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10章

268話 消費と浪費は別問題

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 3人組と道中他愛もない話をしながら、エルスタンに戻り、ついでにショップでアイテムの補充を付き合う為に露店巡り。3人ともボスのドロップ品をそれぞれ捌いてそれなりな金額を手に入れたのか、色々と買いこんでいる。

「そんなに買うと後で困るぞ」
「でも、このゲームでそんなにゼニーって使います?」
「んむ、んっ、確かに?」
「食べながら喋るんじゃない」

 確かに言われてみれば、公式として存在しているショップってのはそこまで金を使う事はない、と言うか高額な物がほぼない。装備に関してもそこまで高くない。何だったら同じステータスの装備品が露店でもっと安く手に入る。
 私の使っている銃剣の先もガサツエルフのナイフをずっと使っているし、色々仕込んでいるから500Zではあるけど、私も同じようにナイフ作ったら店売りよりも安く作れるし売れる。

「確かにプレイヤー間の取引でもそんなに高額な物ってないな」

 ふむ、と顎に手を当てて今までの事を考えてみるのだが……私って結構高額な取引ばっかりやってるから何一つ参考にならんわ。
 序盤は肉や皮を売って凌いでいたけど、ガンナーの人口が少ないってのを利用してぼろ儲けした罪状があるって。儲けたってので言えば一番大きいのは火薬か。
 
「……まあ、欲しい物を手に入れたいってなると結構な額使うけど」
「アカメさん、どれくらい金もってるん」
「手持ちは1万もないわねぇ、共有財産って意味で言えば700万くらいじゃないかしら」

 うちの資金は完全に私が掌握しているけど、使いすぎるとすぐに怒られるから、ある意味で財布を握って入るが、財布は握られている状態なんだけどさ。

「このゲームじゃ金がなくても何だかんだでどうにか出来るし、会ってもしゃーない事多いのよ……で、さっき言ってた古参プレイヤーを紹介できるけど、どーすん?
「僕はいいかなあ……仲間内でわいわいできればいいし」
「うちもそんなにかなぁ、強くなれば色々出来るけど、そんなにガチって訳じゃないし」
「暫くはこの3人でゲームしたいな」
「そかそか……ま、気が変わったら教えてちょーだい」

 無理やりに紹介してもしょうがないし、何かの拍子に気が変わったらでいいだろう。こういうのは本人の気持ちってのが大事だから、無理強いする必要もない。なんだったらしつこいとうざったいから、犬野郎はしっかり私の事を見習うべき。

 とりあえず露店巡りも終わり、マップ中央転移地点の所まで戻って来て、ベンチに座って一息。
 
「ふーい、お疲れさんっと……」

 それに合わせて3人ともお疲れと言い、ベンチに4人で座る状況に。んー、いや、良いんだけど、もうちょっと別れて座るとか、そういう選択肢はないんだな。
 
「私はクランハウスに戻るかなぁ」
「アカメさんのクランハウス見てみたいな」
「見学させてーや」
「俺はいいかな、此処で待ってるよ」

 あー、やっぱりこいつ、私のクランと正体を完璧に知っているな。と言うかソロでやってる時に私のクランハウスにも来ているな、これは……それは良いとして、とりあえず2人を自分のクランハウスに案内するか。

 エルスタンの西側、自分のクランハウスの前までやってきて、いつものように中に入る……のだが、玄関先で足を止めて看板の上を口を開けて眺めている。

「なあ、あれって、この間のボスだよな?」
「あんなのいつ手に入れたんやろ……めっちゃ目立ってるやん」
「中入るわよ、中」

 そう声を掛けるとバタバタと中に入り、ショップの中を物色し始める。
 
「じゃあ、私は私でやる事あるから、好きに見てていいわよ」

 そう言って上に行くとシオンが近づいてきていなかったときの報告をし始める。私がいない間の売り上げに売れ行き、ついでにクラン資金が増えたから使い過ぎに注意と小言まで言われる。
 金は溜めても死蔵するだけだし、ぱーっと使った方が有意義なんだよ。

『蒸留器買いに行くぞ』
『分かった、そっちに行く』

 パーティ組まないと行けないのはそこそこめんどくさいんだよなあ。こうなったら私も酒造スキル手に入れていちいちパーティ組まない様にしておくか。
 ああ、そうだ、解除しないと新しいのに入れないし、一応断り入れてと。

『これから用事があるからパーティ抜けるわ。何か用事があったらクランハウス来てくれれば知ったよしみで協力してやるから』
『俺はフレンド送りたいな』
『あ、うちも』
『僕も送りますね』

 3連続でフレンド申請が飛んでくるのでそれを受理してから3人組パーティを抜け、髭親父を待つ……間に、ショップで物色しているユーマとシロの相手。
 物珍しい物もあるわけだが、シロは食べ物に使いすぎたと嘆きながらじいーっと商品を物色しているし、ユーマはユーマで新しい武器を買おうか悩み、ついでに言えばに少しまけてくれと頼みこんでくるのだが、そんな事は許さないのでしっかり貯めてまた来いと言う。いくら知り合いで始めたてのプレイヤーとは言え、そんな甘っちょろい事は許さない。

「必死に貯めて買いなさい、その方が思い入れも出る」
「良い武器だったんだけどなぁ……誰かに買われそう」
「取り置きしておいてやるから、頑張って稼ぎなさい?」

 そしていつもの定位置にいるアイオンに欲しがっていた武器を一応取り置きをさせていると、髭親父が来る。それにしても本当に趣味以外なにやってんだろうな。

「それじゃあ、私は行くわ」
「はい、ありがとうございました」
「おおきにー」

 キャラなのか、何なのか分からんくなってきたな、あの関西弁。



「悪かったな、パーティー組んでたのに」
「良いって……やっぱり教えるって事は柄にないなあって再認識しただけだし」
「そうか?案外優しい所も多いと思うんだがな」

 くつくつと私の事をみながら笑うのにちょっとイラっとしたのでケツバット。
 痛くも無いのに「痛い痛い」と言いつつ酒造ギルドのほうに進む……その道中、ボロボロになったポンコツ、やけに元気な紫髪、、歩きながらシャドーしているジャンキー組とも合流し、ついでと言う様にみんなで行く事に。

「いやー、やっぱおねーさんとこ、面白い子いるわー」
「ねー!何でこうもバトルジャンキーと一緒にするのー!」
「配信映えするって喜んでたからアウトだよねぇ」

 ぎゃーぎゃー騒ぎながら、さっくりと酒造ギルドで追加の蒸留器を購入して設置。
 その様子をジャンキー組3人が手続きを猫の様に私の後ろから覗き込んでほうほうと言いながら眺めていたのはちょっと鬱陶しい。猫じゃらしでも買っておけば延々と遊んでいてくれる気がする。

「購入完了っと……うちの地下室酒臭くなってしゃーないわ」
「悪いなあ、自分の家やクランハウスを持つとなるとやはり金が掛かるからな」
「甘え上手って事にしておくわよ」

 しょうがないなあとため息を吐き出しているとジャンキー組がぶーぶーと文句を言い始める。まあ用件ってのは大体分かるけど。

「いいなーいいなー、十兵衛ちゃんばっか買ってもらってぇー」
「そーだそーだ、私も新しい銃ほしいー!」
「あ、じゃあ新しい剣ほしいなー」

 自前の金でもなければ、クラン資産に手を付けたわけじゃないので、髭親父にばっかり使っていると言う訳ではないんだが、こういうのは出所がどうこうっていうよりも、買っているという行為を見ると欲しくなるって事か。

「別に私の金じゃないからいいでしょ」

 そう言った所でこの我儘ジャンキー共に通じる訳もなく、駄々こねてほしいコール。まー、たまにはちょっとくらい買ってやってもいいか……って言っても何が欲しいんだ。

「あんまり甘やかすと浪費癖が付くぞ」
「新規プレイヤーが金貯めてうちの武器を買うっていうのに、まったく……」

 おでこに手を当ててふいーっとため息を吐いている間に、あれが欲しい、これが欲しいと相談を始めているジャンキー組をチラ見しつつ心の底から思うよ。
 さっきの3人組の方が聞き分けが良くて素直だったって。
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