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13章

337話 地道な攻略こそ

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「寒い……ようには、感じないし、凍結の状態異常が出るのが遅い……気がする」

 南西エリア3-1、入った所でざくざくと雪をかき分けつつ、白い息と澄んだ空気の中、雪原を歩き回る。まだ吹雪や降雪に遭遇していないのでそういうのがあった場合はどうなるのか分からないが、今の所コート一枚で余裕。
 ついでにガンベルト問題、これもあっさり解決したのだが。腰に巻いていたのを単純にコートの上から襷掛けしただけっていう、超簡単解決。まあ、そりゃそうだよ、わざわざスーツやコートの下に付けておく必要もないから、外に付けりゃいいってだけ。
 
「手袋くらいはちゃんとした奴がいいかな、かじかんで動かないってなるとヤバそうだ」

 ぐぱぐぱと手を動かして具合を確かめる。滑り止めの効いた皮手袋なので、このまま寒い所にいると冷たさが伝わってくるくらいには厳しい。皮手袋が通じるのは正直な所、秋までで、冬に皮手袋使って外で作業なんてやってたら正気かと疑われる。麻手袋、軍手、皮手袋の3枚でギリだし。

「まさかとは思うけど、凍結も部分で食らったりは……ありそうだから何とも言えんな」

 足元の雪を掬ってぎゅっぎゅと握りかためて雪玉にしてから投擲を使い、しゅぱっと投げる。
 投げるものなら何でも投擲が適用されるってのは結構面白い要素だ。

「余裕があったら雪合戦でもして楽しみたい所なんだけど」

 遊んでいる訳じゃなくて検証しているので、そんな暇はなし。ただ、遊ぶって事に関しては実はかなり向いていて、環境がきついせいかモンスターの数が少ない。
 プレイヤーがしっかり防寒したうえで、さくっとモンスターを倒せるというのなら、雪遊びしやすいマップともいえる。襲われたら襲われたで、必死こいて戦うしかないのだが、適正外でも楽しめると言えば楽しめる。

「んー、この間よりも長い事いるけど、防寒装備一つあるだけで結構変わるわね」

 と、言っても天候が荒れている時に比べてなので、やっぱり本番は吹雪いてからなんだよな。吹雪かなくても風が強い時もあるだろうから、これからは環境に合わせて装備を考えなきゃいけないか。

「んー、中々楽しいゲームだ」

 同じ装備だけでずっとどうにかするってのも嫌いではないが、やっぱりあれこれ装備を考えて攻略するってのも好きだな。

「とりあえず吹雪を待って、カマクラ見つけて大人しく過ごして凍結の状態異常を見るか」

 と、暫く雪原を歩き回り、吹雪待ち。
 モンスターは全然出現しないので、天候での出現条件もあるかもしれないな。



『おしゃべりちょっといい?』
『お、何ですか?』
『ちょっと忍者周りのスキルについて聞きたいんだけど』
『変な奴はいやっすよ』

 カマクラの中、あまりにも動けないのでおしゃべり忍者に質問タイム。
 煩いっていう点さえ抜いたら、かなり優秀な忍者なんだよな。

『今欲しいのは潜伏、移動、視界かな』
『また難しい、ラインナップっすね……ちなみに具体的な使い道は?』
『潜伏は一か所に留まってじっとする、移動は雪上、視界も真っ白な所をどうにかって感じ』
『ああー、雪原エリアっすか……今言った3個のスキルっすけど、基本的に長時間その環境にいるってのが条件になるっすね』
『つまり防寒した状態でひたすらこの雪原で生活しろと』
『基本的に環境系のスキルはそうっすよ、それにしても雪原エリアっすか……』

 なんか思う事があるのか、少し言い淀んだ。
 
『私がはっきり言わないと嫌いなの知ってるでしょ』
『うーん……覚えるのに、とにかく時間が掛かるっす、数時間ってレベルじゃなくて数日必要っすよ』
『防寒してしっかりマップ攻略って方が良いのか』
『ぶっちゃけ火山よりきついっす、あとは何処まで行くかって話っすね、目的はなんすか?』
『3-3にあるレアメタル』
『そこ以外にはないんすか?』
『ぶっちゃけ分からん、情報クランで仕入れたネタだから、信憑性は高い』
『なるほどっす……とにかく時間を掛けて、スキルの発生条件を満たすってのが大事っす』
『分かったわ』

 フレンド会話を終わらせてからカマクラの中、吹雪を見つめて中々にげんなりしつつ、葉巻を咥えて火を付ける。あれから色々試したというか、狭い空間で葉巻をすぱすぱ吸ってみたが、問題なかったのでこの状態でも吸えるというのが分かったからだ。

「サメは、来てないから、ふむ……そうなってくると」

 条件としては吹雪が発生している、なおかつカマクラにプレイヤーがいる事でアクティブ化するのか、それとも動き出すのか、多分この辺が有力。
 おしゃべり忍者が言っていた事や、状況を考えると、やっぱり環境からのデメリットが強すぎるから、モンスターの動き出しはある程度条件があって、モンスターの排除力よりもマップ踏破力、対応力の方が大事なんだろう。

「その場で安置が作れるような避難アイテムがあるって聞いたけど、そういうのもいいかも」

 また燃やす物を持ってくるのを忘れたので、寒い思いをしているのだが、この辺はインベントリの中に焚火セットでも仕込んでおけば問題ないか。

「あれこれ準備したり、試したりするのってやっぱ楽しい」

 やっぱりゲームってのはあれこれ試したり、苦戦してなんぼだよな。ただアクションゲームとして難度が高いって訳じゃなくて、しっかりとしたシステムや、環境、状況で誰でもどうにかできますって言う所は楽しい。

「焦って攻略しても仕方ないし、のんびりしつつ、急いで確認したくはあるな」

 こんな事なら犬野郎にお茶のセットでも分けてもらうのもありだったな、こういう暇な時間をどうにかして潰す必要もあるか。

「動かないことが攻略になるってのもなあ」

 体育座りでしょげた感じでカマクラの中にいるってのはなんとも惨めな感じだし、もう1人位いれば遊び相手にでもなるんだが。じゃあ誰を誘うんだって話よ。
 ぶっちゃけタンク組はこの雪の中じゃまともに機能しないだろうし、ガンナー系も動作全体にマイナス補正が掛かるから、装填隙が地味にきつい。って言うかどの職選んでもこのマップじゃきついのか。
 割と環境系のスキルを持つって中々にSP割り振るのに度胸がいる訳で、そのマップでしか使えない、特定の条件化じゃないと使えないスキルはどうしても敬遠しがちになる。
 言ってしまえば私が考えている雪面での移動スキル、視界スキルも此処を抜けてしまったら完全に腐る。そこにどのくらいのSPをぶっこまないといけないのかって言われる、うん。

「そうなると、やっぱギャザラーやマッパー辺りが欲しくなる」

 前者は採取全振りなので、取りに行く道中をスムーズにするために取っているだろうし、後者はマップを埋める事に悦る人種なので、隅々の探索と言ったらだが……TRPGでしか見た事が無いので、このゲームでそういうのがいるかって言われると分からん。

「マップ踏破用、採取用の仲間がやっぱほしいわ」

 葉巻の紫煙をカマクラの中一杯にしつつ、吹雪が収まり、状態異常の進行度、スキル発生に望みをかける。
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