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10章

263話 魔法初心者

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「魔法1つ1,000Zなんてなあ……」
「魔法職なら、全部無料です」

 さくっと魔法を買い揃えて戻って来て授業再開。
 ちなみに4属性全部買い揃えてトータル4,000Z。

「魔法はスキルルールも、少し違って、使いこみとレベルの上昇で、そのレベルでの使えるスキルが増えます」
「掛け合わせするにあたって魔法のレベルは必要ないんじゃないのか?」
「はい、その通りです。あくまでも、前提として必要と言う事に、なります」
「でも、弓と魔法の組み合わせってどうするわけ?」
「そこがポイントで、各属性魔法を使いこむと、付与魔法が覚えられるので、それを使う形になります」

 流石にこの辺のルールは魔法を使っていないと分かりにくいな。とは言え、魔法矢使う時は刻印を使っていたとか聞いたけど、それはまた別の話って事か?

「このT2Wにおける、スキル取得のルールが、累積回数での取得が多いので……『属性を付与した武器で戦う』なんてことが、キーになっているかと」
「そもそも付与魔法って、属性武器があるんじゃないのか」
「えっと、多分ですけど、ある意味では救済措置の1つ、かと?ガウェインさんは、物理しか攻撃が無いので、耐物理、無物理の相手に対し弱いんですが、かといって属性が付与されている武器は、高額で、レア品です」

 確かに武器に何かしら特性が付いているのは分かるが、それ自体に属性が付いている物って見た事が無いな。

「とりあえず覚えておけば、対魔法生物、物理特化の相手がしやすくなる、というものです」
「ただ、Lv1の付与魔法は本当に毛の生えた程度ですから」

 そういうと犬野郎が自分の剣を引き抜いて、火属性を付与すると火を纏うのだが、何度かぶんぶんと振るうとすぐにその火も消えていくのだが……なるほど、本当に一時的に付与するだけなんだな。
 後は消費量含めてどうなのかって話もあるのか。

「アカメさんの場合、魔法に振れるSPも余裕がないと思うので、ひたすら弱い付与魔法で回数をこなすしかないかと」
「INTにも振っていないので、非常に、苦行です」

 そうかー、そうだよなあ、レベルが低いころならいざ知らず、それなりに上がった段階で新しい事に手を出しているんだから、苦行と言うか余裕がない。
 上げる予定のスキルもあるし、今ここで魔法にSPを振っていく余裕ってのは全くない。やるとしても、スキルを出すだけ出しておいて、今後のイベントなり、闘技場やレース場でイベントPを回収してSPを増やすって手段しかない。

「それでも有益な事は聞けたし、いいかしらねえ……MP無制限に使えるならいいんだけど」
「街中は自動回復が速いのでクランハウスやマイハウスで連打するってのも手ですね、ただ攻撃をしないと行けないので弾が絡んでいるなら難しいかと」
「まあ、とりあえず魔法の試し撃ちでもするか……多分へなちょこ威力だろうけど」

 それもそうですね、と一言付けてから黒板を仕舞いつつ、辺りを解散させる。

「悪かったわね、時間食わせて」
「いえ、良いんですよ、折角のアカメさんからのお誘いですし」
「ちょっとでも、お役に立てれば、良かったです」

 2人揃って楽しそうにしつつ、後ろにいたギャラリーにクラン参加の宣伝もばっちりやっている。前線組と言うか、攻略組で大変だと思うんだが、その辺の動き方はどう思っているんだろうか……まさか、新規参加の連中の育成でも始めたのかね。

「んじゃ、まあ、私はやる事あるから行くわ」
「今度ボスでもどうです?」
「歓迎、します、よ」
「そうねー……手ごたえのある奴を用意してくれるなら行っても良いわ」

 約束で、と一言付け加えられつつ、その場を後にする。流石トップレベルの犬野郎、あっという間にギャラリーに囲まれながら授業を再開しているよ。
 確かに悪い奴じゃないし、世話好きってのもわかるんだけど、気に入った相手にはしつこいんだよなあ、あいつ。



 とりあえず話を聞いたのでクランハウスに戻って早速射撃場に。
 
「魔法も射撃って言うなら使えると思うんだけどな」

 左手を前に出してLv1の火魔法を。


スキル名:火魔法 レベル:1 習熟度:1
詳細:【アクティブ】
  :Lv1-ファイア(消費MP5)
  :発動条件・呪文の名前を唱える・指向性を持たせる

「呪文は唱えなきゃいけないってのは面倒だな……えーっと……『ファイア』」

 物凄い凝った魔法って思ったのだが、そんな事もなく案外普通だったのは意外。とりあえず唱えると共にごうっと音を立てながら手のひらから火が噴き出す。ふむ、小型で単発の火炎放射って感じだな。射程としては大体2,3mで範囲は直線的だから、単体向けってとこか。

「……『ファイア』」

 次は手を銃の形に、人差し指を向けた状態で唱えてみると、しっかりと指先から火が噴き出してくる。面白いな、こういうのって結構所定の動作やモーションをしないと発動しない場合が多いんだけど、唱えたときに指向していれば良いと言う事か。

「ふむ……『ファイア』」

 葉巻を咥えてから、もう一度火を付けるために唱えるのだが、っという間に葉巻が黒焦げになるわ、私の前髪をちりちりと燃やしてくるわで碌な事が起きなかった。

「『生活』火魔法って意味がよーくわかったわ」

 ぷっと葉巻を吐き捨ててから焦げた前髪を指でよじって整える。こういうちょっとしたものは時間経過で直るのだが、ついつい弄ってしまう。

「それにしても1発5MPは燃費も悪いなあ……4回使ったらそれだけですっからかんだし」

 と、言ってもこの魔法を主軸に戦うって事はないだろうから、回復待ちの回数が多くなるって問題なだけだった。別に街だったりこう言ったプライベートな空間だったらMP無限にしてくれりゃいいのに、変な所でけち臭いわ。
 
「いや、魔法はルールが違うからあまり手を入れられないっぽい」

 確かメカクレが、使いこみとレベルによると言っていたから、∞MPでとにかく使いこんでバリエーションや威力を上げるのを防いでいる?とは言え、際限なく上げるって事はここの運営じゃしないだろうし、良いとは思うんだが。
 とりあえず回復を待ち、射撃場で魔法の練習。魔法の増える条件って使用回数なのか、MPの消費量なのか、その辺も聞いておきゃ良かった……いや、あんまり聞きすぎても面白くないか。

「とりあえず撃ちまくるしかないか」

 回復待ちして、魔法を撃ち、回復待ちして魔法を撃ち……ああ、苦行。

『金髪エルフ、いる?』
『なんですか』
『私のコートを改良してほしいから、射撃場に取りに来てくんない?』
『作業がいいとこなんで、終わったり行きます』
『それとトカゲ、新しいガンシールド欲しいからボックスに入れておいて』
『他の要望は?』
『基本手甲で腕振ったりしたら展開するような奴がいいわね』
『ふむ……やってみるか、面白そうだし』
『相変わらず人使いの荒いボスだ』
『私も欲しいなあ、それ』
『あたしもぉ、手甲新しくしたいんだよねぇ』
『俺様にも一つ寄越せよ』

 両手武器に足武器、手が塞がっているから、開いているからこそ欲しがるって事か。
 
『うちの製造担当は人気者ねえ』
『誰のせいだと思ってんだ……ボックスのアイテム使うからな、文句言うなよ』

 言わない言わない、むしろ使わなかったら誰が使うんだって話よ。

「さーて、しっかり揃えて次の街を目指すとするか」

 ちょっとはこのゲームの攻略をしないとな。
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