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11章

303話 やる気の出る事

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 確かにしっかりと状態異常耐性が付いているのは確かだけど、それでも魔法防御に関してはそこまで高いと言う訳ではないの普通にがんがん魔法ダメージは通ってくる。

 吸い切った葉巻をぷっと吐き捨てながら、木の裏に隠れて相手の様子を見つつ、CHの排莢をしてすぐに弾を装填して一息入れる。
 何度か撃ち合い、殴り合いをしている上で改めて仕様を把握する事が出来たのも大きい所。まあ、私の持っている物で言えば、ファイアエンチャントになるわけだけど、これの仕様はあくまでも付与するって魔法になるわけだから、無属性から火属性に切り替わるのではなく、無属性+火属性になるので、置き換えじゃなくてあくまでも追加効果扱いになる。
 だから属性の付いていない攻撃に対して耐性の持っている死霊にはエンチャント分のダメージしか入らない、属性武器に関しては元々が無属性じゃなく何かしらの属性がベースにあるから、がんがん殴ってもダメージが出るからそういう相手に対して強いって事だ。
 そういえば忘れてたけど幽霊退治のスキル、あまりにも効果が微妙過ぎると言うか、記念スキルみたいな物なので効果が大して実感できる程じゃないので除外。

 で、此処までやってきた結論としてLv40近い相手に対してとにかく低威力の魔法を連打するって力業が一番有効になる。貫通弾だったり、特殊な弾頭を開発する前にしっかりとした属性弾を作る事の方が急務になってきたわ、これ。

『ねえトカゲ、前に貫通弾作ったけど、属性系の弾って出来たっけか』
『属性付与の出来る素材が希少で量産が出来ないから頓挫してるって言ったろ』
『あー、そういやそうだった……だから魔法に手出したんだったわ』

 がっつり望み薄な要素だったから忘れていたわ、そんな事。もうちょっと詳しくどう覚えていったらいいかメカクレの奴に聞いておけばよかった。いや、聞いたけど回数こなせって話にしかならなかったっけか。

『ポンコツは属性必須の時どうしてん』
『ん、あー、そんときは火炎瓶投げてるかな、あれ火属性扱いだから』
『……そりゃそうか』

 完全に頭からすっぽ抜けてたわ、確かに火がついて炎上するわけだから有効打になりうるのか。やっぱりうちの酒造は全部武器に変換しよう、そうしよう。

『属性絡みはきついよねぇ、弱くてもあった方が便利だしぃ』
『攻撃職が4属性揃えるのは基本よ、おねーさん』

 うるさいぞ、バトルジャンキー組。そんな事分かってるから一応の手段で魔法を4種揃えたんだっての。全く……と、思っていたら隠れていた木が吹っ飛ぶ。死霊の魔法攻撃、結構連打されていたか。
 
『武器を用意できる他職と比べるなっての』

 次の木に走り出しつつ、辺りを索敵。余計な敵がいないのを一度確認してから木の裏に隠れ、MPポーションで回復を入れてから指で銃の形を作ると共にファイアボールと。指向性を持たせて詠唱さえすれば発射されるって事だし、CH含めて銃を構えて銃口向けた状態ならそこから発射されたりするんかな。色々あれこれ手を出しているけど、結局やっていないって事も多いし、気が付かない事がまだまだあるもんだ。

 で、撃ちだしたファイアボールは火の軌跡を描きながらまともに炸裂。叫び声なのか鳴き声なのか分からない、ハウリングの様な音が発されると反射的に耳を押さえてしまう。うーん、派手に当たったわりにはダメージが低い。やっぱり魔法弾を覚えたとしてもその攻撃計算の方法がInt依存だったら意味がないか。そうなってくるとボマーと炎上効果でダメージの出せる火炎瓶の方がよっぽど有効的だな、こりゃ。

「火炎瓶、炎上、爆発……グレネードランチャーでも作って焼夷弾、爆破弾あたり出来れば属性相手も立ち回れそうだな……アタッチメント開発の前にそっち作らせりゃ良かった」

 出来るかどうか分からないが、試してみる価値はありそうだ。
 ……と、言いたい所なのだが、今はこの死霊を倒さなきゃならんって話。
 
「何だけど、もうこうなったらノーガード殴り合いでやった方が手っ取り早いわ」

 もう、こうなったら簡単だよ、ひたすらファイアボールを撃ちまくり、魔法攻撃を貰ってダメージを受けてきたらポーションで回復、打ち合いを繰り返してとにかくごり押し。
 ぶっちゃけもうなりふり構わないと言うか、倒せばギルドクエストは完了するわけだから、あれこれ考えるより先にさくっと倒してギルドレベル上げて、クラン資金の使い込みしてやるんだ。

「雑魚相手にも辛勝ばっかりだなあ……」

 折角状態異常耐性も上げてるので呪詛ばっかりぶっぱしてくれたほうが楽なのでそこは御祈りしつつ、そりゃもう泥仕合で撃ち合い。周囲に他のモンスターもプレイヤーも居なくて本当に良かった。






「こんなゲームに必死になってどうしたのって言われそう」

 手持ちのポーションは無くなるわ、MREはもう1つ食べる羽目になるわ、倒してぐったりした所で蛇に襲われて死にかけて、必死こいて逃げて戻ってくる事になるわでいつも通り。デスペナ貰った所で痛くはないと言えば痛くないのだが、それはそれで負けた気分になるので無し。
 そういや帰還アイテムってのも売っていたっけか。アイテム欄ももう一度しっかり見直してみるのもいいかな。ポーションを全部使い切ったし、そろそろ中級ポーションに手を出すか。

『うちの地下にある酒、火炎瓶にしてもいい?』
『駄目だ、今回のはいい出来だからあまり使いこみしたくない』

 しょうがないなあ……だとしたら露店にいた酒造クランの奴を問い詰めるとしよう。
 ついでにクラン資金引き出して露店の商品買い占めちまおうっと。クラン資金は私の財布と直結しているからいくら使おうが誰にも文句は言わせねえ。文句を言って良いのは秘書連中だけよ。

 してこのゲーム、いちいち先の街にもいかなくても、そこまで到達したって実績があればエルスタンでも購入できるのはとってもいい。中級のHPとMPポーション、ついでに初めて目にする帰還アイテムを購入。これで回復頻度と必死こいて逃げる必要も無くなるから良し。
 そうして必要な物を買い揃えてから露店に向かい、MREの礼と酒造クランが経営している所へ。




「もうちょっと食べやすくしてくれたら売れると思うんだけど、何でやんねーの?」
「趣味と実益は別の話だからな、して、どうだった?」
「味さえ目を瞑れば1個数万でも売れるくらいには強力、あとMREって事隠すってのも大事だけど」
「なるほど」
「狙い撃ちで耐性上げられるならいらんけど、そういう準備をするの大変だって身に染みたからなあ……うちのクランで一山当てない?」
「あまり興味が無いから、気が向いたらでいいか」

 趣味だけでやっている相手にはあんまり無理強い出来ないな。高額で売り付けて一儲けしてやろうと思ったのに、流石にダメか。

「じゃあ、気が向いたらよろしくー」

 手をぷらぷらと振って、その場を後に。次は酒造クランでやっているであろう露店だな。

 大体この手の露店ってよっぽどの事が無い限りは自分の気に入った所で開いているんだが、その例に漏れず、この間と同じ位置だったのであっさり見つけて早速物色。

「あ、いらっしゃい」

 早速と言う様にメニューを開いて在庫と個数を確認。
 料理と違って酒はポーションと同じ個数制限があるってのは盲点だったけど、とりあえず上から下まで……購入する前に聞いておくか。

「たしか酒造クランだったっけ?」
「趣味の集まりですけど、それが何か」
「あんたの所で商品にもならないアルコール品ってないかな、こういうバフ掛かったりするような物じゃなくてさ」
「あー、いっぱいありますけど、欲しいんですか?」
「大量にあると嬉しいなあー」

 ふむ、と軽く考えこんでからちょっと待っててと言われるので暫く葉巻を揺らしながら周りの露店も物色。ぷらぷら何かあるかと歩き回っていたら声を掛けられる、どうやら話がついたみたいだ。

「味が悪いから出したくないとは言ってますけど、其れでも良ければ」
「んじゃ、此処に20万あるからその分今取って来てくんない?」
「……人使いが荒い!」

 先払いで20万Zの硬貨データを渡してから近くのベンチに座って一息。さっさと取りに行けと軽く睨んでやるとばたついて動き始めるので、それを見てうんうん頷く。
 さて、後はガンナーギルドのレベルを上げていって、銃器を揃えて……。


『To The World Roadをプレイ中の皆様にご連絡を致します。
 本日オーラモンスターの討伐数が一定数を超えたので襲撃イベントを開始します。
 
 概要は公式インフォメーションに詳細を記載していますが
 一定期間の間、第一~第四の街へランダムでオーラモンスターが襲撃してきます。
 それを各自防衛をしていただく形になります。
 
 全体の防衛成功数、討伐モンスターの数により報酬が変わりますので奮ってご参加ください』


「イベント、みたいですね」
「先に進むほど強いモンスターなんだろうけど、雑魚で数を稼ぐことできんのかなぁ」
「どうですかね……はい、これ」

 20万Z分の酒を受け取り、目の前で錬金窯を出すとどばどばとそこに酒を開けていって、容赦なく蒸留してアルコール生産。そういや地味にスキル2枠の必須アイテムがいらなくなったってのも良いアプデ、相変わらず良い道具に関しては装備しなきゃいけないってのはあるが、ゲームのしやすさを追求している運営は良い運営。

「あ、定期的に酒もってきてくんない?」
「え、もう全部使ったんですか!?」
「うちクランってアルコールの消費量がロシア人より多いからな」

 葉巻の紫煙を大きく吸い、吐き出してにんまり笑うと共に、出来上がったアルコールをインベントリに放り込んでいく。

「いやぁ、イベント楽しみだなあ」

 肝心の武器の新調はまだできていないんだけど、何度かの襲撃でコツを掴んだらでいいかもしれんな。


『お知らせいたします。
 第一の街エルスタンにてオーラモンスターの襲撃が予測されています。
 襲撃予定時間は告知からゲーム内時間2時間後になります』


「早くないですかね、これ」
「そうねぇ……忙しくなるわよ」

 どうしようどうしようって感じで狼狽えているのを葉巻を揺らしながら楽しみ、ぐいーっと伸び一つ。
 まだ全然準備は出来てないけど、準備しながら終了に合わせて仕上げていけばいいか。

「見切り発車はいつもの事だし、ま、いつも通りだな」

 紫煙を吐きだしながらにぃっと口角を上げて街の外側の方へと視線を向ける。
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