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11章

287話 大体は思い付き

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「ねー!実験台だからって本気出し過ぎじゃない!」
「配信してるんだからいいじゃない」

 メインのガンナーの状態で障害物越しにお互い装填を挟みつつ、声を上げて会話する。
 今回戦っているフィールドは障害物の多い雪合戦のフィールドって感じ。だからこそではあるのだが、相手がいるであろう所をとにかく滅多打ちにしているかいないかを判別する頭の悪い戦い方をしているのだが。
 向こうはハンドガンとライフルを使って、こっちはいつも銃にプラスして忍者セット。明らかに向こうの方がライフル分、火力が高い。

「そーだけどー、もうちょっと手心をさあ!」
「こうやって会話しながら戦ってるだけ十分してるじゃん?」

 対人関係でうだうだ喋って余計な戦闘時間を長くさせたり、最後まで撃破の確認をしないで油断する奴、まあ、この間の土蜘蛛でやったばっかりだけど……そもそもマジになればなるほど黙って立ちまわれって思うわ。
 と、そんな事を思っていたら私が隠れていた障害物、物は土壁になるんだが、それが吹っ飛ばされて土煙が上がり、土砂が降り注ぐ。改めてあのライフルの頭おかしい所が出てるわ、威力だけ見たら死ぬほど強い、派手だし、新品貰うとは言えあいつに1回あげるのちょっと惜しくなってきた。
 何て事よりも吹っ飛ばされた障害物、いや障害物はもうないな、別の所にカバーに入って一息。
 ちらっと顔出してポンコツがどこにいるかをチェックすると共に、弾が頬を掠めていく。

「初めて会った時は変な奴だって思ったけど、よう成長したわ」
「微妙にけなされてる感」
「褒めてんのよ?」

 顔を出した時、最後にいたであろうポイントに向かってしゅぱっと手裏剣を放物線上に投げて障害物裏に当たるように投げる。
 これもスキルの恩恵だと思うのだが、どう飛んでいくかってのが感覚的に分かるようになったので、こういう芸当も出来るんだろうな。
 それでもあいつを仕留める、ダメージを与えるって事にはならないのが問題になるんだけどさ。
 
 はっきり言って接近戦をしたら完全にももえの方が強い。
 格闘戦をしながら銃を撃ちつつ、リロードし、曲撃ちの様な事も駆使して動き回るので、接近すればするほどあいつのテリトリーに入りこむ形になる。
 そして使う武器もハンドガンがメインってのも関係するのだが、銃の特性上、攻撃力は正直な所重要じゃない。そうなってくるとSTRはハンドガンを扱える最低数値、しかも接近戦ってなるとA>D型が確定。私の様にA>D>S型だろうけど、配分はA寄りって所だな。
 固定ダメージの数値が低いのを連射力でカバーするハンドガンだが、十分な弾さえあれば固定ダメージを積み重ねる事も出来るし、回避しながら肉薄もできるし、撃ちながら引けるし、ゲームとしてみると死ぬほど厄介な相手でしかない。

「私がやらないような事をしてガンナー界隈が賑わうってのも良い事なんだけどねぇ」

 私の隣にあった土壁がまた1つ吹っ飛び、土煙と土砂が巻き上がっている中、爆裂手裏剣を火を付けない状態でももえ側の土壁に突き刺しておく。

「大体ボスが攻撃しない時って仕込みだよね」
「よく分かってるわねえ」

 勿論と言いながら、こっちの土壁を1つ1つ破壊してくる。
 いいね、相手の動き方を制限しつつ、自分の攻撃範囲に持ってこさせる立ち回り、いやあ、成長しているなあ……だからと言ってそのままホイホイとその通りに行かせてやるってのも私じゃないので、攻勢に出よう。

 また1つ土壁が破壊されたタイミングで前に、敢えて相手への距離を詰めつつ、手裏剣を4枚ほど片手に持ってさっきと同じように放射線を描く山なりに回転を掛けながら投擲。
 最後に私を撃った土壁の裏へ、回転を掛けて落ちている手裏剣に向けてウサ銃を構え、息を止めてから一発跳弾を撃ち込み、障害物裏に弾を跳ねさせる。

「うっわ、何今の!?」
「案外できるもんねえ……このゲームの良い所を感じてるわ」

 思い付きでやったことが成功すると楽しいわ。
 まあ、完全に物理法則を無視した跳ね方したけど、そういうのは気にしない。ゲームにリアルを当てはめていくって事はナンセンスって事よ。
 兎に角、手裏剣を使って跳弾をさせる複合技は中々良いな。もう一回同じようにやってみろって言われると多分そんなに出来ないんだろうけど、一回そう言うのがあると警戒しなきゃならないというアドバンテージはでかい。
 出来なくても「ある」と、思わせるだけで動きの制限が出来るってもんよ。

 こっちは裏まで攻撃できるというのを有効活用し、手裏剣を上に投げるだけで警戒して足を止めている……気がする。こういうのがあると相手の動きを制限や操作できるってのがやっぱ強いよな。
 明らかにこっちに攻撃してきたらいいってタイミングなのに、上に飛んできた手裏剣を視認させ、銃声を響かせるだけでバタつくのがよくわかる。

「だからって攻撃の手を緩めちゃダメだろう」

 爆発してない爆裂手裏剣が突き刺さっている土壁の方に誘導させ、頃合いを見てファイアエンチャントを掛けたウサ銃でそれを撃ち抜き、土壁ごとももえを吹っ飛ばす。

「ぶげっ」
「まーだまだ、甘いぞ、お主」

 撃った後の銃は別に保持しなくてもいい、銃自体はベルトで肩に提げているだけだから、ぱっと手を離して投げ物ポーチに手を突っ込んで爆風で障害物から出てきたももえに向けて手裏剣打ち。

「にゃおー!」

 おお、転がりながら撃ち落としたぞ。4枚投げて1発刺さったので悶えているが。
 と言うか、あそこまで確定で入るならさらに爆裂手裏剣で追撃してもよかったな。八兵衛八兵衛。もっと非情にならないとオーラ付きにやられたりもするってのに。

「タンマー!タンマタンマー!」
「はいはい」

 ごろごろ転がりつつ、移動しながら立ち上がろうとしている所を狙って片手でG4を撃ち込みながらもう片手で投げ物ポーチから苦無を取り出してしゅぱっと投げ付ける。
 銃は相手に、投げ物は相手の進行方向先に投げて牽制。G4を撃ち切ったら装填スキルで予め詰めておいたマガジンを空中で入れ替えて、その間にも苦無で追撃。
 この投げ物、手裏剣と苦無だが改めて打剣を取ってその違いと言うのがよくわかる。手裏剣は薄さや軽さ、形状から曲げ投げたり、変化球を打てるのが強み。逆に苦無は直進性が強く、手裏剣よりも貫通性が高い。現実ではどうなのかは知らないが、このゲームとしてはその二つで区別を付けているって事だな。

「みゃおー!」
「お前も猫耳獣人にしてみたらどうだ」
「やーだー!ニーナちゃんとキャラかぶるぅ!」

 そこは気にするんだな。

「兎と猫、蜥蜴、竜はいるからな、犬にでもなるか?」
「何か屈辱なんですけどー!」

 流石に近接行動が上手いだけあって回避しながら素早く立ち上がって此方に2丁拳銃で応戦してくるのだが、しっかり弾幕張って撃ち落とすのは格闘系スキルのおかげかな。

「大体犬だったらサイオン姉妹じゃないですか!」
「あー、確かに忠犬って感じはあるな」

 投げ物ポーチから手裏剣を指に3枚挟んで打ち、落とされるのを確認しながらG4からCHに持ち替えて撃ち装填を繰り返す。
 それにしてもこんなにノーガードで中距離で撃ち合いなんてあんまりないな。折角なら障害物が樽だったら西部劇っぽくて雰囲気あったのに、もったいねー。

「装填しながら攻撃するのずるくない!?」
「悔しかったらお前も忍者になってみい」
「もう取れないの知ってるじゃんか!」
「さて、何の事やら」

 負かした後に暫く宇宙猫T着せて普及させてやるってのも面白いな。
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