上 下
287 / 622
10章

265話 旅は道連れ世は情け

しおりを挟む
 さて、うちのクランにまた1人バトルジャンキーが増えたわけだが、とりあえずジャンキーとポンコツにぶつけてしばらく様子を見るかな。

『新しいのが入ったから、仲良くしてやれ』
『はーい、バイオレットでーす、よろよろ』
『気が合いそうなのはマイカとももえって所かしらねぇ……連れまわしてやんな』

 そのままわいわいと自己紹介合戦を始めるのでその辺りはスルーしつつ、ちょっとエルスタンの街先に出る。あともう1つやる事やったら装備を揃えてドルイテンから先に進もうかね。

 で、いつもと言うか、毎度おなじみの北エリア1-1。
 それにしても私のT2Wってこの辺から始まったよなあ……あの頃は銃剣も付けない銃で殴ってカウンターを貰って死んだり、銃剣を使っても1匹倒すのにすげえ休憩しながらやっていた頃が懐かしい。
 今じゃもう、実験動物と同じ扱いしてるし。

「さーて、実験開始よ」

 ぴょんぴょん跳ねているラビットを見つけてウサ銃を構え、付与魔法。
 効果時間は短いし、さくっと攻撃しないとな。

 とりあえずウサ銃を使ってラビットを倒すわけだが、付与を掛けた状態で銃剣で一撃。ざくっと突き刺さる音と手ごたえを感じ、そのまま2、3度斬りつけるとあっさりと撃破。
 レベル差30もあるし、今更こんな所でやられる理由がないのでとっとと具合を確かめる。

 今回試しているのは銃剣にも付与が乗るのかどうかって話なんだが、ばっちり乗っている。
 この付与魔法、武器全部を別の属性に変えるものっぽいから、付属している銃剣も武器全体にカウントされているって事か。

「そうなると、もう1つ試しておくか」

 ウサ銃を肩に掛け、いつものルーティーンでもある葉巻を咥えながら先に進む。
 それにしても、こんなにガンナーの事をどうこうしている奴っていないだろうよ、ただ私より強いガンナーってのもそろそろ出てくるよな。
 一時期は完全に地雷職だから全員避けたってのに、また人口が増えて今じゃ1,000人くらいガンナーがいるらしい。今のトータル人口がどれくらいか分からないが、最低でも5万いるわけでそのうちの1千なら結構な人数がいる……んだろうか?
 ゲーム開始の頃に比べればガンナーの情報も揃っているし、銃弾も作りやすくなったし、偽物の所に行けばガンナーを揃えてどうにかやっている。向こうの方が名前としては売れているからあっちに新規が流れていると、この間言っていたな。

「うちももうちょっと新規に優しくしてもいいのかしらねぇ」

 人口は増えているし、ポンコツが配信をしているから、それなりな知名度もあると思ったんだが、どうやら偽物の方へポンコツが誘導しているってのもちらっと聞いたな。何でもかんでも聞いたり言っていたのを思い出すのばっかりだよ、私は。

 うちのクランに新規が来たところで振り回されてそんなに長続きしないだろうし、現状が一番安定しているんだろうなあ。どうせメンバー増やしたところで余計なトラブルが起こるのも予想されるし、ごたごたするのは好きじゃないからこのままでいいや。







 そんな事を思っている間に、久々に暗闇洞窟にやってくる。
 付与魔法で硬い相手の時はどうなるかって実験よ。それにしてもあんなに不人気だったのに結構な人がいるな。
 あっちではコボルトとがんがんやり合っている剣士、その反対側では蝙蝠に手を出して凄い勢いでダメージを食らっているパーティーに、ロックラックを殴っているガンナー。
 そういえば硝石の情報が流れたってのもあってちょくちょくそれ狙いの奴が来るようになったんだっけか。あまり難しくないから硝石丘を作るのがガンナーとして第一歩って話もあったかな。ただ、畑を持つのってそれなりにハードルが高いから向いてないと思うが。

 そうして手頃なロックラックを見つけて付与魔法からの銃剣で斬りつけ。キーンと金属同士が響く音がすると共に弾かれて手が痺れる。なるほど、付与魔法込みでも硬いって事か。
 レベルが上がって強くなったとはいえ、銃剣だけでの立ち回りになると、途端に弱くなるからしょうがない。
 久々に銃剣を使ったのもあって、単純に硬いうえにそれなりに強い敵って久々だな。一応固定ダメージは入るけど、もうちょっと付与魔法を試して殴ってみるか。
 
「それにしたって、久々だな、こんな風に戦うのは」

 ぎゃりぎゃりと音を立てながら回転してくる攻撃を足で抑え込みながら銃剣でがんがんと殴る。
 防御力を上げてはいるとは言え、攻撃を抑えているだけでもダメージは結構受けるな。
 まあ、それでも永遠と回転攻撃をしてくるわけではないので、止まった所を殴って蹴って、付与魔法を掛けた銃剣で叩きつけ、しばらく戦うと共にふいーっと一息大きめにため息を吐き出して撃破。

「前よりは戦えるけど、やっぱ硬い相手に対しては弱いなあ」

 ロックラック自体、防御力の高いモンスターだが、体=本体で特殊な能力も無いので撃ち込めばあっさり倒せる相手ではあるんだけど、こんな所でバンバン撃つってのもなあ。あと、閉所だから銃声がかなり響いて煩いってのもある。

「あの、パーティ組みません?」
「んー、パーティ?」
「多分硝石狙いのガンナーさんだと思うんですけど、狙いは一緒だと思うんでパーティで行きませんか」
「ふむ……ま、いいかな」

 そういうと頭を下げてお礼を言ってからパーティーの申請が飛んでくる。
 サクッと受理して、声を掛けてきた奴以外にも、もう2人、少し離れた所にいるのが強調表示される。

『よろしくお願いします、あのお名前は』
『ああ、えっと、アカメ』
『よろー』
『よろしく』

 剣士2人に僧侶って所かな。仲良し3人組で新規プレイヤーって感じだな。
 私が入って前2後2でバランスは良くなったから、相手もしやすいって踏んだのかね。多分と言うか、確実にそうなんだろうけど銃剣でロックラックを殴っているって所から、銃弾の切れた初心者ガンナーと思われたのかね。
 やべ、ちょっとこの状況面白い。

『僕はユーマ』
『うちはシロ』
『俺は柊だ』
『はいはい、宜しく……それで、どこまで行く気だったん?』
『えっと、最深部のボスの辺りまで行こうって話でして』
『途中にいるロックラックも倒しつつやね、硝石1個が良い値段で売れるし、そっちも狙ってるって話』

 未だに良い値段で取引されてんだな、硝石って。
 一瞬で市場価格崩壊出来る位に量産しているって言ったらどんな反応するのやら。

『どこにいるか知ってる?』
『最深部ってだけだな、俺は話を聞いて初めて来たし』
『僕は何回かチャレンジしてるけど、倒せたことはないかな』
『うちも聞いただけー』

 とりあえず最深部に向かうとする前に、少し離れているのもあるので、一旦合流しようと促して、パーティーの面子を確認する。

 声を掛けてきたユーマはこれぞファンタジーの冒険者って感じの恰好をした剣士で黒髪のヒューマン。似非関西弁の様な喋りをするシロも同じく剣士で、青髪のエルフ。最後に合流してきた柊ってのは……鳥だな、カラスベースの獣頭、大きさ的には他2人とあまり変わらない。あのモデルで僧侶……まあヒーラーだな、そっちをやっていると、何となくペスト医師的な感じがあるわ。

『ボスの出現場所知ってるから、消耗する前にそっちを相手しても良いわよ』
『でも硝石一発狙いも捨てがたいなあ』
『俺はどっちでもいいぞ、レベルが上がるなら』
『じゃあ、ボスに向かいながらフリーのロックラックがいたら倒すってのは?』

 妥当なラインと言うか、それが一番良いか。別に反論する必要も無いのでユーマの意見を聞き、私がボスの方へと先導する。

「たまには、こういうのもいいかもね」

 ぽつっと言いながら葉巻を咥え、いつもの様に火を付けて口角を上げつつ、新規組パーティーと一緒に改めて暗闇洞窟を探索する。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑

つちねこ
ファンタジー
この世界では、十四歳になると自らが呼び出した召喚獣の影響で魔法が使えるようになる。 とはいっても、誰でも使えるわけではない。魔法学園に入学して学園で管理された魔方陣を使わなければならないからだ。 そして、それなりに裕福な生まれの者でなければ魔法学園に通うことすらできない。 魔法は契約した召喚獣を通じて使用できるようになるため、強い召喚獣を呼び出し、無事に契約を結んだ者こそが、エリートであり優秀者と呼ばれる。 もちろん、下級召喚獣と契約したからといって強くなれないわけではない。 召喚主と召喚獣の信頼関係、経験値の積み重ねによりレベルを上げていき、上位の召喚獣へと進化させることも可能だからだ。 しかしながら、この物語は弱い召喚獣を強くしていく成り上がりストーリーではない。 一般よりも少し裕福な商人の次男坊ルーク・エルフェンが、何故かヤバい召喚獣を呼び出してしまったことによるドタバタコメディーであり、また仲間と共に成長していくストーリーでもある。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...