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12章

326話 ここからが本番

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 エリア3のモンスター群、色々いすぎるからいちいちあれがどうとかこれがどうとかやっていたらキリがないので、重要なのは何発撃ち込んだら倒せるかどうかって話になってくる。
 幸いな事に大筒一発で沈んでくれるので、やばくなったら足で刻印発動、そこから範囲攻撃で吹っ飛ばして体勢を整え、やばくなったら火炎瓶で防御して装填し、紫髪をカバーする。この方法でどうにかこうにかやってきたわけだが、どうしても前衛の壁が足りなくなり、アイテムの使用量が増えてくる。

『いい加減2人じゃきついわ』
『弾きついから一回戻るぞ、俺は』
『あたしも手離せないかなぁ……』
『じゃあバイパーさんが戻るタイミングで僕が合流します』

 まだ髭親父、ポンコツ、猫耳がいないのが結構厳しい。あーだこーだ言いつつもこの3人が欠けているとうちの戦力結構落ち込むんだよな。残念ながら金髪エルフの奴は戦闘力皆無すぎて頭数には入っていないのは仕方がない、防具は全員恩恵を受けてはいるが。

「全く、こういう日に限っていて欲しい奴がいないってね」

 CHの薬莢を落として装填しながら、G4で牽制射撃をして足止め、CHの装填が終われば牽制射撃で足を止めた奴を素早く撃ち抜く。装填から射撃までの時間は良いのだが、2丁拳銃と銃捌きが悪くてもたつく場面が出てきた。どちらも最低限のスキルしか振っていないのでしょうがないのだが、このまま続けていくとじり貧だ。
 そういう訳で火炎瓶ウォールを展開し、またモンスターの進行を限定させてからスキルウィンドウを展開。2丁拳銃、銃捌き、早撃ちにSPをポチポチっと投入して、早撃ち以外をスキルレベル最大化。どんどんパッシブ型ガンナーとして完成してきている気がする。

「おねーさん、ちょっと前任せてもいい?」
「なしたん」
「ちょっと武器投げすぎたから回収してこようって思ってさ」

 気が付けば地面に突き刺していた刃物は数が減り、結構な範囲に武器が散らばっている。もうちょっとペース配分を考えて投げろ……と、思ったんだけど、予想以上の数がばら撒かれているのでかなり投げまくってるわ。

「さっさとしなさいよ」
「はーい」

 気に入ってる1本を片手でひゅんひゅんと風を切って回しつつ回収作業に向かう間、少し前に出て前後交代。こっちも同じようにウサ銃を地面に突き刺し、CH、G4、ウサ銃の3丁体勢。傍から見てもバランスの悪い組み合わせだ。

 そんな事を思っていたら飛び掛かってくるモンスターが一匹、4足歩行の犬型のやつ。飛びかかって噛みつき攻撃を右に装備しているガンシールドで受け、がじがじとシールドが噛まれている間に左で装備いたCHを構えて、ガンシールドを展開。
 口を無理やり開けられ始めたのを察してから噛みつきからさっと後ろに飛ぶのでガンシールドを収納、素早くCHに右手を沿えて射撃。銃声と鳴き声が続けざまに響きモンスターをポリゴン状にする。

「銃捌きのおかげか、構えて撃つまでが速くなってるわ」

 すぐさま中折、排莢し、くるりとガンベルトに入ってる銃弾を引っ掛けて銃身を戻して装填完了。あー、これ相乗効果付きっぽいな、装填の時に回転させる動作が銃捌きでさらにスムーズよく行えている。こういうのは上げて見なきゃ分からないから博打が過ぎる。

「上げて良かったスキルレベルってな」

 4足歩行のモンスターが消失した後すぐに次のがやってくるのでCHを提げ、突き刺していたウサ銃を手に取りさっと構えて直ぐに射撃。こっちは早撃ちと銃捌きのおかげで近接戦がしやすくなった気がする。ついでに銃剣もあるから、超動ける。
 なんだよ、こんな事ならよく使うスキルがんがん上げておけば良かった。ついつい現状で十分だからってSP温存してた私が馬鹿らしい。新しいスキルも最近出てこないし、忍者系のスキル取るのも全然ありだわ。

「おねーさん、動きよくなったね」
「だろー?ちょっとスキル振ってやったらこんなもんよ」

 色々考えているうちに撃ち切ったウサ銃のボルト引いてクリップを甲高い音をさせて弾き飛ばし、5発分ベルトから引き抜いてじゃごっと音を立てて押し込む。そういえば今まで疑問に思ってなかったが、クリップが自動装填されるんだよな。

「回収は?」
「出来たよー、ついでに結構倒したから多少安定すると思う」
「まだまだ向こうにいっぱいいるけどな」
「お楽しみは多い方がいいじゃん?」

 そこそこ接近されたモンスターを横目に、一旦設置しておいた大筒の所に下がって一発。
 相変わらずの爆発音を硝煙をまき散らしながら一気に場面の制圧完了……とまではいかずに、前面にいたモンスターで阻まれて奥のモンスターはぴんぴんして突っ込んでくる。イメージ的には何枚もある壁の一枚を破壊したって感じで、エリア1、2の奴よりも全然手前で鉄片が止められてしまう。

 それにしても紫髪……刃物好きな女性キャラって単純にヤバい奴だよなあ。これでカッターなんて持ってたら完璧だよ。

『どこにいる?』
『北1-3』
『何か持っていくもんは』
『弾と火炎瓶、共有ボックスに入ってるから』
『分かった』

 髭親父が参戦、ついでに補給もするかと言ってくるあたり、私の事をよくわかっている。こういう阿吽の呼吸と言うか、私が求めていることをやってくれるのは長い付き合いだからこそだな、うんうん。

『って、よくよく考えてみたらトカゲが一回戻るからその時でも良かったか』
『俺は全部マガジン詰めするからバラで持たないから』
『私もマガジン詰めしちゃうからないねー』

 気が付いたらポンコツもログインしているな。たまたまなんだろうけど、いいタイミングでログインしてくるわ、こいつは。

『いいからさっさと合流せえ』
『はーい』

 後は猫耳と金髪エルフがログインしたら勢揃い。オールスターでエリア4の相手をしたいが……。

「何か考え事ですか」
「ん、ああ、さっさと合流してほしいなあって」
「もうちょっとなんですからすぐですよ」

 犬耳が私に向けて回復魔法を唱えてそこそこ減っていたHPを戻していく。
 大筒や銃撃で迎撃しているとは言え、細かく被弾してダメージを負っていたので丁度いい。殴りヒーラーしてるとは言ったけど、最低限の動きは出来るんだから、多分犬野郎のおかげだな。

「殴りヒーラーに、刃物狂、メンツが濃すぎるわねえ……」

 そんな事を言いながらG4を3発からのウサ銃1発をスムーズな流れで叩き込んで、また一匹撃破。その横じゃ私が一匹片付けている間に三匹は相手している紫髪だったり、群れに突撃して一人で蹴散らしているジャンキーもいるから、そこまで強いと思えないんだよな、私って。

「でかい銃を軽々扱っているアカメも中々に濃いだろうに」
「いやー?あんな特徴的な動きや立ち回りはないし、私のビルドだけで言えば特徴的な事も無いわよ」

 トレード画面が髭親父から飛んでくるので、追加で持ってきた火炎瓶と銃弾を受け取ってトレード完了。
 
「そうか?大分珍しいと思うが」
「いやいや、マジでそうだよ、やってれば同じステータス、スキル、武器までは揃えられる、防具は無理だろうけど」

 こればっかりは私用に作って貰ったものなので真似は無理だろう、あのゴリマッチョと付き合えるのは同じ趣味の奴じゃないときつい。

「それで、状況は」
「次のエリア敵の準備をしつつ蹴散らしって感じ」
「じゃ、儂は前だな」

 そう言うと、どこぞの獣が使っているような槍を取り出して紫髪の隣に行って、瓢箪を取り出して一気に煽って一杯楽しむ。その後槍を回転させて止めると共にピタッと先をモンスターに向けて両手で構えてしっかり腰を落として、戦闘再開。
 改めて髭親父の戦いを見るけど、うちのクランでの戦闘力はかなり高い。素早く突き、叩いて確実に一体一体仕留めながらも自分の手の届く範囲かつ、あまり私と犬耳から離れない位置を維持して立ち回る。

「レベルたけーなあ、あいつら」
「ボス知らねえのか、十兵衛のおっさん、あれでも有名な槍使いなんだぞ」
「うちのクランじゃ酒好きの髭親父でしかねえって」
「……何でボスかってのがよくわかる発言だ」

 みるみる前線の安定度を上げつつ、トカゲも来たことで弾幕を張れるようになり、後衛の態勢も万全。そういえばトカゲと私しか後衛がいないな、ポンコツは格闘に振ってるから前衛ガンナーだし。犬耳に至ってはレンタル。

「前がしっかりしているとリロードしやすくて助かるから良いじゃない」
「ちがいねえ」

 インベントリからタワーシールドを取り出して展開、その上部にバイポット付きの手回しガトリングを置いてマガジンを装填してコッキング。知らない間に輝いて撃てるようにしているとは。
 こっちも消費したマガジンに銃弾を詰め直して、G4をロングマガジンに差し替えリロード。ついでに足元に並んでいた大筒は回収してインベントリに仕舞い込んでおく。

「使わないのか?」
「人がいると逆に使いにくいのよ、前に見たいに全員の前に置いてぶっ放すならまだしも」

 用法容量を守って正しく使う事で効果的にその武器を使うってのは、ゲームじゃなくても大事な事だから。

「ごめーん、遅れたー」
「配信は」
「今からするよ」

 そら、でかいイベントの最後を配信しないって、配信者としては失格だよな。
 ポンコツのくせにこう言う所は抜け目ないんだから、まったく。

『敵の数が減ってきたし、そろそろエリア4の敵がきそうだね』
『ちなみにエリア4で戦った事あるのは?』

 今の所参戦している、髭親父、ジャンキー、紫髪、トカゲ、ポンコツ、犬耳は既に経験済み、つまり私を除いて全員ヴィエまでは行ってるって事になるのか。うーん、本当に私クランマスターとしてちょっとプライド低すぎる気がしてきた。

『どういう敵が出るかざっと説明を……』
『する前に来ちゃったねぇ』

 いつもの前線組が並んでいる向こう側、モンスターではあるのだが、しっかり武装しているタイプに飛行タイプ、毎度お馴染み4足歩行と、バリエーション豊かなのだが、造形がかなり禍々しい。見るからに「お前を殺す」って感じの風貌と雰囲気だ。

『やっぱ強いんでしょ』
『アベレージ50だからな、油断すると一発だぞ』
『じゃあ、あたしも合流するかなぁ』
『俺とボスは装備が揃ってるとは言えワンパンだから抜けられない様に気を付けてくれよ』
『僕は中衛で前後に回復で』
『配信しがいがあるなー』
『来るよ』

 紫髪がぽつりと言うといきなり咆哮が聞こえて辺りがビリビリと振動する。どうやら最終局面に突入したわけだが、ここからが正念場だ。
 私の今まで作ってきたものや現状がどこまで通じるのかってのもあるし、此処でうまくいかないとあの商人連中に一泡吹かせてもやれない。

「気合入れなきゃな」

 葉巻を咥え、火を付けてから紫煙を燻らせながらやってくるモンスター群を見据える。
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