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12章

324話 最後の作戦会議

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 丸底火炎瓶、焙烙玉、大筒、今回の襲撃イベントで新しい玩具を作って中々の売上と客層を増やすことが出来たし、色々と繋がりも増えたので出来る事が多くなったのは非常に良い事だ。まあ、その代償に融通してやらなきゃいけない事も増えたので、トントンって所だろう。いや、それでも利益の方が上回っているか。

「それにしても売れたわねえ」

 インベントリにある自分の所持金と別枠で確認できるクラン資金を見比べながらほくほくとした顔でそれを眺め続ける。ゲーム内資金は使ってなんぼだけど、やっぱ数値的に桁が多いと見ているだけで自然で笑みが零れてくる。

 何だかんだであれからまた数日経ち、土日に関しては新しい玩具を使って暴れ回し、襲撃イベントにフル参加、月曜の平日からは夜しか参加できないので、昼間にログインできるのを予め聞いておき、クランの共有ボックスに死ぬほどアイテムを突っ込んでおいたので、いない間は死ぬほど使って盤面を制圧しろと結構強めに言っておいた。
 全て200セットずつ作っておいたのだが、在庫全部を消化するとは思わなかった。昼間にいたのが単純に消化したってのもあるんだろうけど、余ったのはクランショップで売っぱらったか。

「畑拡張してもっと硝石丘増やしておくのもありかなあ……ま、イベント終れば落ち着くだろうし、問題ないか」

 需要があったのは大量に出てくるモンスターに対して攻撃手段が乏しいプレイヤーが良く購入していたという理由だし、イベントが終われば大量破壊兵器や火炎瓶のような範囲を炎上させるものってあんまり使わなくなる。
 って、考えたんだが、このゲームでガンナーをやり続ける限り消費するものだから拡張しておいても腐る事はない。何だったらこれから先、もっとゲームが売れてガンナーの人口が増えるって考えたら一気にL畑50面くらいにして、1日で大量に硝石回収できるようにするってのもありか。

「アカメ様、顔が怖いですよ」
「うん、あー、ちょっと良い事思いついたからなあ……ついでに襲撃イベント終ったらちょっとイメチェンしよっかな」
「アカメ様はどんな姿でも素敵ですよ」
「褒め上手な秘書だなあ……」

 わしゃわしゃはせずにちょっと噛みしめて堪能しておく。ちょっとわしゃられるのを待機しているのは見逃さなかったからな。あんまり気軽にやるとありがたみがなくなるし、最近ちょっと気軽にやってたから少し自重するだけ。

『ボス、いるか?』
『何?』
『例の大筒なんだけど、やっぱり無反動砲は暫く無理だな、時間が無い』
『まあ、このイベント中には無理だって分かってたし、機械機構の開発の方が先だって』
『ロケット花火は作れたんだけど、大型化すると推進力がな……』

 やっぱりうちのクランにいるのって頭おかしいなあ、私がちょっとだけ思いついた事をもう形にしているのもそうだけど、だいぶノリノリでやってくれるし……って思ったけど、そもそも扱いにくい連中を集めてたわ。なんてことを考えているとアナウンスのSEがポーンと鳴り響き。

『エルスタンにより大型襲撃が予想されています
 今回の襲撃が最後になるため、皆様奮ってご参加ください
 また、襲撃開始は2時間後、リアル時間30分後になります』

 と、そろそろ最後と思っていたけど、今回が最後とは思っていなかったな。でかく暴れられるってのもあるし、最後の最後はお祭り騒ぎでエルスタンで締めってのもいいんじゃないかな。

『ほら、イベ期間の間は無理って言ったでしょ』
『先にリアルの用事済ませてくるかな……じゃ、また後で』

 しかし、いくらリアルが夜だからって、ちょっとだけ時間が早い気もしたのだが、どのくらいの規模で来るのやら。しかも大型襲撃っていうから、モンスターの数が多いのか、強いのか見当もつかないってもなかなかにいやらしい。しかし逆を返せば大型だからこそ最後の売り上げをさらに伸ばすって事も視野に入れられる。
 
『最後の襲撃に参加できるのは?』
『バイオレットちゃんと菖蒲ちゃんは仕事だってぇ』
『儂は後でだな、ダンジョン攻略中だ』
『僕も途中になりそうです……』
『他はログアウトしてるからなんとも言えないわね……ま、やることは一緒だから』

 開幕参加は私、ジャンキー、犬耳、トカゲのやつもいけるな。これだけでうちのクランは50%くらいは戦力ダウンするな。
 を、補うための玩具達でもあるので、片手間に生産しつつ共有ボックスに放り込み、ショップに並ばせるのを一時停止。購入に来ていて買えなかったプレイヤーに関してはご愁傷様としか言えんな。

『開幕宣伝もしないし、配信もなし、私も即FWSからいつもの範囲攻撃で展開していくから、追い込みかけて』
『ボックスのは使っていいのか』
『そりゃそうでしょ、そのために用意してきたんだから』

 売るためにある程度自制はさせていたけど、もう最後の最後は思いっきり使って派手に締めくくろうじゃないの。
 これはもう後先考えずにからっからになるまで使ってもらわないとな。

『ちなみにどうまわる気だ、強いところから行くのか?』
『好きにしていいわ、代わりにひたすら倒せってだけで』
『兄さんたちは西から半時計らしいです』
『今回、順位もろもろ伏せられてるから、最後の最後まで暴れて、数を稼げないとダメそうだし、今まで以上に頑張ってもらわないとね』

 じゃあ今まで頑張っていなかったのかって言われるとそうでもない。なんだったら今までも十分私のわがままに付き合ってくれているわけだから、感謝しかない。決して表には出さない言葉だけど。

『最後の最後に半数はいないってのはちと寂しいが』
『しょうがないでしょ、私だって土日以外は昼間いなかったし』

 私もいないところで他の面子がどれくらい動いていたのも知らない。ノルマがあるとも言っていないし、あくまでも好きにさせつつ、私はこうするって宣言してそれに合わせてもらっているだけだ。

『何にせよ最後にでかい花火を打ち上げて、締めにふさわしい動きをしましょうってことで、強く当たってあとは流れで』
『結局ふざけてやってるのが一番だろう、うちは』
『よく言ってるやつだね、まじめにふざけろってぇ』
『振り回されるのは僕たちですけど』

 何を言ってるのやら、こういうのは勢いと場の空気でノリでやった方が上手くいくんだって。だいたい今までも結構適当にやってきてどうにかなってきたわけだし、準備してる時の方が綿密なんだぞ、うちは

『とりあえず私も準備するから切るわよ』

 準備といってもレシピを選択してポチるだけで、これといって難しいことはもうなかったりする。不足している材料はシオンがえっちらおっちら運んで補充してくれるので本当にポチポチするだけ。スマホゲーみたいな状態だけど、忙しいのは始まってからだし、ここは我慢どころ。

「文字通りでっかい花火を打ち出して、有名クランの仲間入りしたら、あいつらも黙るでしょう」

 だいぶ忘れてるけど、商人連中が歯向かえないようにするってのが目的だったわ。
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