上 下
351 / 622
12章

326話 ここからが本番

しおりを挟む
 エリア3のモンスター群、色々いすぎるからいちいちあれがどうとかこれがどうとかやっていたらキリがないので、重要なのは何発撃ち込んだら倒せるかどうかって話になってくる。
 幸いな事に大筒一発で沈んでくれるので、やばくなったら足で刻印発動、そこから範囲攻撃で吹っ飛ばして体勢を整え、やばくなったら火炎瓶で防御して装填し、紫髪をカバーする。この方法でどうにかこうにかやってきたわけだが、どうしても前衛の壁が足りなくなり、アイテムの使用量が増えてくる。

『いい加減2人じゃきついわ』
『弾きついから一回戻るぞ、俺は』
『あたしも手離せないかなぁ……』
『じゃあバイパーさんが戻るタイミングで僕が合流します』

 まだ髭親父、ポンコツ、猫耳がいないのが結構厳しい。あーだこーだ言いつつもこの3人が欠けているとうちの戦力結構落ち込むんだよな。残念ながら金髪エルフの奴は戦闘力皆無すぎて頭数には入っていないのは仕方がない、防具は全員恩恵を受けてはいるが。

「全く、こういう日に限っていて欲しい奴がいないってね」

 CHの薬莢を落として装填しながら、G4で牽制射撃をして足止め、CHの装填が終われば牽制射撃で足を止めた奴を素早く撃ち抜く。装填から射撃までの時間は良いのだが、2丁拳銃と銃捌きが悪くてもたつく場面が出てきた。どちらも最低限のスキルしか振っていないのでしょうがないのだが、このまま続けていくとじり貧だ。
 そういう訳で火炎瓶ウォールを展開し、またモンスターの進行を限定させてからスキルウィンドウを展開。2丁拳銃、銃捌き、早撃ちにSPをポチポチっと投入して、早撃ち以外をスキルレベル最大化。どんどんパッシブ型ガンナーとして完成してきている気がする。

「おねーさん、ちょっと前任せてもいい?」
「なしたん」
「ちょっと武器投げすぎたから回収してこようって思ってさ」

 気が付けば地面に突き刺していた刃物は数が減り、結構な範囲に武器が散らばっている。もうちょっとペース配分を考えて投げろ……と、思ったんだけど、予想以上の数がばら撒かれているのでかなり投げまくってるわ。

「さっさとしなさいよ」
「はーい」

 気に入ってる1本を片手でひゅんひゅんと風を切って回しつつ回収作業に向かう間、少し前に出て前後交代。こっちも同じようにウサ銃を地面に突き刺し、CH、G4、ウサ銃の3丁体勢。傍から見てもバランスの悪い組み合わせだ。

 そんな事を思っていたら飛び掛かってくるモンスターが一匹、4足歩行の犬型のやつ。飛びかかって噛みつき攻撃を右に装備しているガンシールドで受け、がじがじとシールドが噛まれている間に左で装備いたCHを構えて、ガンシールドを展開。
 口を無理やり開けられ始めたのを察してから噛みつきからさっと後ろに飛ぶのでガンシールドを収納、素早くCHに右手を沿えて射撃。銃声と鳴き声が続けざまに響きモンスターをポリゴン状にする。

「銃捌きのおかげか、構えて撃つまでが速くなってるわ」

 すぐさま中折、排莢し、くるりとガンベルトに入ってる銃弾を引っ掛けて銃身を戻して装填完了。あー、これ相乗効果付きっぽいな、装填の時に回転させる動作が銃捌きでさらにスムーズよく行えている。こういうのは上げて見なきゃ分からないから博打が過ぎる。

「上げて良かったスキルレベルってな」

 4足歩行のモンスターが消失した後すぐに次のがやってくるのでCHを提げ、突き刺していたウサ銃を手に取りさっと構えて直ぐに射撃。こっちは早撃ちと銃捌きのおかげで近接戦がしやすくなった気がする。ついでに銃剣もあるから、超動ける。
 なんだよ、こんな事ならよく使うスキルがんがん上げておけば良かった。ついつい現状で十分だからってSP温存してた私が馬鹿らしい。新しいスキルも最近出てこないし、忍者系のスキル取るのも全然ありだわ。

「おねーさん、動きよくなったね」
「だろー?ちょっとスキル振ってやったらこんなもんよ」

 色々考えているうちに撃ち切ったウサ銃のボルト引いてクリップを甲高い音をさせて弾き飛ばし、5発分ベルトから引き抜いてじゃごっと音を立てて押し込む。そういえば今まで疑問に思ってなかったが、クリップが自動装填されるんだよな。

「回収は?」
「出来たよー、ついでに結構倒したから多少安定すると思う」
「まだまだ向こうにいっぱいいるけどな」
「お楽しみは多い方がいいじゃん?」

 そこそこ接近されたモンスターを横目に、一旦設置しておいた大筒の所に下がって一発。
 相変わらずの爆発音を硝煙をまき散らしながら一気に場面の制圧完了……とまではいかずに、前面にいたモンスターで阻まれて奥のモンスターはぴんぴんして突っ込んでくる。イメージ的には何枚もある壁の一枚を破壊したって感じで、エリア1、2の奴よりも全然手前で鉄片が止められてしまう。

 それにしても紫髪……刃物好きな女性キャラって単純にヤバい奴だよなあ。これでカッターなんて持ってたら完璧だよ。

『どこにいる?』
『北1-3』
『何か持っていくもんは』
『弾と火炎瓶、共有ボックスに入ってるから』
『分かった』

 髭親父が参戦、ついでに補給もするかと言ってくるあたり、私の事をよくわかっている。こういう阿吽の呼吸と言うか、私が求めていることをやってくれるのは長い付き合いだからこそだな、うんうん。

『って、よくよく考えてみたらトカゲが一回戻るからその時でも良かったか』
『俺は全部マガジン詰めするからバラで持たないから』
『私もマガジン詰めしちゃうからないねー』

 気が付いたらポンコツもログインしているな。たまたまなんだろうけど、いいタイミングでログインしてくるわ、こいつは。

『いいからさっさと合流せえ』
『はーい』

 後は猫耳と金髪エルフがログインしたら勢揃い。オールスターでエリア4の相手をしたいが……。

「何か考え事ですか」
「ん、ああ、さっさと合流してほしいなあって」
「もうちょっとなんですからすぐですよ」

 犬耳が私に向けて回復魔法を唱えてそこそこ減っていたHPを戻していく。
 大筒や銃撃で迎撃しているとは言え、細かく被弾してダメージを負っていたので丁度いい。殴りヒーラーしてるとは言ったけど、最低限の動きは出来るんだから、多分犬野郎のおかげだな。

「殴りヒーラーに、刃物狂、メンツが濃すぎるわねえ……」

 そんな事を言いながらG4を3発からのウサ銃1発をスムーズな流れで叩き込んで、また一匹撃破。その横じゃ私が一匹片付けている間に三匹は相手している紫髪だったり、群れに突撃して一人で蹴散らしているジャンキーもいるから、そこまで強いと思えないんだよな、私って。

「でかい銃を軽々扱っているアカメも中々に濃いだろうに」
「いやー?あんな特徴的な動きや立ち回りはないし、私のビルドだけで言えば特徴的な事も無いわよ」

 トレード画面が髭親父から飛んでくるので、追加で持ってきた火炎瓶と銃弾を受け取ってトレード完了。
 
「そうか?大分珍しいと思うが」
「いやいや、マジでそうだよ、やってれば同じステータス、スキル、武器までは揃えられる、防具は無理だろうけど」

 こればっかりは私用に作って貰ったものなので真似は無理だろう、あのゴリマッチョと付き合えるのは同じ趣味の奴じゃないときつい。

「それで、状況は」
「次のエリア敵の準備をしつつ蹴散らしって感じ」
「じゃ、儂は前だな」

 そう言うと、どこぞの獣が使っているような槍を取り出して紫髪の隣に行って、瓢箪を取り出して一気に煽って一杯楽しむ。その後槍を回転させて止めると共にピタッと先をモンスターに向けて両手で構えてしっかり腰を落として、戦闘再開。
 改めて髭親父の戦いを見るけど、うちのクランでの戦闘力はかなり高い。素早く突き、叩いて確実に一体一体仕留めながらも自分の手の届く範囲かつ、あまり私と犬耳から離れない位置を維持して立ち回る。

「レベルたけーなあ、あいつら」
「ボス知らねえのか、十兵衛のおっさん、あれでも有名な槍使いなんだぞ」
「うちのクランじゃ酒好きの髭親父でしかねえって」
「……何でボスかってのがよくわかる発言だ」

 みるみる前線の安定度を上げつつ、トカゲも来たことで弾幕を張れるようになり、後衛の態勢も万全。そういえばトカゲと私しか後衛がいないな、ポンコツは格闘に振ってるから前衛ガンナーだし。犬耳に至ってはレンタル。

「前がしっかりしているとリロードしやすくて助かるから良いじゃない」
「ちがいねえ」

 インベントリからタワーシールドを取り出して展開、その上部にバイポット付きの手回しガトリングを置いてマガジンを装填してコッキング。知らない間に輝いて撃てるようにしているとは。
 こっちも消費したマガジンに銃弾を詰め直して、G4をロングマガジンに差し替えリロード。ついでに足元に並んでいた大筒は回収してインベントリに仕舞い込んでおく。

「使わないのか?」
「人がいると逆に使いにくいのよ、前に見たいに全員の前に置いてぶっ放すならまだしも」

 用法容量を守って正しく使う事で効果的にその武器を使うってのは、ゲームじゃなくても大事な事だから。

「ごめーん、遅れたー」
「配信は」
「今からするよ」

 そら、でかいイベントの最後を配信しないって、配信者としては失格だよな。
 ポンコツのくせにこう言う所は抜け目ないんだから、まったく。

『敵の数が減ってきたし、そろそろエリア4の敵がきそうだね』
『ちなみにエリア4で戦った事あるのは?』

 今の所参戦している、髭親父、ジャンキー、紫髪、トカゲ、ポンコツ、犬耳は既に経験済み、つまり私を除いて全員ヴィエまでは行ってるって事になるのか。うーん、本当に私クランマスターとしてちょっとプライド低すぎる気がしてきた。

『どういう敵が出るかざっと説明を……』
『する前に来ちゃったねぇ』

 いつもの前線組が並んでいる向こう側、モンスターではあるのだが、しっかり武装しているタイプに飛行タイプ、毎度お馴染み4足歩行と、バリエーション豊かなのだが、造形がかなり禍々しい。見るからに「お前を殺す」って感じの風貌と雰囲気だ。

『やっぱ強いんでしょ』
『アベレージ50だからな、油断すると一発だぞ』
『じゃあ、あたしも合流するかなぁ』
『俺とボスは装備が揃ってるとは言えワンパンだから抜けられない様に気を付けてくれよ』
『僕は中衛で前後に回復で』
『配信しがいがあるなー』
『来るよ』

 紫髪がぽつりと言うといきなり咆哮が聞こえて辺りがビリビリと振動する。どうやら最終局面に突入したわけだが、ここからが正念場だ。
 私の今まで作ってきたものや現状がどこまで通じるのかってのもあるし、此処でうまくいかないとあの商人連中に一泡吹かせてもやれない。

「気合入れなきゃな」

 葉巻を咥え、火を付けてから紫煙を燻らせながらやってくるモンスター群を見据える。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...