く待つ。

「サービス精神旺盛ねえ……」

 ……そういえば私もポンコツの配信出てるから顔は知られてるんだっけか。ポンコツのファンがこっちをチラチラ見てくるので指で銃の形を作って「ばーん」とジェスチャーをするとちょっとした黄色い声が上がる。案外女性ファンが多いんだな、あいつ。

「ほら行くぞポンコツ、パーツ買ったら試射祭りだ」
「んぇ、あーい!」
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