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10章

262話 公開授業

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「接近戦のコツと属性攻撃、についてですか……属性や魔法絡みは難しいので先に私が」

 インベントリからずるっと黒板を取り出して転移地点の一室を教室の様にしつつ、指し棒やらを取り出し始めて準備している。まさかとは思うけど、リアル教師みたいな奴なのかね。

「それじゃあ、まず接近戦についてですが……コツと言うのは殆どなく、相手の攻撃動作を見て防御を合わせせるのが基本ですね」

 かつかつとチョークで黒板に書き込みをしながら、合わせて口頭での説明をしてくる。なんだこいつ、こんなに丁寧に話せたのか。最初に会った時はめっちゃぐいぐいきてうざったさ爆裂していたって言うのに……どういう事なんだよ。

「この動作自体は盾に限らず武器、素手、防具、道具……とにかくそれぞれの『受け防御』の基本と言った所ですね、T2Wにおけるモンスターの基本動作は把握していますか?」
「動作って、アクティブかどうか、どう攻撃して、移動するかって話よね」
「その通りです、その3個の基本行動をベースに拡張性のある動きをしてくるのがこのゲームです」

 そういうと私の言った項目を書き込んで、丸を付けてから線を何本か引いていく。言葉だけだと分かりにくいが、図にしていくと頭に入りやすいって本当なんだな。

「これに付随して高レベル、低レベルが関り、さらに言えばモンスターそれぞれの個性もあります、しかし近接戦闘において重要なのは、これ」

 攻撃の所にぐるぐると円を書きながら何となく満足そうにしている。教えがいがあると言うか、理解力があるってだけでかなり良いんだろうな。私も理解力や判断力の高い奴と一緒にやる方がゲームとしては快適にやれるのを分かってる。何だったら、時間さえ掛けりゃ馬鹿でも上がるランクやレベルで自慢するような奴とか救いようがないしな。

「相手がどういう攻撃をしてくるかを把握して、それに合わせると言うだけです」

 うん、まあ、分かるけど、初見の相手でもこんな風に立ち回っているのか、こいつは?

「それはとりあえず防御力で受けられるあんたの場合でしょ、把握してからカウンターで撃破するって流れだし」
「そこ、そこがポイントなんですよ」

 指し棒を此方に向けながらシェパードの口角が上がる。

「色々なモンスター、ボスを倒して把握したと言うのもありますが、このゲームに置いて特殊な動き方をしてくるモンスターってのはボスしかいないんですよ」

 何種類かのモンスターの名前を書いて、そこから線を引いてタイプ別に分けていく。

「例えばオークやコボルト、ドレイク等の武器を使うモンスターの挙動ってのは基本動作に+αで増えていく形になります」

 プレイヤーと同じようにレベルが上がると使えるスキルが増えると言う事だな。

「例えば低レベルだと縦横の斬撃しかしてこないのですが、中レベルになると2連の斬撃、高レベルになるとコンビネーションを仕掛けてきたりします」

 かつかつと黒板に書きこんでは消し、強調表示をさせたりしながら説明を続けていく。それにしても黒板なんて作れるんだな……リアルでも黒板用塗料なんてあるけど、どっかで作れるんかな、これ。
 うちのクランにもちょっと設置してこういう図解説明する時に使う様にするか。

「と、話が逸れましたが、モンスターのタイプを把握すると言う事が、接近戦のコツでもあるんですよ。流石に初見の攻撃に関しては全部ガードすると言うのは難しいので、気合でしか方法は無いですけど、パターンは基本動作の沿線上なのでそこまで難しくはないはずです」

 そういえばガンシールドの新しい奴も作って貰わないと。
 暫く必要が無かったからだが、やっぱり装備含めてこの辺で一度全部新調するべきだな。後で金髪エルフの奴に連絡して新しいスーツとコート、トカゲにはガンシールドを作らせておくか。

「なので、戦うモンスターの基本動作を把握すると言うのがコツですかね。しっかりと防具を揃えておくと言うのも大事ですけど」

 親指を齧りながら黒板と説明を聞いて、私の中で整理をしていく。
 確かに今まで戦った相手の沿線上で特殊な行動をしてくるのはボスが多かったし、散々倒してきたコボルト、連携が強くなったりはモンスターの特性として、確かに縦横の基本斬撃……の前に、がむしゃらに斬ってくる動作はどの奴でもやってきてたわ。

「結構雑に戦ってたけど、そんな事あったんだな」
「そうですね、アカメさんは銃での強力な攻撃があるので長期戦と言うのもあまりないようですし、一回耐えて撃ち返せばいいだけでしょう」

 図星過ぎて何にも言えねえ。確かに銃撃ごり押しばっかりでやってきたってのは確かだし、これからも同じような事をやるだろうって考えてたわ。

「この辺は職と戦い方次第ですね、接近戦のコツと言うのは此処まで説明した通り、相手を把握しての立ち回りが重要ですので……アカメさんなら問題ないかと」

 変に買いかぶっている気がするんだがなあ。
 まあ、あんまりモンスターの動きってのを意識したことが無かったからそっちは良いとしよう。


「で、次は魔法か」
「あ、は、はい……えっと、消しますね?」

 おおすげえ、犬野郎がすげえ書き込んだ黒板を容赦なく消し去ってるわ。メカクレの奴、中々えげつない事をしてくるな。
 あと、今気が付いたけど、結構ギャラリーが周りを囲んで黒板を見ているとは。新規も多いし、犬野郎は有名人だからそりゃこんな目立つことをしていたら人も集まるか。
 
「では、魔法、ですが……取得方法は、分かります……?」
「あれって選択職でデフォでしょ」
「えっと、基本的に、冒険者ギルドで購入です……威力を上げたり、特殊なのはSP投入と、専門職になり、ます」

 黒板に書き込む文字がそれなりに小さいから見にくいぞ。

「物理しかない職への、救済措置だと、思うんですけど、魔法はそれだけ特殊です……」

 4属性と合わせて別に何個か別に書き込んでいくのを眺めつつ、葉巻を咥え火を付ける。

「たまに、そういった、便利系魔法もありますが、戦闘スキルではないので、それは本来のスキル取得と、一緒です」

 そう言いながら右人差し指をこちらに向けると水が出てくる。
 水道もあるのか、生活魔法って便利だな。

「で、魔法弓、ですが……4属性魔法を使いこむ事により、派生するものでした」

 黒板には4属性魔法を書き、それを大きく丸で囲ってから隣にも大きい丸を書き、中に弓スキルと書いてからイコール魔法弓。

「この時点では、二次職では、ないので、さらに使いこむことによって、二次職でマジックアーチャーと」

 分かりやすくかつ細かく書き込み始めているのを見て軽く察したのだが、多分のめり込んだらがっつりいくタイプだな、このメカクレは。

「二次職の、出現ルールは、割愛します……T2Wは、とにかく、スキルを覚えて掛け合わせ、派生させると言うのが、肝です」
「そういえばガンナーってあんまりないのよね、そういったの」
「ここも、難しい所で……基本的に、単一職での派生はあまり、起こりません……私の場合、弓職と合わせて、4属性の汎用魔法を使っていた、と言うのがあります」

 なるほど、かけ合わせて新しく増やすのか。
 確かに特殊と言うか珍しい物に関しては、かけ合わせだったな。身近な所で言えばトカゲが持っている、刻印スキルが逸れに該当するか。

「正解と言うのが、分からないので、基本的に覚えれるものは、覚えて、使いこむ、のがいいかと……あと、細かい所ですが、使いこみに、相手はいらないのと、低レベル相手に対しては、経験値の取得量が減るのでそこで稼ぐと言うのも、あり、です」

 びっちりと黒板に書きこんでいるのをもう、途中からめんどくさくなったので、現代風にSSを取って保存。

「とりあえず、4属性魔法を、取って来ては、どう、ですか?」

 冒険者ギルド、歩いて30秒の所だし、ちょっと行ってくるか。
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