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11章

292話 浪漫の詰まったボス

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 で、結局雑魚は高レベル4人に任せて最深部に到達。
 いやー、マジで道中楽だった、指示出したら隣のメカクレが吹っ飛ばすわ、前にいるドラゴン頭が薙ぎ払うわ、ちょろっとダメージ食らったら犬耳ショタが回復してくれるわ、ついでに言えば犬野郎の重介護付き。
 ただこれの問題はゲームとして楽しいかって所なんだよな。これを言われると微妙な所だけど、高レベル帯に混ざるとこうなるのはしょうがない。ついでにレベル上がったし。

 ステータスはAGIとDEXに1振って終わり。ついでにAgiUPってスキルでステを上げられるみたいなのだが、スキルのルール違ってて中々にめんどくさい。


スキル名:AgiUP レベル:0
詳細:【パッシブ】【消費SP2】
  :Agiのステータスを永久的にLv分上昇
備考:レベル上限無し 10レベル上がるごとにSP消費+1


 簡単に言えばレベル1つ上がるたびにステを追加で上げられますって事だな。スキルばっかり目がいきがちだが、こういうのもありっちゃありか。
 例えば私の場合、パッシブ型のスキル構成をしているが、SPを折角振ったのに使えないスキルってのが結構ある。ウサ銃を仕舞った段階で銃剣は完全に死んでいるし、2丁拳銃や銃捌きってのも複数の銃器を回さないと効果が死んでいる。何だったらアクティブの三度撃ちもCHじゃ死にスキルなっている。
 と、色々あげたけど装備の関係で死ぬスキルもある中で、ステータスを上げるのって何一つとして腐らないのがやっぱり一番でかい。

「なー、メカクレ、あんたステアップも使ってん?」
「え、あ、はい……私は、使って、ないです……振る余裕ないので……」
「兄さんは、振ってますよ?」

 道中だらだら話しながら無駄に中後衛組で仲良くなった気がする。

「実は覚えてるスキル、そんなに多くないんですよ?Res、Vit、HPにかなり振ってますし……スキルとステだけみたらぶっちぎりの地雷ですよ」
「性格が地雷だと思ってたわ」
「ああ、うん……それも、あるかな……」

 げんなりした顔で犬耳が耳を伏せる。初めて会った時も結構なごり押しして私とお茶してたっけか。何か懐かしい話だな、もうあれから一ヶ月経過しているわけだし。

「って言うかこの面子でまともなのって犬耳くらいじゃないの?」
「いや、うちの弟もなかなかですよ」
「純ヒーラーだと思ったら結構殴りなんだっけか?」
「まともなの私くらいじゃねーか」

 ドラゴン頭からの犬耳への攻撃もあって、やっぱり私が一番まともにやっていると言ったら全員が首を横に振りやがった、ガンナーとしては結構真っ当にやっているほうだと思うんだが?

「癖が強い奴同士で組んだら強いって事になるんかな?」
「意外と噛み合うって感じが良いんじゃねえか、着いたぞ」

 ドラゴン頭がハルバードの先をエリアの1つに向けると全員が少しぴりっとした空気を纏ってくる。
 すげえだらだらやってきたせいで殆ど道中何があったか覚えてないわ、てへっ。

「そういえばここのボスってどういう奴なんだ?」
「ああー、そういえば言ってなかったですね、あんなんです」

 犬野郎が前に出て盾を構えた状態で、エリアの中心を顔を向けてこっちの視線を促す。
 見た目と言うか造形はティラノサウルスなのだが、体を構成しているパーツは完全に機械化している。こういう感じの玩具あったなあ……高速移動しながらすれ違いざまにブレードで斬りつけてくるあれ……よりも機械だな。

「……ごめん、ファンタジーよね、このゲームのベースって」
「オーラ付きになるとバリエーションが変わるみたいで、少し前に気楽にやってきたら全滅しましたよ」

 そういう話はもっと先に教えて欲しいんだが、相変わらず説明不足だな、こいつはよう。

「まだ索敵中なのでうろうろしていますが、見つけると一気にこっちにやってきます。
 見た通り装甲も付いているので、剥がしきってからが本番です」
「陣形はこのまま、後ろの3人はある程度離れつつも離れ過ぎない、固まらないってのを意識か」

 このパーティと言うか基本的に前衛の動き方によって後ろがどう動くかが決まるので、犬野郎とドラゴン頭の動き方を聞いて、後ろ3人が頷いて、戦闘を開始。
 


 ティラノが此方の前衛2人を見つけるといきなり咆哮。びりびりと辺りが振動するくらいの叫び声を発しつつ、のしのしと走り、あのでかい口で噛みついてくるので犬野郎がカットイン。おおすげえな、口の中って言うか歯が一本一本ドリルみたいになっている。
 金属のこすれる音を辺りに響かせつつ、耐えている所をドラゴン頭がさらに攻撃、装甲が分厚いのか甲高い金属音をさせて大きく上に弾かれるとすぐに持ち直してもう一撃。

「装甲があるとFWSもCHもまともに通じないからまずはあれを剥がすのが先決だから頑張ってほしい」

 一応トラッカーを使って当たり判定だったり、どんな感じなのかを確認したが、見たまんまなので効果オフ。
 前衛2人は引きつけてから攻撃が止まったら攻撃し返してをやりながら立ち回っているのを考えてなるべく犬野郎とボスが直線状になるように多少後方で、メカクレが魔法矢、私が苦無で装甲の隙間を狙ってみる。
 うーぬ、やっぱり魔法矢って威力高いな、それに比べて私の苦無は当たってはいるけど効いてはいなさそうだ。
 やっぱりCHを使って攻撃したい所なんだが、銃弾の数に限りがあるし、装甲に弾かれると本体に固定ダメージが届かない。こんな相手なら貫通弾の少しくらい持ってくりゃ良かった、トカゲの奴が良い感じに開発出来てるとか言ってたっけか。

「アカメさん、もう少し、攻撃してもらっても……?」
「私じゃ、中々攻撃が通らないのよねぇ……弾も有限だし、無駄弾撃てないから、装甲が剥がれてからが本番なのよ」

 前衛の攻撃を止めるって動作に合わせ、メカクレと一緒になり、左右から挟むように苦無や手裏剣を投げる、あんまり突き刺さらないし、思いっきり弾かれて金属音させてるわ。

『あんた、銃はどうしたんだ?』
『直撃しないと売りがないのよ、装甲剥がしてくれないと無理だって』
『例の一撃必殺はどうですか』
『もうちょっと動きに制限掛けないと厳しいかしらねー……撃つなら準備するけど』
『狙ってみましょう、ワンパターンと思われるかもしれませんが、倒すってのが目的ですから』

 了解と返事をしてから久々にFWSの砲身を取り出しつつ、なるべく攻撃が届かない位置に少し下がり、CHを差し込むのと同時に展開開始。
 それにしてもワンパターンって知ってるって事は配信でも見てたのか、あの犬野郎は。

「構えてないと行けないの面倒なのよね、これ」

 片手で砲身を支えながら葉巻を取り出し、咥える。
 これで倒したら思いっきり一服しておきたいが、なんとなーく、駄目そうな感じがある。
 一応貫通弾だから装甲も抜けるし一発で倒せるとは思うんだが、うーん、まあ、言われた通りにやってみようや。

『30秒耐えてちょーだい』
『余裕ですね』
『余裕だな』

 こういう時には前衛組は非常に頼りになるわ、とりあえずまったりのんびりといつものチャージ音を聞きつつ暫く待ち、チャージ完了。

『とりあえず当てたら倒せると思うから、正面に捉えてほしいんだけど』
『じゃあ、私が、大きいのを、当てます……!』

 私の少し前で大きい魔法の弓を構えてしばらくすると放出音を響かせながら、ボスの体右側の装甲をぎゃりぎゃりと抉って吹き飛ばす。
 それに合わせてヘイトが向いたのか、メカクレの所に走り始め、前衛2人を弾き飛ばし、こっちにやってくるのを犬耳が顎下に滑り込み、杖で一発。あいつマジで殴りなんだな、回復しつつ殴れるってこえー。
 軽く蹈鞴を踏んだか?少しだけヘイトが分散し、殴った犬耳の方を向いたタイミングで引き金を絞り、一撃、しっかり側頭部から尻尾まで一発で貫通よ
 
「ふーい、やっぱオーラ付きでも余裕じゃね、これ」

 バシュっと排気音をさせながらCHを分離させ、FWSの砲身を戻して葉巻に火を付ける。

『アカメさん、避けて!』

 は?と頭に疑問符を出していた所、体が急に「く」の字に折れ曲がり、数m吹っ飛ばされてごろごろと転がり、立てなくなる。やっべ、ダメージを受け過ぎた、HP4しか残ってねえ。で、急に小さく赤くウインドウが出てきて「重傷:骨折」と表示される……治らないとこれ立てなくなるのか。

『何があったか、おせーて』

 うつ伏せで惨めに倒れたまま状況を確認。リアルで骨折と言う訳ではないし、死ななきゃ安い。と言っても、現状動けないので死んでいるのと変わらない気がする。

『えっと、分離しました!』
『ガヘリス、アカメさんの回復!ウドラクは私と抑え!メタリカはガヘリスの援護を!』
『……私死んでも行けるだろ』
『そう言うのは私のやり方に反するんでダメです』

 まあ、確かに全員生きて倒した方が良いに決まってるわ。
 
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