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10章

259話 目的

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 新規向けイベントも終わり、暫く銃弾の量産をする為に素材回収のマラソンを進める。
 火山行ったり、久々にロックラックを殴って硝石回収したり、あちらこちらのマップに行ってモンスターを狩ったりしながら残り少ない有休パワーを使いこむ。
 私としてはゲームの安定期に入り始めたので、また新しく何かを作るか開発したいところだが、それもトカゲの奴がやっているので手持無沙汰。私がアイディアを出し、形を作るのはあいつなので、別に一緒にあれこれ開発をする必要があまりない。何だったらクラン会話で開発状況を聞けるしで、特に困る要素がない。
 
「こう、燃え尽き症候群みたいな感じ」

 北エリア2-3の途中、切り株に座ってぷはーっと葉巻の煙を吐き出しつつ、少しだけ振り返る。
 一ヶ月もひたすら動き回り、あっちいっては撃ちこっちいっては撃ち、未だに第三の街のドルイテンすら行っていないのにレベルだけは上がっているし、もうちょっと前に出てもいいかもしれない。
 新規が増えたからもう少し人員を増やして、手広く商売をするってのもありだが、あんまり人が増えるとそれはそれで管理が大変になるし、アイテムと資金の管理も徹底しないと駄目か。
 
 ……って言うか私って、元々を何をやろうと思ってこのゲームを始めたんだっけか。
 新作のVRMMOって事と自由度の高さに期待してゲームをしようと思ったわけだけど、よくよく考えれば目的ってのが無い。
 ガンナーが強いからメインにしようと言うのは最初であって、その後はガンナーを意地でも使ってやろうって目標でしかないんだよな。
 つまりこのゲームにおける大きい何かしらの目的ってのがない?

 うちのクランに関して言えば、髭親父は自由度の高さから酒造って遊びを見つけ、それを楽しんでいるわけだし、仲間内であれこれと酒談議をしているからそれだけでもゲームの目的になりえる。
 ジャンキーはジャンキーでフルダイブってのを生かしての戦闘を楽しんでいるから、最終的な目的としてはモンスター全員倒すって事もあるだろうけど、そもそも戦闘狂だから動いてるのが楽しいって所だろうな。
 トカゲは元々鍛冶をやっていたから、何かしら物作りをすると言うのが目的ではあるか。別に銃を作らなくても鍛冶で色々楽しんでいたし、刻印まで取得している、私が銃の事を教えなければそのまま鍛冶クランにいたか。
 猫耳も木工ではあるが、どちらかと言うとトカゲと同じ部類。じゃなかったらあんなに自発的に家具を作って売ったりしない。
 ポンコツピンクは配信が目的だから、ゲームが過疎化しない限りはずっとやっているな。

 ……で、私は?
 そもそもこのゲームをするって目標で終わっているので、大きく目的を立てた事がない。そりゃあモチベーションを維持するためにも必要な事ではあるんだろうけど、ぱっと思いつかないんだよな。
 よくよく考えてみれば、序盤はどうにか銃を使おうとするために火薬を作り、その火薬で使えるようにするために銃を作って、そのために生産スキルをひたすらに入手していって、形が出来たらすぐ実践投入。
 イベントやって、足りない物を作ったり、探し当てて少しずつだが強く、装備も揃えていったけど、それはRPGとして当たり前の事であって、目的ではなく目標でしかない。

 それで結局私は何をやりたいんだ?
 銃器の開発は装備を強く、新調するってのがあったから常にやってきたけど、それはRPGとしての宿命だし。
 かといってレベルを上げて強くと言うのも、当たり前。モンスターを倒しまわって戦闘を楽しむ……のもちょっと違う気がする。
 クランを大きくして有名になるのも、なんか違うんだよな。資金を集めて使うとしてもクランハウス、マイハウスを拡張していくのも違う。それは目的に対しての手段でしかないから、それをメインに据えてどうこうってのはなあ。

 犬野郎の所は、前線に出て攻略するってのをメインに据えているから強い奴を集めて、がんがん前に出ていく。
 チンチクリンはチンチクリンで、流されて作ったクランとは言え、初心者向けのクランとしてなかなか大きくなってるらしい。
 最近共闘したおしゃべり忍者は忍者を集めて楽しくゲームするって言っていたな。偽物の所もガンナーを集めてるから同じような感じか。
 まあ、個人ってよりもクランの話だからちょっと違うけど、マスターをやっているんだから、自分のやりたい事の1つって事ではあるよな。

「んー、どうするかな、マジで」

 葉巻を揺らしてぼうっと空を見上げる。
 やりたい事っていうかやらなきゃいけないことをやってきたから、改めて考えると難しい話になるな。
 足元に転がっているギデオンアーマーは「こいつを倒す」って考えで相手したっけか。同じような所で言えばボスを倒しまくって目立つってのも一時的なものだし、多分もうやらない。
 FWSのクールタイムもそうだけど、それ以前にやりごたえが微妙な所。多分そのうち修正が入って、ある程度マイルドになるような気がする。

「とりあえず小さい目的を達成してから大きい目的を考えよう」

 ポリゴン状に消失していくギデオンアーマーを眺めつつ、ドルイテンに向かうとしよう。



 ドルイテン、確かゲーム開始2週目にはとっくに見つけられて突破されたんだったかな。
 ボスモンスターを倒したら街要素開放ってのがあるけど、全プレイヤーの誰かが撃破したらOKだし、条件のボスモンスターは近いマップでちゃんと再戦出来るようになっている。
 まあ正直な所、開放されている街やマップなのでさっさと滑り込んだ方が圧倒的に楽。

「ある意味では私もバトルジャンキーではあるんだけど」

 北エリア2-4に到達して、モンスターを確認しつつウサ銃を構えたまま先に進む。
 モンスターを倒すってのはRPGとしては普通の行為だからこれを目的にってのもなあ……モンスター全部FWSで倒しまわるって言うのも面白いかもしれないが、クールタイムがえげつないから無しだな。


北エリア2-4
Lv32 ブラックコボルト(剣盾)
Lv33 ブラックコボルト(大斧)
Lv34 シャドウデーモン
LV35 八咫烏
Lv38 グラウンドドラゴン

 
 モンスターの様子も結構様変わりしてきた。いつもの人型セット、獣に悪魔型が初めて出現って所か。それにしたって戦い方もガンナーとしてもあまり変わらないんだよな。
 相手の出鼻を挫くために一撃食らわせて、よろめいたら追撃。ウサ銃や鳳仙花、110mm対艦ライフルだと一度受けてからの反撃。
 戦い方のバリエーションも薄くなってきたし、スキル増やすってのもあり……ではあるんだが、SPが枯渇しているからなんとも……ポンコツピンクに頼んでガンカタの取得方法教えてもらうかな。

「ま、何にせよ……とりあえず突破してドルイテンに向かうか」

 分布図を見ていたら接近してきたシャドウデーモンからの一撃を貰ってからすぐさま飛びのいてポーションがぶ飲みで回復。
 いつまで下級ポーション使ってんだろうな、私は。

「飛ぶし、素早いし、一撃はそれなりに痛いし……よくもまあ、低レベルで犬野郎の連中は突破したもんだ」

 パーティーを組めばある程度格上の相手も処しやすいとは言え、なかなか大変だと思うんだが。
 とにかく一匹ずついつものように対処方法を確立させながらじっくり攻略するとしよう。
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