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10章

274話 ハイクを詠め

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「からくり屋敷ってリアルでもなーんかワクワクするもんだったわねえ」

 少し古い遊園地だとよくあったけど、ミラーハウスってすげえ好きだったわ。思いっきり走って鏡にぶつかる何て事もあったな。とりあえずそういう昔話の前に今はこのからくり屋敷を突破しなきゃならん。
 と、言ってもちょっと前のイベント時の様な難度ではないだろうし、さくさくっと攻略しよう。

「まー、本当は色んな所に目をやって仕掛けや隠し通路を探して先に進む……って想定なんだろうけど、これガンナー相手には分が悪いよな」

 ぶっちゃけこんな所に時間を掛けるというのも無駄なので容赦なくトラッカーを発動。
 おー、見える見える、足跡や通った痕跡がばっちりよ。隠し通路に罠、正解の道順等々……どうぞ通ってくださいと言わんばかりなレベルでべったべたに付いている。
 悲しいかな、私に目を付けられたのが運の尽きだな。


「……早くないっすか?」
「釣り天井の仕掛けと針山はなかなかえぐかったわ」

 葉巻をすぱーっと吸いながらおしゃべり忍者の待っている所までやってくる。屋敷の構造的にぐるっと遠回りしてきたって感じか。
 それにしても内部探索はトラッカーさまさまだった。ケルベロスじゃなくて索敵系の二次職でも面白かったかもしれない。どっちにしろ特に面白い事も無くさくっとクリアで忍者ギルドに。
 
「それで、何で忍者をサブ職にするんすか?」
「説明すると長いわよー?」
「まあ、忍者仲間が増えるってわけっすから、聞いておきたいっすね」
「投擲と打剣って装備武器関係ないでしょ、スキルを使って投げる物に関係してダメージが出るって聞いたけど?」
「そうっすね、投げる物のステータスに関係して攻撃力や効果が違ってくるっす」
「ガンナーとして使えるスキルかつ、銃を装備したままで銃を使わない攻撃が出来るってのが大きいのよ」

 じゃあ魔法でいいじゃんって話になるが、魔法は魔法で射程がきっちり決まってるしMPも消費するし、両手で持つ銃だと構えを解かないといけない。
 投げ物なら持っていれば大丈夫そうなのもあるし、MPの消費はあるだろうけど、魔法よりは消費しないはず。何だったらその辺の石を拾って投げてもいいし、銃弾をそのまま投げ付けられるかもしれん。

「って思っているだけで実際は覚えてみないとわかんないけど」
「あー、投擲と打剣っすか……確かに装備しなくても使えるっす。サブアームとしては優秀っすねー、投げ物が消耗品なのがネックっすけど」
「金物生産出来る専属がいるし、私も鍛冶は出来るから大丈夫だと思うわ」

 会話しつつ、忍者ギルド……おお、受付はしっかり忍者だ。どこぞの忍者キラーの様な格好を想像したけどそうでもないな。とりあえずサブ職として忍者に転職。本当にあのからくり屋敷を突破するって条件だけってのは意外だったが、楽で良し。
 
「ギルドの所属はどうする?」
「しとくわ」
「では之に」

 ギルドに加入しますと言ういつもの奴にさらっとサインして、加入処理も終了。

「それと転職に合わせ、これを授ける」

 忍者刀と普通の手裏剣10枚、苦無10本の入ったポーチを貰う。
 サブの間はこれが基本武器か、SP稼いだらガンナーに戻る予定だし、とりあえずの火力が確保できれば十分か。

「ちなみにサブから本職に戻すってどうするの?」
「メニューのステータス画面で選択できるっすよ」
「でも、戦闘中に切り替えるとか出来るよな、それ」
「あー、サブから本職、本職からサブに切り替えるタイミングで装備が全部外れるんすよ、戦闘中に切り替えは出来るっすけど、装備し直しでもたつくんでおすすめしないっす」

 案外その辺の抜け道的なのは防いでいるんだな。装備の時間さえ稼いでくれれば切り替えられるってのも戦法として有りではあるな。
 と言うか、確かに装備が全部解除されているので、問題なく装備出来るものを装備しなおし。銃器類は全部仕舞い、ガンベルトはそのままで、忍者刀と投げ物の入ったポーチを装備。ガンベルトにそのままポーチ括りつけられるのは楽で良かった。10発しか仕込めなくなったが。

「それにしたってどこでそんなTシャツ手に入れたんすか?」
「公式スキンだけど」
「派手な忍者ってイメージじゃないっすわー」

 確かに伸び広がった宇宙猫Tを着ている忍者っていないわな。

「まあ、言わなきゃ分かんないし、刀ってあんまり武器として持った事もないから新鮮だわ」

 どこぞの一狩り行くゲームや、鬼を殺すゲーム、刀の出るゲームは多いけど、あんまり好きじゃないのよね。侍になるゲームですら結局槍を使うし。
 とりあえず忍者刀を背負う状態で装備したが、何となくしっくりこない。

「闘技場で戦い方教えてくれない?」
「いいっすよ、忍者仲間には優しくするのがモットーすから!」

 ガンナーなんだけどな、私って。



 そのままの足で闘技場にまた戻り、単純な対人練習のモードで部屋を建てて、おしゃべり忍者と対峙するが、斬った張ったしたところで勝てる要素も無いので忍者について色々聞くだけだな。

「とりあえず忍者にも色々種類があるっす」
「一括りでいいんじゃないのか」
「まずは接近戦をする、遠距離戦をするで大きく変わるっすね、体術や刀を使って相手を翻弄するのが接近戦型、投げ物や忍術を駆使するのが遠距離型っす」
 
 それ以外にあるのかって突っ込みたくなったが、此処は黙っておこう。話が長くなる可能性が高いし。

「投擲、打剣は後者タイプっすね。バイオレットはハイブリッド型の忍者っすけど、サブに剣士系だったはずっす」

 あれだけ刃物持ってるのは病気だと思ったが、しっかりビルド自体は考えられているのか。結構アホの子だと思ったけど、合理的と言えば合理的か。いや、確実に趣味もあるだろうけど。

「んー、剣術スキルはいらないし、投げ物だけあればいいんだけど」

 背中の忍者刀に手を掛けて一気に抜き出すとと共に刀がおしゃべり忍者に風を斬りながら放たれる。あー、うん、完全にすっぽ抜けたわ。

「うおっと!!……剣術系のスキルが無いと『上手く扱えない』って事があるのですっぽ抜けるんすよ……何体かモンスターを倒せばすぐに出てくるっすから、取得難易度は低いっす」
「じゃあ、こっちは?」

 手裏剣を1枚ポーチから出すと刃の部分を掴んで、真っすぐダーツを投げるようにしゅぱっとおしゃべり忍者に向けて投げる。お、案外真っすぐ飛ぶじゃん?
 とは言え、そこまで速い訳でもないのであっさりと弾かれ、金属音を響かせる。

「投擲、打剣もモンスターの撃破数で取得できるっすよ。ある程度は忍者の職業補正でちゃんと飛ばせるっすけど、人並み以上ってレベルなんで、ちょっと強い相手になると通用しないっす」
「こっちも一緒か」

 もう1本、苦無を取り出してびゅっと風切り音をさせながら投げ放つが、やっぱり叩き落とされる。

「基本的な投げ動作に関してはゲームの補正が掛かるっすからそのメインの投げ物2つはそんな感じでいけるっす、それにプラスして打剣のスキルが合わさると」

 私よりも明らかに鋭い風切り音をさせて手裏剣が投げられて、足元に2枚突き刺さる。
 確かに私が投げた貧弱な速度でもないので殆どが目に見えないってのは凄いな。

「まあ、これも何枚も投げた成果っすから、スキル覚えるまで投げまくるしかないっすねー」
「累積解除って大変だわ……」

 足元に突き刺さった2枚の手裏剣を両手に1枚ずつ持つと共におしゃべり忍者に向けて投げ放つ。
 当たり前だが弾かれ、その弾いたのを上に飛ばして自分の手元に戻す。

「人に努力してる姿って見せたくないんだけどなあ」
「覚えたらすぐっすよ」

 なんだろうけどさ。
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